3つのお話しの共通点


多くの方々が知っているだろう次の有名な3つのお話しには、ひとつの共通点がありますが、それが何かお分かりになりますでしょうか?


鶴の恩返し
罠にかかってしまった鶴をお爺さんが助け、その鶴が人間の女性に姿を変えてお爺さんとお婆さんに恩を返すお話しの「鶴の恩返し」では、「織ってる最中はぜったいに覗かないでくださいね」と言われたのにも係わらず、お婆さんは、三日三晩かけて織り上げられるこの世のものとも思えぬ見事な出来栄えの布への好奇心に負けて襖を開けてしまい、娘は鶴の姿に戻り二人の元を去って行ってしまいました。


浦島太郎
助けた亀にお礼にと龍宮城に連れて行って貰い、大歓待を受けるお話しの「浦島太郎」では、乙姫様に一年を短い時間で楽しむことができる「ときのへや」に案内されるも「使い過ぎると取り返しのつかぬことになるので注意が必要」と言われていたのにもかかわらず、これを守らず惚けてばかりいました。
それでも母親が恋しくなり竜宮城から帰ってきた村は、既に何百年も時が経ったあとの世界になっていて、悲しさのあまり「これがあれば、また竜宮城へこられます。でも、あなたの世界では、蓋を開けてはなりませんよ。絶対に!」と乙姫様に言われて貰った玉手箱を思わず開けてしまい、みるみるうちに、おじいさんになってしまいました。


パンドラの箱
神族の一人のプロメテウスは、人間が知恵や技術をほとんど持っていなかったことから、初めて人間に火を与えましたが、もともと火は神のものであったため、それを知った最高神ゼウスは怒り、人間を懲らしめようとしました。
ゼウスは、パンドラという人間で最初の女性を作り、あらゆる災いや不幸、悪が詰まった箱を持たせて人間の世界へ送りました。
絶対に開けてはいけないと言われていたその箱を好奇心にかられたパンドラは、つい開けてしまいましたが、その瞬間、人間界には災いや不幸、悪が広がり、パンドラが急いで箱を閉めた時、箱の中に「希望」だけが残りました。


心理的リアクタンスのカリギュラ効果


3つのお話しには共通して「禁止されるほどやってみたくなる心理現象カリギュラ効果(学術用語ではない)」が描かれており、人は基本的に「自分自身の行動は、自分の意志・感情で、自由に選択判断をしたい」と思うもので、これを否定され自由を奪われると圧力に対して強いストレスが生じることになり、結果として反発行動を取ってしまうことになります。

このことは1966年にアメリカの心理学者ジャック・ブレーム(Jack Brehm)によって提唱された「心理的リアクタンス(英: psychological reactance)/ 心理的抵抗・反発」と言われる「人が自由を制限(剥奪・侵害)された際に、それに抗おうとする性質」によるものだといえます。

余談ながら、学術用語でもないのに使われることがよくある「カリギュラ効果」とは、日本だけで使われている用語で、これは1980年に暴君として知られるローマ皇帝カリグラをモデルにしたイタリアとアメリカの合作で制作された映画「カリギュラ(Caligula)」を語源としたもので、過激な内容であったために一部地域で上映禁止になると、逆にそれが人々の興味を喚起して、多くの方々が映画館に押しかけて大ヒットした出来事から転じて名付けられた現象名となります。


学校の校則は破ってみたくなるものですし・勉強しろと言われると妙に勉強したくなくなり・お付き合いや結婚を周りに反対されると逆に熱くなる(ロミオとジュリエット効果) etc.
数え上げれば枚挙に暇ない程、身近な社会生活の中にカリギュラ効果の実例をみることが出来るものです。


大切なセルフコントロール


「ダメと言われることをやりたくなる」のが人間の哀しき性の真理ならば、素敵な世の中が訪れるためにひとり言として呟いてみます。


権力者や先生と呼ばれるようになったら偉いんだから、ハラスメントなど気にせずあるがままに天上天下唯我独尊を歩んで下さい。

力こそが正義なのですから、現代に蘇ったヒトラーと言われようが屁理屈を押し通し、人を殺すことを厭わず戦争を続けて下さい。

グローバルや民主主義など偽善の賜物ですので、自己&自国至上主義を貫き、侵略を繰り返して世界統一をして下さい。

教育とは白黒を教える場であり灰色事などあってはならぬのですから、二極化警察を動員して世の中の2極化を積極的に推進していってください。

TV番組で肝心なところになるとモザイクを掛けて都度CMに突入させるなら、一層の事、番組のはじめからモザイク掛けちゃってみてください。

「あなただけへのヒ・ミ・ツ」ってオラを試しているんだろうけど、誓って絶対に誰にも言わないよ。座右の銘は「真実に生きる」だから何でも話してくれて大丈夫だよ。  etc.



「 ... ってことは」とお気付きになる方もいるかと思いますが、マネージメントスキルの高い人においては、お相手に対するモチベーション管理において、とても上手にこのカリギュラ効果の心理的リアクタンスを活用されているといえます。

その活用法はいたって簡単で、ex. 私のことを好きになってはダメよ・どうなるか分からないから絶対にしないでね・聞きたくないから言わないでね etc.
欲する行動の逆を敢えて伝えて動機付けとし、心理的リアクタンスによるカリギュラ効果による行動を引き出そうとする使い方を取られます(やり過ぎは効果が半減するため按配が重要)。


自分では気が付かぬ状態のまま、「 ~ べきである : ~ ねばならない(イラショナルビリーフ)」として、自分自身にプレッシャーやストレスの圧を掛けてしまい、判断・行動にある種の制約を設けてしまっていることは少なくありません。
一番大切な事は、カリギュラ効果の心理的リアクタンスを上手にセルフコントロールすることであり、日常生活の中で「あっ」と思う瞬間があった際は、物事をしっかり冷静&客観的に見つめ&見極めて「適正な自己解放」をしてあげることが必要&大切になるといえるでしょうか。

さらにいうなら自分の判断・行動が動機付けされた原因を見つめ、カリギュラ効果の心理的リアクタンスによるものであった場合は、判断・行動について再考する心の余裕も必要になります。



終わりよければすべてよし

All's well that ends well.




カリギュラ効果の心理的リアクタンスによる判断・行動の切っ掛け作りは、けっして悪いモノだと言い切れるものではなく、肝心なことは、自分自身の判断・行動に対して、理解&納得感が得られていることが最も大切なことだといえ、そのための熟考こそ、目的遂行において見誤ること無い良き結果に繋がる道標となるのかと思います。



PS 教示的な表現が強く出てしまったかも知れずスミマセン。
この記事は、企業内人事カウンセラー&研修講師としてご活躍中のMさんからのリクエストに応じて綴らせて頂きました。











笑顔の行方を見つめて

all written by  Career wing  T.Yoshida@ponyo




素敵な笑顔溢れる1日でありますように!