子どもたちが社会で主体的に生きる力を育むため、大和証券グループ は学校とNPOの教育プロジェクトに積極的に協力しています。その可能性や企業の教育へのかかわり方について、下記3名での座談会 が開催されました。
(座談収録日: 平成19年8月1日)

クローバー大和証券グループ本社 鈴木茂晴代表執行役社長
クローバージュニア・アチーブメント日本 理事長(日本アイ・ビー・エム相談役兼経営諮問委員会議長)椎名武雄さん
クローバー学校法人立命館 相談役 川本八郎さん


チューリップ赤現在の学校教育について、ご意見を聞かせてください。

川本:
正直言って、今の日本の教育は、危機的状況にあると思います。一流大学を卒業した人間が、さまざまな不祥事を起こしている状況を見れば明らかです。教育とは本来、人間性を育むものです。それなのに「西欧に追いつけ、追い越せ」が課題だった日本では、明治以来ずっと知識や科学技術偏重の教育が行われてきました。人としてどう生きるのか、社会にどう貢献していくのかといった、子どもに志をもたせるような視点が、教育に希薄だったように思います。

椎名:
日本の教育は、経済成長という目標に向かい、敷かれた線路のうえをがむしゃらに走るにはベストなシステムだったと思います。ただ社会や価値観が多様化するこれからの時代は、自分の責任で歩むべき道を選択し、主体的に行動できる人間が必要です。そういう人がどんどん出てこないと、企業も国も衰えていく。そういった意味で、教育システムは今、大改革の時代にきていると思います。

チューリップ紫1番の問題は、教育システムが実社会からかい離してきたことだと。今、実学教育の必要性が叫ばれているのもそのためですね。

椎名:
子どもが社会のなかで主体的に考え、責任をもって行動できる力を育むには、実社会がどういうものなのかを教える必要がある。それは、ビジネス社会での経験がない先生には難しいことでしょう。学校の先生が決められた基礎的なカリキュラムをきちんと教え、外部の人間がサポートするというかたちがもっとあっていいと思います。

鈴木:
教育で最も大切なのは、「何のために学ぶのか」といった動機づけをすることだと思います。勉強していることと実社会とのつながりがわからないまま、一方的に書いてあることを覚えろといわれても嫌になるだけです。経済なども教科書での勉強だけでなく、企業の部長クラスがビジネスの最前線で起きていることを話せば絶対に面白い。もっと生徒の意欲や興味を引き出す教え方を、考える必要があると思います。

川本:
子どもが学ぶことや働くことに意欲をもてないことの一つの原因は、子どもが社会で働いている大人の姿を見ていないところにあると思います。働いているときにこそ、人間は輝くのです。その真にすばらしい人間の姿を、子どもたちが見ていないことが問題です。また社会に責任をもち、さまざまな価値を生み出し、社会を動かしているのが企業です。子どもたちに企業の社会的な意義や、働くことのすばらしさを教えることが何より重要だと思います。

鈴木:
JAのスチューデントカンパニープログラムも、非常に優れたものだと思います。学校内に架空の会社を設立し、社長をはじめ、生産、営業、経理など部門別の人員を決め、商品の開発から生産、販売まで、企業を運営します。大和証券グループでは立命館高等学校に社員を派遣し、「実際の企業ではどう対応しているか」などをアドバイスしています。このプログラムで発生する問題は、「社員の不満がなかなか解消できない」「売るためには商品性に工夫が必要だ」など、私の悩みとまったく同じです(笑い)。子どもたちは、会社にはさまざまな役割をもつセクションがあり、それらが協力することで企業活動がうまくいくことを自然に理解します。企業活動や世の中の仕組みについて知るには、最適な教育プログラムだと思います。

チューリップピンク教育における企業の役割、責任もますます高まってきますね。

鈴木:
会社は、法人という人格を社会から認められた存在です。その意味では、会社は公共物であり、社会に大きな責任があります。企業が教育にかかわったり、支援をするのは当然です。また企業の最大の財産は人材です。だからどこの企業も、人を育てることには最大の力を注いでいます。

川本:
現在の教育の危機の背景には、地域コミュニティーや家族の崩壊といった、社会全体の問題があります。ただ教育関係者としては、そのような状況を認識したうえで、やはり教育に関する責任は教育機関にこそあると自覚すべきだと思います。そのうえで教育は本来、社会全体で考えたり、担うべきものだとも思います。企業も国も、自治体も家庭も、社会のすべての組織が、教育への責任があることを強く自覚する必要があるでしょう。それこそが、日本を再生させていくうえで最も大事なことだと思います。

ヒマワリそういった意味では、NPOの使命も大きいですね。

鈴木:
企業、学校、NPOがそれぞれの強みを発揮し、教育のためのパートナーシップを組むことが大切です。企業は資金や人材、実社会での経験などは提供できますが、具体的な教育プログラムの開発や運営は手に余る部分がある。そこをJAのようなNPOにやっていただけることは、非常に助かります。そういった意味で、今後、NPOの果たすべき役割は非常に大きくなってくると思います。

椎名:
学校教育支援における企業とNPOの望まれる関係は、ただ単に「施し・施される」という形にあるのではなく、子どもたちに最も価値あるプログラムを提供できるようお互いが持っているノウハウや人的・物的資源を提供しあうことにあります。1919年から活動しているJAのアメリカでの例を見ましても、企業が学校教育を支援することは常識になっています。それは企業の経営者や社員に、単なる利潤追求の視点だけでなく、こうした活動を支援することが社会の一員としての使命であるという理解があるためであり、またそういう企業こそが高い社会的評価を得ています。日本でも、企業がNPOと協力しながら学校教育をサポートする機会は、今後もっと増えていくべきだと思います。