言い返さなかった回数を、一週間だけ数えてみた

金曜の十七時すぎ。
 
上司が机の横に立って、書類の束を置きながら言いました。
 
「もっと肩の力を抜いていいよ」
 
……抜いたら終わらない量を配っているのは、その人なんですけど。
 
そう思ったのに、私の口から出たのは「はーい」でした。笑顔つきで。
 
 
この「はーい」まで、三秒かかっています。
 
その三秒で何を考えていたか、あとから書き出してみたんです。だいたい三つでした。
 
①ここで言い返したら、来週の空気がどうなるか
②誰が気まずくなるか(自分ではなく、間に立つ人のこと)
③自分が「気が強い」と呼ばれるようになるか
 
三秒で三つ。けっこう働いてますよね、頭。
 
 
私はずっと、これを「我慢」だと思っていました。
 
でも我慢ではなくて、作業でした。損の少ない返事を選ぶ、計算の作業です。
 
作業なら、体力を使います。書類に目を落としても、さっきの一言が頭の後ろで再生され続けている。あの時間、どこにも記録されないんですよね。
 
 
だから、一週間だけ数えてみました。
 
・言われたこと(15字くらい)
・言わなかったこと
・戻るまでの分数
 
この三列だけ。スマホのメモで十分です。
 
 
やってみて驚いたのは、合計時間ではなくて偏り方でした。
 
私の場合、七割が「会議のある日」に集まっていたんです。
 
一日中つらいのではなくて、あの部屋の九十分だった。そこまで絞れると、やることが変わります。
 
 
全部に言い返す必要はないです。体力がもちません。
 
繰り返されているか。自分の評価に効くか。他の人にも起きているか。
 
二つ以上当てはまったときだけ言う、と決めておく。それ以外は「流す」とメモに書いておきます。決めて流したものは、あとで引きずりにくくなります。
 
 
ちなみに、私が三年言えなかった一文はこれです。
 
「議事録、次から持ち回りにしてもいいですか」
 
言ってみたら、五秒で決まりました。
 
三年と五秒。この差は何だったんだろう、といまでも思います。
 
 
数え方と、言うかどうかの基準は、メインブログに詳しく書きました。
 
 
今日も「はーい」と言った方へ。三秒、おつかれさまでした。
 
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夜の11時すぎ。

パソコンを開いて、職務経歴書の書式を出して、
名前を書いて、日付を書いて、会社名を書いて。

ここまでは、するする書けたんです。

問題はその下。

「業務内容」

四角い枠が、画面の真ん中で待っている。
カーソルだけがゆっくり点滅している。

冷めたお茶をひとくち飲んで、
もう一度その枠を見て、

結局、何も打たずにタブを閉じました。


毎日ちゃんと働いてきたはずなのに、
書こうとすると何も出てこない。

自分は本当に、何もしてこなかったんだろうか。

そんなふうに思ってしまう夜って、ありませんか。


でもね、これ、経験が足りないわけじゃないんです。

10年やってきた人でも、同じところで止まります。
むしろ、ひとつの場所に長くいた人ほど止まりやすい。


理由は、たぶんこうです。

日々の仕事のなかで、
自分のやったことを他人に説明する機会って、
ほとんどないんですよね。

上司も同僚も、あなたが何をしているか知っている。
だから説明しなくていい。

説明しないまま何年も経つと、
説明する言葉だけが育たないまま残る。

書けないのは、記憶じゃなくて言葉のほうなんです。


じゃあどうするか。

白い枠を見つめても、何も出てきません。
出てくるのは、問いを立てたときだけ。

今夜、これだけ自分に聞いてみてください。

「誰から、何を任されていたか」

上司からでも、他部署からでも、取引先からでも。
「これはあなたに」と回ってきていたものは何だったか。

回ってきたということは、そこに理由があったということです。


文章にしなくていいです。
箇条書きの、単語の羅列でかまいません。

整えるのは、あとの工程。
今夜やるのは「取り出す」ことだけ。


残りの2つの問いと、
数字の実績が出ない仕事をどう書くかは、
メインブログのほうにまとめました。

https://pivotessor.com/cant-write-job-history/

30分あれば、1社分の下書きまでいけます。

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CareerPivot

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休日の午後2時。

窓際の席に座ると、日差しが手の甲にあたって、そこだけ温かくなりました。

椅子は木で、思ったより硬い。

奥からコーヒーを挽く音がして、その匂いが少し遅れて届きます。

隣の席では、二人組が笑っています。

一人で来たので、ゆっくりメニューを開きました。

いつもなら、一緒にいる人に「なんでもいいよ」と言って、同じものを頼んでいます。

でも今日は、誰もいません。

自分で選ばないと、何も出てきません。

そこで、手が止まりました。

何が飲みたいのか、わからない。

たったそれだけのことなのに、少し動揺します。

そして、そのまま考えが飛んでいきます。

進学も、就職も、いまの部署も。

反対されない方、喜ばれる方、心配をかけない方を選んできた気がする。

そのときはちゃんと納得していたはずなのに、いま振り返ると、自分の指紋があまり残っていない。

不思議なのは、後悔がそれほどないことです。

進んだ道は悪くなかったし、周りの人にも恵まれてきました。

だから余計に言いにくい。

「うまくいっているのに、自分の話が出てこない」という状態には、名前がついていません。

名前がないものは、相談もしにくい。

そうやって、誰にも言わないまま、休日のカフェで急に立ち止まったりする。

メニューを前にして、こんなことを考える日が来るとは思いませんでした。

こういうとき、「自分がない」と結論づけてしまいがちです。

でも、たぶんそうではありません。

望みがないのではなく、望む練習の回数が少なかっただけ。

人の期待を先に読むのが上手な人は、それが得意技になっているぶん、自分の希望を後ろに置く癖がついています。

それは能力であって、欠陥ではありません。

ただ、使う場面を間違えると、自分の分がなくなる。

一般には「やりたいことを見つけよう」と言われます。

実際には、いきなり大きなものは見つかりません。

小さな選択を自分の手で何度かやってみて、そのあとに、少しずつ輪郭が出てきます。

同じ席に座ったことのある人へ、もう少し長い記事を書きました。

はじめて自分で決める日のことを、ゆっくり書いています。

https://pivotessor.com/living-someone-elses-choice/

今日できそうなことを、ふたつ。

ひとつは、今日の飲み物を、人に合わせずに選ぶこと。

美味しくなくても大丈夫です。「自分で選んだ」という感触だけが目的なので。

もうひとつは、「嫌だった」を記録すること。

やりたいことより、嫌だったことのほうが、体は正直に覚えています。

それが3つ集まると、自分の輪郭が少し見えてきます。

輪郭は、外側から先に出てきます。

中身が見えるのは、そのあとで大丈夫です。

期待に応えてきた時間は、無駄ではなかったと思います。

その時間があったから、いま「これでいいのか」と立ち止まれている。

その立ち止まりごと、大事にしていいのではないでしょうか。

もう少し長く、この午後のことを書きました。

https://pivotessor.com/living-someone-elses-choice/

まずは今日の一杯を、自分で決めてみてください。

決まるまで、ここで待っています。