インド・ヘルスケア最前線① | ワンコイン健診「ケアプロ」川添高志のブログ

インド・ヘルスケア最前線①


インド・ヘルスケア最前線①


私は、2月2日~10日に国際交流基金の日印社会企業家交流事業に参加してインドに渡った。インドは6千万人を超える糖尿病患者がおり、日本で展開している「ワンコイン健診」をインドでも展開できる可能性があるのではないかという仮説があった。今回のインド訪問は、9日間で、首都デリー(インド北部)とバンガロール(インド南部)を訪れた。都市や農村に足を踏み入れて生活実態を知ると同時に、インドの社会的課題を解決しているベンチャー企業やNGO、NPO、病院経営者などと面談した。日本から総勢15名が参加し、うち医療職は私だけで、他の参加者はJICAやNPO、NGO、議員、ベンチャー企業、シンクタンクの方々など多様であった。

インドで見てきたことを「インド人の生活習慣」「インドの病院」「インドの予防医療」と三回に分けてレポートする。まず、「インド人の生活習慣」について。結論を述べると、生活習慣病のリスクが非常に高い3つの特徴があることがわかった。


1つ目は、食習慣。カレーは日本のものより塩味が濃く、油も多く、食後のチャイにはクリームや砂糖をたっぷり入れるインド人が多かった。三食カレーというのは冗談だと思っていたが、本当にそうであったという驚きと、インド人にとってカレーとは、日本人の醤油のようなものであり、カレー味の野菜炒めや肉炒め、スープなどがあり、食文化として根付いていた。家庭でカレーを食べるのは当然だが、定食屋のカレーは50ルピー(約100円)と安く、外でもカレーを食べる人が多い。また、我々がインドの起業家やNGOなどを訪問した際に、チャイと一緒に油で揚げたスナックや砂糖たっぷりのクッキーが毎回のように出された。そして、インドでは一般的に夕食時間が21時~22時と遅めであり、太りやすい食習慣なのだ。なお結婚式も夜が多いということで、我々も夜の街で繰り広げられる結婚式のイルミネーションや花火をよく見た。


ワンコイン健診「ケアプロ」川添高志のブログ-インドカレー
カレー定食(ドリンク付き)を頼んだら、
「ドリンクサーバーが故障しているから、
ライスとナンを2つともサービスするよ!」とのことだった(笑)



2つ目は、運動習慣。外でマラソンをしている人は皆無であった。ニューデリーのヒルトンホテル内のジムを見に行ったが、受付嬢は「近所に住む金持ちのインド人の利用が多い」と。年会費が1人25万ルピー(約50万円)、ニューデリー住宅地のジムは3万~4万ルピー(約6万~8万円)が相場であった。男性は公園でクリケットをする人が多いが女性は運動不足が多い。インドの女性は伝統的に、民族衣装サリーから見え隠れする横腹が、「タプタプ」しているのが美しいとされてきた背景もある。また、モータリゼーションが加速しており、タクシーは2km20ルピー(約40円)、メトロも15~30ルピー(約30~60円)程度でデリー都心部は移動できるため、運動不足に拍車がかかっている。


ワンコイン健診「ケアプロ」川添高志のブログ-インドタクシー
2km20ルピー(約40円)のタクシー。
日本人には倍の値段をふっかけられる。


3つ目は、経済成長(とそれに対応できない体質)。インドでは皮肉なことに生活水準向上があだとなり、糖尿病および心臓病などの合併症にかかりやすくなっている。10年間で平均7%の経済成長が4億人の国民を中産階級に押し上げたものの、何世代にもわたって貧困や栄養不良、肉体労働に耐えてきた体は高カロリー食への抵抗力がなく、糖尿病になりやすいのだ。今回のインド人の通訳の方のお父様にお会いしたが、糖尿病で心臓バイパス手術をしていた。「長生きできるようになったが、医療費がかかる」と。


このように、生活習慣病の猛威は既に始まっており、予防意識や行動は顕在化していないが、インド(特に都市部)において、生活習慣病予防は大きな社会的課題であることがわかった。「ワンコイン健診」の参入チャンスは有るか?続く。