もうすこし前の話ですが、天皇陛下が前立腺がんで病院にご入院されていたことがありましたよね。そのとき、私はまさしくその病院に出入りしており、連日連日その病院の全景なり、時計のついている新入院塔なりがテレビで放映され、すごい宣伝だなぁ、と人事に思っていたことがありました。まぁ、国立病院に宣伝も何もないんですが。

で、それ以後、前立腺がん、という言葉はかなり浸透し、私もそうなのではないか、という男性の恐怖をあおっていたようで、検査に来る人数が急増しました。これがまさしくメディアの力だなぁ、と私が強く実感したときです。

で、もうひとつ典型的な例があります。それが、血がどろどろ、というセンセーショナルな言葉を使った情報番組です。正式な番組名は失念しましたが、たぶんおもいっきりテレビじゃなかったかなぁ、と思います。その番組で、血がどろどろしているとだめなんですよ、という大変視聴者に分かりやすい言葉と、印象に残りやすい映像を使ったことで、私も血がどろどろなのではないか、と視聴者は不安になったようで、翌日以後病院に、血がどろどろかどうか検査をしてくれ、という希望が殺到しました。

この場合問題なのは、血がどろどろ、という言葉の定義を医者がよく分からなかったことです。今となっては定着した感もありますが、血がどろどろ、といわれたところで、その番組を見ていないと何のことやらよく分からないんですよね。もちろん検査を希望されている方にそれを聞いても詳しくはよく分かりませんし、だからといって何もしないわけにはいかないので、医者がおもうところの検査をするわけですが、大変困った、という話を方々から聞きました。

現在、健康に関する情報を提供している番組は大変数が多くなりました。テレビを視聴する方々の健康に対する興味の高さを物語っているとはおもうのですが、最近特に思うのは、必要以上にあおりすぎじゃないかなぁ、ということです。テレビ的な演出、といわれればそこまでですが、実際に不安に駆られる視聴者も大変多いのが現実です。

この間何気にテレビを見ていたのですが、やはり健康情報番組がやっていました。で、それを見た感想ですが、やっぱりやりすぎじゃないかなぁ、と。話の筋としては、何らかの病気にかかっている人がいて、その人にいろんなシグナルが発されていたものの、その人が結局それに気付かず、症状が進行して死んでしまった、というものでした。だからこの症状が出たら注意しましょう、ということなんですが、医療には罹患率という言葉があるのですが、それを無視して何でも警告するのは意味がないんじゃないかなぁ、と思うんですよね。

もちろん、その番組を見ている人は何万人も何十万人もいるわけで、その中の数人しか対象となり得ない病気があったとすると、あえてその病気を取り上げることで、その数人、もしくは1人もいないかもしれない人の命が助かることの有効性、ということも重視しないといけないのかもしれません。
ただ、何人もの人がかかる病気ではない、ということを認識した上でその病気に対する知識をつける、というのが私は正しいと思うので、そのようにテレビ番組を作っていただけるとありがたいかなぁ、と。一視聴者の立場から思ってみました。