
夜の11時すぎ。
パソコンを開いて、職務経歴書の書式を出して、
名前を書いて、日付を書いて、会社名を書いて。
ここまでは、するする書けたんです。
問題はその下。
「業務内容」
四角い枠が、画面の真ん中で待っている。
カーソルだけがゆっくり点滅している。
冷めたお茶をひとくち飲んで、
もう一度その枠を見て、
結局、何も打たずにタブを閉じました。
毎日ちゃんと働いてきたはずなのに、
書こうとすると何も出てこない。
自分は本当に、何もしてこなかったんだろうか。
そんなふうに思ってしまう夜って、ありませんか。
でもね、これ、経験が足りないわけじゃないんです。
10年やってきた人でも、同じところで止まります。
むしろ、ひとつの場所に長くいた人ほど止まりやすい。
理由は、たぶんこうです。
日々の仕事のなかで、
自分のやったことを他人に説明する機会って、
ほとんどないんですよね。
上司も同僚も、あなたが何をしているか知っている。
だから説明しなくていい。
説明しないまま何年も経つと、
説明する言葉だけが育たないまま残る。
書けないのは、記憶じゃなくて言葉のほうなんです。
じゃあどうするか。
白い枠を見つめても、何も出てきません。
出てくるのは、問いを立てたときだけ。
今夜、これだけ自分に聞いてみてください。
「誰から、何を任されていたか」
上司からでも、他部署からでも、取引先からでも。
「これはあなたに」と回ってきていたものは何だったか。
回ってきたということは、そこに理由があったということです。
文章にしなくていいです。
箇条書きの、単語の羅列でかまいません。
整えるのは、あとの工程。
今夜やるのは「取り出す」ことだけ。
残りの2つの問いと、
数字の実績が出ない仕事をどう書くかは、
メインブログのほうにまとめました。
https://pivotessor.com/cant-write-job-history/
30分あれば、1社分の下書きまでいけます。
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休日の午後2時。
窓際の席に座ると、日差しが手の甲にあたって、そこだけ温かくなりました。
椅子は木で、思ったより硬い。
奥からコーヒーを挽く音がして、その匂いが少し遅れて届きます。
隣の席では、二人組が笑っています。
一人で来たので、ゆっくりメニューを開きました。
いつもなら、一緒にいる人に「なんでもいいよ」と言って、同じものを頼んでいます。
でも今日は、誰もいません。
自分で選ばないと、何も出てきません。
そこで、手が止まりました。
*
何が飲みたいのか、わからない。
たったそれだけのことなのに、少し動揺します。
そして、そのまま考えが飛んでいきます。
進学も、就職も、いまの部署も。
反対されない方、喜ばれる方、心配をかけない方を選んできた気がする。
そのときはちゃんと納得していたはずなのに、いま振り返ると、自分の指紋があまり残っていない。
*
不思議なのは、後悔がそれほどないことです。
進んだ道は悪くなかったし、周りの人にも恵まれてきました。
だから余計に言いにくい。
「うまくいっているのに、自分の話が出てこない」という状態には、名前がついていません。
名前がないものは、相談もしにくい。
そうやって、誰にも言わないまま、休日のカフェで急に立ち止まったりする。
メニューを前にして、こんなことを考える日が来るとは思いませんでした。
*
こういうとき、「自分がない」と結論づけてしまいがちです。
でも、たぶんそうではありません。
望みがないのではなく、望む練習の回数が少なかっただけ。
人の期待を先に読むのが上手な人は、それが得意技になっているぶん、自分の希望を後ろに置く癖がついています。
それは能力であって、欠陥ではありません。
ただ、使う場面を間違えると、自分の分がなくなる。
*
一般には「やりたいことを見つけよう」と言われます。
実際には、いきなり大きなものは見つかりません。
小さな選択を自分の手で何度かやってみて、そのあとに、少しずつ輪郭が出てきます。
*
同じ席に座ったことのある人へ、もう少し長い記事を書きました。
はじめて自分で決める日のことを、ゆっくり書いています。
https://pivotessor.com/living-someone-elses-choice/
*
今日できそうなことを、ふたつ。
ひとつは、今日の飲み物を、人に合わせずに選ぶこと。
美味しくなくても大丈夫です。「自分で選んだ」という感触だけが目的なので。
もうひとつは、「嫌だった」を記録すること。
やりたいことより、嫌だったことのほうが、体は正直に覚えています。
それが3つ集まると、自分の輪郭が少し見えてきます。
輪郭は、外側から先に出てきます。
中身が見えるのは、そのあとで大丈夫です。
*
期待に応えてきた時間は、無駄ではなかったと思います。
その時間があったから、いま「これでいいのか」と立ち止まれている。
その立ち止まりごと、大事にしていいのではないでしょうか。
もう少し長く、この午後のことを書きました。
https://pivotessor.com/living-someone-elses-choice/
まずは今日の一杯を、自分で決めてみてください。
決まるまで、ここで待っています。