ビタミンEに関して、前に脂溶性ビタミンなんですよ、という話をちょっとしました。つまりは飲みすぎご注意、ということなんですが、今日こんな話が飛び込んできました。リンク切れ防止のために下に転載します。

【ワシントン10日共同】老化の原因になる体内の活性酸素を消す働きがあるビタミンEをサプリメントなどで大量に摂取すると、健康に有害な恐れがあるとする研究を米ジョンズホプキンズ大などがまとめ、10日、米心臓学会で発表した。
 欧米と中国で主に高齢者を対象に行われた、計19の臨床試験(患者総数約13万6000人)を分析した。1日に267ミリグラム(400国際単位)以上を摂取すると、最長約8年の追跡期間中の死亡率が、偽薬をのんだ人に比べ約10%高かった。摂取量がその半分以下だと、逆にプラスの効果も推定された。
 死亡率が高くなる原因は不明。試験参加者の大半は持病があったため、研究者らはさらに研究が必要と認めているが「無害と分かるまで大量摂取は控えた方がいい」としている。
(共同通信) - 11月11日10時20分更新


さすがに死亡率が上がる、なんて話を聞くとドキッとしますが、こういう発見は、実は日々やられてるんですよね。事の大きさはいろいろありますけど。だから、今日の常識が明日の非常識、なんて話は本当に珍しくないんですね。

この記事を読んでいて、なんだろうこれ、と思われたこともあるかもしれません。例えば、

> 最長約8年の追跡期間中の死亡率が、偽薬をのんだ人に比べ約10%高かった。

偽薬、って何?とか、

> 死亡率が高くなる原因は不明。

え、もうこれで明らかなんじゃないの?など。

こういう研究をする際の手法として、二重盲検法、もしくは単純盲検法が通常取られます。それらは、まず、本物の薬と偽物の薬を用意します。偽物、というと聞こえは悪いですが、もちろん有害なものは用意しませんのでご安心。で、それらの薬を検査の対象となる人に服用してもらうのですが、その薬が本物なのか偽物なのかはその人には伝えません。これが単純盲検法です。その上で、服用を勧めている側(つまり研究をしている側)も、どっちの薬が本物なのかを知らない、というのが二重盲検法です。もちろんいずれはちゃんとどっちの薬が本物なのかはわかるようにしておくんですけどね。で、偽者の薬を飲んだ人(つまり何もしなかったのと同じ意味の人)と、薬をキチンとを服用した人との間で、これまたしっかりとした統計手法を用いて比較をするのです。

なので、この記事中の「偽薬」という言葉から、この2つの研究手法のうちどちらかがとられたんだなぁ、ということが分かります。それとともに、しっかりと手順を踏んだ研究をしているんだな、ということももちろん分かるんですが、ジョンズホプキンス大学(アメリカの名門大学)にそんなことを言うのは釈迦に説法なのでさすがに小声でしか言いません。

なぜこのような手法がとられるんでしょうか。これは、プラセボ効果が大いに関係あるんです。例えば、検査をする前に検査の対象となる人に、今回の検査の目的は何で、そのためにこの薬を飲んでもらって、大体こんな結果が出ると思います、なんて説明をしたとします。そうすると、本当はその薬にそういう効果はないのに、検査の対象となる人は、事前にこういう話を聞いてしまったがために、なんとなく自分にそのような効果が出ているという思い込みをすることがよくあります。これがプラセボなのですが、もちろん研究をする上においては大きな問題ですので、これらがなるべくしっかりと取り除かれるように配慮しているのですね。

さて、この記事を読むと、13万人以上を対象として、8年は追跡調査も行い、しかも、披検対象が欧米+中国ということで、人種的な差異もしっかりと考慮されているように見えるのに、いまだに原因は不明、ということしか言えていないようですよね。つまり、ビタミンEを大量に摂取すると死亡率が上がる、ということを言うためには、8年という年月は短すぎて、もっともっと時間がかかる、ということなんです。

これは新薬の研究にも同様のことは言えるわけで、ほんとーーーうにすごい時間とお金と人手がかかります。下手したら、研究者一人のライフサイクルを軽く超えるような期間を要するものもあったりして、こういうことは歴史の積み重ねなんだなぁ、と、元弱小研究者だった私なんかは思うわけです。

こんなことで、新たな発見があるまでには大変な時間やお金人手がかかるというお話でした。