おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「昨日は『絶対に病院で最期まで頑張る。』って言ってたのに、今朝になったら『もう家に帰りたい』って…。お父さん、どっちが本音なの?」

 

診察室の隅で、娘さんがこぼした言葉。

 

その困惑した表情が、今も忘れられません。

 

朝と夕方で、月曜日と金曜日で、先週と今週で。大切な人の意思がコロコロ変わることに、振り回されて疲れ果てていませんか?

 

ベル揺れることは、生きている証

2020年の秋、私が担当した加藤さん(72歳・肺がん)のケースです。

月曜日「抗がん剤、もう一度やってみる。」

 火曜日「やっぱり副作用が怖い。」 

水曜日「でも、孫の結婚式には出たい。」 

木曜日「もう疲れた。何もしたくない。」 

金曜日「来週の検査、受けようかな。」

 

奥様は「主人の気持ちについていけない。」と涙ぐんでいました。

 

 

ベルなぜ気持ちは揺れ動くのか

人の心って、実はすごく正直です。

その日の体調、天気、会った人、見たニュース。すべてが気持ちに影響します。

 

私自身、健康なときでも「今日はやる気満々!」な日もあれば、「何もしたくない…。」という日もあります。

ましてや、病気と向き合っている方なら、なおさらです。

 

具体的な要因を挙げてみましょう:

身体的要因

  • 痛みの強さが日によって違う

  • 薬の副作用で気分が変わる

  • 睡眠の質によって判断力が変化

心理的要因

  • 希望と絶望の間を行き来する

  • 家族への遠慮と本音のせめぎ合い

  • 死への恐怖と受容の繰り返し

社会的要因

  • 面会者によって気持ちが左右される

  • ニュースや他の患者さんの話に影響される

  • 医療者の言葉ひとつで希望を持ったり失ったり

 

ベル揺れを「全部」受け止める勇気

私が大切にしている言葉があります。

それは、ある患者さんが教えてくれた「今日の私は、今日の私。」という言葉。

 

昨日の決断と今日の決断が違っても、それはどちらも「本当の気持ち」なんです。

矛盾しているように見えて、実は矛盾していない。その瞬間瞬間の、正直な心の声なんです。

 

佐々木さん(仮名・68歳)のご主人は、朝「もう治療はやめる。」と言い、夕方には「やっぱり頑張る。」と言います。

奥様は最初、「どっちなの!」とイライラしていました。

 

でも、ある日こう言ったんです。

「朝の『やめたい』も、夕方の『頑張りたい』も、全部受け止めることにしました。だって、どっちも主人の本音だから。」

 

それ以来、ご主人は安心したような表情で、素直に気持ちを話すようになりました。

 

ベル揺れる気持ちとの付き合い方

じゃあ、実際にどう対応すればいいのか。私が実践している方法をシェアしますね。

 

1. 「今の気持ち」を大切にする

「さっきと言ってることが違うよ。」ではなく、「今はそう思うんだね。」と受け止める。

実例: ❌「昨日は家に帰るって言ったでしょ。」 

   ⭕「今日は病院にいたい気分なのね。」

 

2. 決断を急がない

重要な決断は、何日かかけて。できれば1週間くらい、気持ちの変化を見守ってから。

 

田中さん(仮名・70歳)は、手術を受けるかどうかで1ヶ月悩みました。

でも、その1ヶ月があったからこそ、最終的に納得のいく選択ができたんです。

 

3. 記録をつける

日々の気持ちの変化を記録すると、パターンが見えてきます。

例:体調が良い日→前向き   

  雨の日→ネガティブ    

  孫が来た後→やる気アップ

このパターンが分かれば、対応もしやすくなります。

 

ベル家族の心も揺れていい

実は、家族の気持ちだって揺れているはずです。

「もっと治療を続けてほしい。」 

「でも、苦しむ姿は見たくない。」

 「家で看取りたい。」

 「でも、急変したらどうしよう。」

 

この葛藤、当然です。むしろ、揺れない方が不自然。

 

私は訪問看護で、多くのご家族にこう伝えています。

「揺れる自分を責めないで。それは愛情の深さの表れだから。」

 

ベルプロに頼ることの大切さ

気持ちが揺れ続けて、家族も本人も疲れ果てた時。

そんな時こそ、第三者の出番です。

 

医師、看護師、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー。

私たちは「揺れ」と共に在りたいとおもっています。判断を急がず、じっくりと気持ちの整理をお手伝いします。

 

先日、ある家族会議に同席しました。お父さんの治療方針で、家族の意見がバラバラ。でも、2時間かけてみんなの「揺れ」を共有したら、自然と方向性が見えてきました。

一人で、家族だけで抱え込まないで。プロを上手に使ってください。

 

ベル揺れの向こうに見えるもの

揺れ続けた先に、必ず「これだ」という瞬間が来ます。

それは突然かもしれないし、徐々にかもしれない。でも、十分に揺れた後の決断は、後悔が少ないんです。

 

私が見送った患者さん。みんな、最後まで揺れていました。でも、その揺れを受け止めてもらえた人は、穏やかな表情で旅立っていきました。

 

昨日と今日で言うことが違う。

その揺れ全体が、その人の「生きている証」なんですから。

今日も、大切な人の心の揺れと共に、優しくそこに居てくださいね。

 

今日の問いかけチューリップオレンジ

あなた自身、最近何かで心が揺れていることはありますか?その揺れを、否定せずに受け止められていますか?

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「本当に大丈夫なの?」

 

そう聞いても、いつも「大丈夫よ」と答える母。

 

でも、テレビを見ているはずなのに画面には視線が向いていない。

お茶碗を手にしたまま、ぼんやりと庭を眺めている。そんな光景、見覚えがありませんか?

 

 

 

私が訪問看護師として田中さん(73歳)のお宅を初めて訪れた日のことでした。

 

娘さんが「母は『痛くない』って言うんですけど…。」と困惑顔。

でも田中さんの表情を見た瞬間、眉間にかすかに寄ったしわを見つけました。

 

椅子に座る姿勢が、わずかに右に傾いている。これは左側をかばっているサインです。

 

ベル言葉以外のメッセージ

人は1日に発する言葉のうち、本音を語るのはたった7%という研究があります(アルバート・メラビアンの法則)。

残りの93%は、表情や声のトーン、しぐさで伝わるとされます。

 

特に日本人は「迷惑をかけたくない」という思いから、本当の気持ちを隠してしまいがち。でも体は正直です。

 

私が見てきた「隠れたサイン」をいくつか挙げてみますね。

 

食事の変化 :山田さん(68歳)は、大好きだった刺身を残すようになりました。「食欲がない」と言いますが、実は口内炎の痛みを我慢していたんです。

 

睡眠パターンの変化:夜中に何度もトイレに立つようになった佐藤さん(71歳)。頻尿かと思いきや、実は不安で眠れず、トイレを口実に起きていただけでした。

 

視線の行方 :窓の外をじっと見つめる時間が増えた鈴木さん(69歳)。「景色がきれい」と言いますが、実は「外の世界から取り残された」寂しさの表れでした。

 

ベルため息は心の重さのバロメーター

ある日、訪問先で印象的な場面に遭遇しました。

娘さんが「お父さん、今日は調子どう?」と聞くと、

 

お父さんは「ああ、まあまあだよ。」と答えました。

でもその後、ふぅーっと深いため息。

 

娘さんはその後、キッチンへ。

私は隣に座り、「何か重たいものを抱えていらっしゃいますか?」と訊きました。

すると「実は夜が怖くてね…。」とお話ししてくださいました。

 

ため息って、実は心の重荷を吐き出そうとする自然な反応なんです。

1日に10回以上ため息をつく人は、ストレスレベルが高い状態にあるという東京大学の研究データを見たことがあります。

 

ベル家族だからこそできる「心の聴診器」

ご家族は毎日一緒にいる。だからこそ気づける変化があります。

チェックポイント

  • 朝起きる時間は変わっていませんか?

  • 好きだったテレビ番組を見なくなっていませんか?

  • 電話の声のトーンは以前と同じですか?

  • 笑顔の回数は減っていませんか?

これらの小さな変化に気づいたら、まず「観察」から始めてみてください。

 

ベル観察から対話へのステップ

観察で気づいたことを、どう本人に伝えるか。これが難しいんですよね。

私がおすすめするのは「Iメッセージ」という方法です。

 

「あなたは大丈夫じゃないでしょ。」ではなく、

「私は心配なの。」と伝える。

 

実際の例: ❌「痛いでしょ?我慢しないで。」

      ⭕「お母さんの表情を見ていると、私、心配になっちゃう。」

 

 

ベル沈黙も大切なコミュニケーション

時には、何も言わずにただそばにいることも大切です。

 

私が忘れられない光景があります。

 

末期がんの高橋さん(75歳)のお宅で、息子さんが無言でお父さんの手を握っていました。30分間、ひとことも話さず。でも高橋さんの表情は穏やかで、最後に「ありがとう」とつぶやきました。

 

言葉にしなくても伝わる思いがある。それも立派なコミュニケーションです。

大切なのは、相手のペースに合わせること。無理に話を引き出そうとせず、その人が話したくなるタイミングを待つ。これが一番です。

 

毎日の何気ない瞬間に、本当の気持ちは隠れています。

 

「大丈夫」の裏にあるため息や視線に気づいたとき、初めて本当の支えになれるのかもしれません。

 

 

今日の問いかけチューリップオレンジ
あなたの大切な人の「いつもと違う」に、最近気づいたことはありますか?それはどんな瞬間でしたか?

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「どこで最期を迎えたいですか?」

 

この質問に、すぐ答えられる人は、どれくらいいるでしょう。

 

私も、正直わかりません。

重たくて、正面から向き合うのが難しい。

 

でも、こんな質問だったらどうでしょう。

 

「もしも魔法が一つ使えるとしたら、体のどこを治したいですか?」


 

ベル87歳の女性が、ぽろりとこぼした言葉

 

忘れられない出来事があります。

 

87歳、胃がんの女性。

ご家族が何を聞いても、「いいのよ、みんなの好きにして。」としか言わない方でした。

 

ある訪問日、私はふと、こんな質問をしてみました。

 

「○○さん、もしも魔法の杖があって、一日だけどこへでも行けるとしたら、どこに行きたいですか?」

 

彼女は少し驚いた顔をして、それから遠くを見つめました。

 

「故郷の海が見たいわね。子供の頃、毎日泳いでいたの。」

 

そこから、彼女の話は止まらなくなりました。

愛媛の海のこと、幼なじみのこと、結婚して東京に出てきたこと。

 

最後に彼女は、少し照れながらこう言いました。

 

「本当はね、最期は故郷で死にたかったの。でも、今さら言えなくて。」


 

ベル 「もしも」の質問が持つ、不思議な力

 

真正面から「どうしたいですか?」と聞かれると、人は身構えます。

 

「これは重要な決定だ。」

「間違った答えを言ってはいけない。」

「家族に迷惑をかける答えは言えない。

 

こんなプレッシャーが、無意識に働くのです。

 

でも、「もしも」という仮定の言葉が入ると、状況が変わります。

 

「現実じゃないから、何を言ってもいい。」

「夢みたいな話だから、本音を言っても大丈夫。」

 

この心理的な安全地帯が、本人の口から本音を引き出すのです。


 

ベル使える「もしも」の質問集

 

私がいままでしてみた「もしも」の質問をいくつかご紹介します。

 

【体について】

「もしも魔法が使えて、体のどこか一つを治せるとしたら、どこを治したいですか?」

 

この答えから、本人が一番辛いと感じている症状がわかります。

 

【時間について】

「もしも一日だけ元気だった頃に戻れるとしたら、何をしたいですか?」

 

本人が大切にしていること、やり残していることが見えてきます。

 

【人について】

「もしも誰か一人に会えるとしたら、誰に会いたいですか?」

 

本人にとって大切な人間関係が明らかになります。

 

【場所について】

「もしも行けるとしたら、どこに行ってみたいですか?」

 

思い出の場所、心のふるさとが見えてきます。


 

ベル遊び心が、緊張をほぐす

 

これらの質問には、ちょっとした遊び心があります。

 

「魔法」「もしも」「一日だけ」

 

こういった言葉が、重たい話題を少し軽くしてくれるのです。

 

厚生労働省が推進する「人生会議(ACP)」でも、繰り返し話し合うプロセスが大切にされています。

 

でも、いきなり「人生の最終段階について話しましょう。」と言われても、多くの人は抵抗を感じます。

 

だからこそ、「もしも」の質問から始めてみる。

現実から少し離れた、優しい問いかけが、心の扉をそっと開いてくれます。


 

ベル78歳の男性が語った「わがまま」

 

もう一つ、印象的なエピソードをお話しします。

 

78歳、前立腺がんの男性。

「どうしたいですか?」という質問には、いつも「家族に任せる。」と答えていました。

 

ある日、私はこう聞いてみました。

 

「もし、たった一つだけわがままが言えるとしたら、どんなことですか?」

 

彼は少し笑って、こう言いました。

 

「わがままね……そうだな、最後に一回だけ、ゴルフがしたいな。妻には内緒だけど。」

 

奥様は驚いていました。

「あなた、そんなこと思ってたの?」

 

結局、彼は車椅子で近くのゴルフ練習場に行き、数球だけボールを打ちました。

握力が弱っていて、うまく打てなかったけれど。

 

帰りの車の中で、彼は泣いていたそうです。

 

「ありがとう。これでもう、思い残すことはない。」


 

ベル もしもの質問をしてみると…

 

大切な人の本音を知りたいとき。

でも、直接聞くのが難しいとき。

 

「もしも」の質問を、試してみてください。

 

「もしも魔法が使えたら、どうしたい?」

「もしも一つだけ願いが叶うとしたら?」

 

その答えの中に、本人が本当に大切にしていることが、きっと現れてきます。

 

現実から少し離れた場所で、人は本音を語りやすくなるのです。

 

 

 

🍀今日の問いかけ🍀

もしもあなたが魔法を一つ使えるとしたら、何をしたいですか?

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「父さんは絶対、最後まで治療を続けたいはずよ!」

「いや、お袋はもう楽にしてあげたいって言ってただろ!」

 

リビングで、兄妹の声が響きます。

テーブルの向こうで、82歳のお父さんは黙って座っていました。

 

その目は、どこか遠くを見ていました。


 

ベル日常にある光景

私は訪問看護師として、10年以上の終末期ケアに携わってきました。

その中で、この光景を何度見たことでしょう。

 

家族会議。

本人のために開かれたはずの話し合い。

 

でも気づくと、家族同士が自分の意見を主張し合っていて、当の本人が置き去りになっている。

 

「父さんはこう思っているはずだ。」

「いいえ、お母さんはそんなこと望んでいないわ。」

 

本人のためを思うからこそ、譲れない。

 

でも、その議論の中心にいるべき人は、今、何を感じているのでしょうか。


 

ベルある家族の、失敗と気づき

 

2018年のことです。

 

78歳の女性、肺がんのステージ4。

ご主人と息子さん、娘さんの4人家族でした。

 

ある日、主治医から「今後の療養場所について、ご家族で相談してください。」と言われました。

 

その夜、リビングで家族会議が開かれました。

 

息子さんは「病院のほうが安心だ。」と主張。

娘さんは「お母さんは家が好きだから、家にいるべき。」と譲らない。

ご主人は二人の間で困り果てていました。

 

30分ほど議論が続いた頃、お母さんがぽつりと言いました。

 

「ねぇ、私のことなのに、誰も私に聞いてくれないのね。」

 

その言葉に、全員が黙りました。


 

ベル「本人のために」が、いつの間にか…

 

「大切に思うからこそ、お互いに譲れず、対立してしまうこともあるでしょう。」

 

そう、対立の根っこにあるのは「愛」なのです。

本人を大切に思っているからこそ、自分の考える「最善」を主張する。

 

でも、いつの間にか「本人のため」が「家族の満足のため」にすり替わってしまうことがあります。

 

「後で後悔したくない。」

「私がこう言ったんだから、これでよかったと思いたい。」

 

無意識のうちに、自分自身の心の安定を優先してしまうのです。


 

ベル原点に立ち返る3つの問い

 

家族会議が迷走しそうになったとき。

私がご家族に投げかける、3つの問いがあります。

 

① これは「誰の」人生の話ですか?

 

シンプルだけど、忘れがちなこと。

決めるのは医療者でも、家族でもなく、本人です。

 

② 本人は「今」何を感じていますか?

 

過去に言っていたこと、以前の希望。

それは確かに参考になります。

でも、「今」の本人の気持ちを確認していますか?

 

③ この場に、本人は「いますか」?

 

物理的にそこにいても、心理的に「不在」になっていることがあります。

本人が発言できる空気を作っていますか?


 

ベル私の失敗談

 

偉そうに言っていますが、私自身も失敗だらけです。

 

ある家族の会議に同席したとき。

ご家族の議論が白熱し、私はそれを黙って見ていました。

 

「専門家として、客観的に見守ろう」と思ったのです。

 

でも、帰り際に本人(75歳の男性)がこう言いました。

 

「米中さん、あなたも何も聴いてくれなかったね。」

 

ハッとしました。

 

私は「見守る」つもりで、実は「傍観」していたのです。

本人の味方になるべきタイミングで、声をかけられなかった。

 

あの日の後悔は、今でも胸に残っています。


 

ベル本人を中心に置き直すために

 

小野薬品のがん情報サイトでは、こう説明されています。

 

「家族間の意思がバラバラであると、かかわる医療者も混乱し、患者さんの価値観に基づいた治療の提供が難しくなります。」

 

だからこそ、まず本人の価値観を確認することが大切なのです。

 

家族会議の前に、本人と二人で話す時間を作る

一人ひとりが、本人から直接話を聞く。

そうすることで、「私が思う本人の希望」ではなく、「本人が実際に語った希望」を共有できます。

 

会議の冒頭で、本人に発言してもらう。

「○○さん、まずあなたの今の気持ちを聞かせてください」

最初に本人が話すことで、議論の軸がぶれにくくなります。

 

第三者を入れることも選択肢。

ケアマネ、訪問看護師など、専門家に同席してもらうことで、冷静な進行が可能になります。


 

ベル「一緒に迷う」という選択

 

最後に、大切なことをお伝えします。

 

家族会議で「正解」を出す必要はありません。

 

「答えが出ない」ということを、一緒に認め合う。

「迷っている」ということを、一緒に受け入れる。

 

それだけでも、本人にとっては大きな支えになります。

 

「私たちも正直、どうすればいいかわからない。でも、一緒に考えたいと思ってる。」

 

この言葉が、孤独を感じている本人の心を、少し軽くするかもしれません。

 

 

 

🍀今日の問いかけ🍀

あなたの家族会議では、「本人」は本当にそこにいますか?

誰のための話し合いか、時々確認してみてくださいね。

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「先生と家族に、任せます。

 

この言葉を聞くと、がっかりする方がいます。

「自分のことなのに、決めなくていいの?」って。

 

でも、その言葉の奥には、もしかしたら深い意味が隠れているかもしれません。


 

ベル 85歳の元教師が教えてくれたこと

 

5年前のことです。

 

85歳の男性、大腸がん。

元小学校の校長先生でした。

 

主治医から治療の選択肢を説明されたとき、彼は静かにこう言いました。

 

「先生、私はもう長く生きてきました。専門家である先生と、長年連れ添った妻に、任せますよ。」

 

奥様は困惑していました。

「あなた、本当にそれでいいの?」と。

 

でも彼は、穏やかな笑顔で答えたのです。

 

「お前と先生を信頼しているから、任せるんだよ。信頼していない人には、任せられないだろう?」


 

ベル「任せる」の二つの意味

 

この出来事から、私は「任せる」という言葉には、少なくとも二つの意味があると気づきました。

 

一つは、「考えたくない」という回避。

複雑なことに向き合うのが辛くて、思考を止めてしまう場合です。

 

もう一つは、「信頼している」という委任。

「この人たちなら、私のために最善を尽くしてくれる。」という、深い信頼の表れです。

 

見た目は同じ「任せます。」でも、背景にある心理はまったく違うのです。


 

ベルどちらの「任せる」かを見分けるヒント

 

では、どうやって見分ければいいのでしょうか。

 

 

① 表情を見る

・回避の場合:困惑、疲労、視線を逸らす

・信頼の場合:穏やか、リラックス、相手の目を見る

 

② 言葉の前後を聞く

・回避の場合:「わからないから」「難しいから」

・信頼の場合:「あなたを信じているから」「専門家だから」

 

③ その人の普段の性格を考える

・もともと決断が苦手な人なのか

・人に任せることに抵抗がない人なのか


 

ベル信頼の「任せる」への、正しい応え方

 

もし、本人の「任せます」が信頼の表れだとわかったら。

 

その信頼に、どう応えればいいでしょうか。

 

小野薬品のがん情報サイトでは、治療方針の決定において

 

「キーパーソンを決め、『家族の病気』として一丸となって治療に取り組める体制を作ることが好ましい」

 

と解説されています。

 

「任せます」と言われたからといって、家族だけで決めてしまうのではなく、本人の価値観を踏まえながら、一緒に考えていく姿勢が大切なのです。

 

音譜感謝を伝える

「信頼してくれて、ありがとう。一緒に考えていこうね。」

 

音譜確認の質問をする

「もし、たった一つだけ、わがままが言えるとしたら、どんなこと?」

 

この「もし」の質問は、とても有効です。

現実の制約から少し離れることで、本人の本当の願いが見えてくることがあります。

 


 

ベル ある妻の言葉

 

私が担当した70代の女性は、夫が膵臓がんで余命宣告を受けました。

 

夫は「お前に任せる」と言いました。

妻は最初、戸惑っていました。

 

「私に決めろって言うの?そんな重たい責任…。」

 

でも、何度か話を重ねるうちに、彼女はこう言ったのです。

 

「考えてみたら、夫は昔から、大事なことは私に相談してくれていました。任せると言ったのは、私を信じてくれているからなのかもしれない。」

 

その気づきから、彼女は「夫が自分を信頼してくれている。」という安心感を得て、前向きに介護に向き合えるようになりました。

 


 

ベル「任せる」を受け止める心の準備

 

大切な人から「任せます」と言われたとき。

 

それを「無責任」と受け取るか、「信頼」と受け取るかで、その後の関係が大きく変わります。

 

もちろん、すべての「任せます」が信頼の表れとは限りません。

本人が本当に困っていて、助けを求めている場合もあります。

 

でも、「もしかしたら、これは信頼の言葉かもしれない。」と思えたら。

 

その瞬間、あなたの心は少し軽くなるかもしれません。

 

任されるというのは、大変なこと。

でも同時に、とても尊いことでもあるのです。

 

 

 

🍀今日の問いかけ🍀

大切な人から「任せる」と言われたら、あなたはどう感じますか?

プレッシャー?それとも、信頼の証?

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 


「お母さん、ちゃんと聞いてるの?」

娘さんの声が、少し尖っていました。

82歳のお母さんは、肺がんの診断を受けて1ヶ月。
治療方針を決める大切な時期なのに、何を聞いても曖昧な返事しかしない。
娘さんは、焦っています。

でも私は、お母さんの手を見ていました。
膝の上で、指先が小さく動いている。

あぁ、この人は今、必死に考えているんだ──。


https://ameblo.jp/hokensitukodomo


私は、今、はるちゃんから、ロジャースの来談者中心療法をベースとした、『聴く』ことに特化したカウンセリングを学んでいます。


昨日に続き、『聴く』ことに関連したお話しです。




ベル「早く決めて」が、心を閉ざす

私たちは無意識に、答えを急かしてしまいます。

「で、どうしたいの?」
「結局、どっちがいいの?」
「早く決めないと困るのよ。」

こんな言葉が、つい口をついて出る。
わかります。だって、心配だから。不安だから。

でも、急かされるほど、人は口を閉ざすものなのです。

ある研究では、がん患者さんの意思決定において

 

「時間を十分に確保し、本人を焦らせないなどの配慮」が重要だと指摘されています。


医療機関で医師や看護師に囲まれて何かを決めるということ自体、多くの方にとっては非日常的な緊張状態なのです。




ベル 迷いを「肯定」する

では、どうすればいいのでしょうか。

最もシンプルで効果的な方法があります。

それは、迷いを肯定すること。

「そうだよね、すぐに答えなんて出ないよね。」
「色々考えてしまって、疲れるよね。」
「迷っていること自体、全然おかしくないよ。」

こういった言葉をかけると、ほとんどの方の表情がふっと緩むのを感じます。

「迷ってもいいんだ。」

そう思えた瞬間、人は安心して、少しずつ自分の気持ちを言葉にする準備ができるのです。




ベル 78歳の男性が、ぽつりとこぼした一言

忘れられない出来事があります。

78歳、胃がんの男性。
家族会議で「病院か、自宅か」を決めることになっていました。

奥様も娘さんも、それぞれ意見を持っている。
でも本人は、ずっと黙ったまま。

私は、こう声をかけました。

「○○さん、今すぐ答えなくても大丈夫ですよ。迷っていて当然ですから。」

すると彼は、ゆっくりと顔を上げて、こう言ったのです。

「正直、まだ自分でもわからんのよ。でも、こうやって聞いてもらえると、少し楽になる。」

この「少し楽になる。」という感覚が、大切なのだと思います。




ベル沈黙を大切に「待つ」ということ

臨床心理学者のカール・ロジャーズは、傾聴において「共感的理解」を大切にしました。
これは、相手の世界を「あたかも自分自身の世界であるかのように」感じ取ろうとする姿勢です。

傾聴の技法の中には、昨日お話ししたように「沈黙への対応」というものがあります。
相手が話に詰まり沈黙したとき、まずは相手の様子をじっくりと落ち着いて観察し、ゆっくりと待つ。



この「待つ」という行為自体が、実は強力なメッセージになっています。
「あなたの言葉を、急かさずに待っています。」という、無言の肯定なのです。




ベル家族ができる、具体的な3つのこと

ここで、実践的なヒントをお伝えします。

① まず、自分の焦りに気づく
「早く決めてほしい」という気持ちがあったら、一度深呼吸。
その焦りは、あなた自身の不安から来ているのかもしれません。

② 質問を「開いた形」に変える
✕「どっちがいい?」(二択を迫る)
○「最近、どんなこと考えてる?」(自由に話せる)

③ 「訊く」より「いる」を意識する
何か言葉をかけなくても、そばにいるだけで十分なときもあります。
一緒にお茶を飲む。隣で静かに過ごす。それだけで。




ベル答えを出すのは、本人のタイミングで

厚生労働省が推進する「人生会議(ACP)」の理念も、ここにあります。

大切なのは「答えを出すこと」ではなく、「繰り返し話し合うプロセス」そのもの。

今日、結論が出なくても、大丈夫。
明日、気持ちが変わっても、大丈夫。

その変化も含めて、一緒に歩んでいく。
それが、本当の意味での「支え」なのだと思います。

大切な人の言葉を、急かさずに待ってみてください。
きっと、その人のペースで、少しずつ心の扉が開いていくはずです。



🍀今日の問いかけ🍀
あなたは最近、誰かの「沈黙」を急かしてしまったこと、ありませんか?
気づくことから、変化は始まります。

おはようございます晴れ 

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

「どうしたい?」

そう尋ねたとき、お父さんは天井を見つめたまま、何も答えてくれなかった。

リビングの時計が、カチ、カチと時を刻む。
娘さんは困った顔で私を見る。
「いつもこうなんです。何を聞いても『任せる』としか…。」

このような光景を何度見てきたでしょう。
そして、その沈黙の意味を、私はずいぶん長い時間をかけて考えてきました。


ベル黙ってしまうのは、考えていないからじゃない

2019年の秋でした。
73歳の男性、肺がんのステージ4。
主治医から「積極的治療か、緩和ケアか」と問われたとき、彼は5分間、一言も発しませんでした。

奥様が焦って「お父さん、先生が聞いてるでしょ!」と。
でも私は、彼の手が小さく震えているのを見ていました。

黙っているのは、考えていないからじゃない。
考えすぎて、言葉にならないのです。

がんと診断された直後、多くの方が「目の前が真っ暗になった」という体験をします。


病名を耳にした後の数日間は、

「まさか自分ががんのはずがない。」「何かの間違いに決まっている。」と、認めたくない気持ちが強くなるのはごく自然な反応なのです。


ベル「迷惑をかけたくない」という優しさ

ある70代の女性患者さんは、こう打ち明けてくれました。

「本当は最期まで家にいたい。でもね、それを言ったら娘に介護の負担がかかるでしょう。だから言えないの。」

彼女は「お任せします。」と言い続けていました。
でもその言葉の裏には、家族への深い思いやりがあったのです。

沈黙の奥には、こんな気持ちが隠れていることがあります。

「わがままを言って、家族に負担をかけたくない。」
「医療のことなんて素人にはわからない。」
「本当の望みと向き合うのが、正直、怖い。」

どれも、その人なりの優しさや、人間として当たり前の不安から来ているものです。


ベル「答え」を求めない、という選択

ある日、私は失敗をしました。

86歳の男性に「ご自宅と病院、どちらで過ごしたいですか?」と尋ねたのです。
彼は困った顔をして、しばらく黙り込みました。

後から娘さんに言われました。
「父は選択肢を出されると固まってしまうんです。昔から。」

私たち医療者は、つい「決めてください」と迫りがち。
でも、決められないことだってある。
決めたくないことだってある。

臨床心理学者のカール・ロジャーズは、

人の話を聴くときに大切な態度として「無条件の肯定的関心」を挙げています。
これは、相手がどんな状態であっても、その存在をありのまま受け入れようとする姿勢のこと。

迷っていること。
黙っていること。
答えが出せないこと。

それらすべてを、「それでいいんだよ。」と受け止めることから、対話は始まるのかもしれません。

https://ameblo.jp/hokensitukodomo

私は今、はるちゃんの聴くスクールで、『聴く』ことをさらに深めています。カールロジャースの来談者中心療法をベースとしたカウンセリングです🌼



ベル沈黙は、信頼のサインかもしれない

こんな経験もあります。

末期がんの80代男性。
「どうしたいですか?」という問いに、彼は私の目を見て、静かに言いました。

「あんたらに任せるよ。信頼してるから。」

この言葉を聞いたとき、私は気づきました。
「任せる」は、決して思考停止ではない。


「この人たちなら、自分のために最善を尽くしてくれる」という、深い信頼の表れでもあるのだと。


ベル想像することから始めてみませんか

大切な人が黙ってしまったとき。
答えを急がず、まず想像してみてください。

この人は今、何を感じているのだろう。
何が怖いのだろう。
何を守ろうとしているのだろう。

沈黙には、言葉以上の意味が詰まっています。

厚生労働省が推進する「人生会議(ACP)」でも、大切にされているのは「答えを出すこと」ではなく、「繰り返し話し合うプロセス」そのものです。

今日、無理に答えを出す必要はありません。
ただ、その人の沈黙のそばに、そっといてください。



🍀今日の問いかけ🍀
大切な人の「沈黙」に、どんな意味があると思いますか?

おはようございます晴れ

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

この10投稿は、コミュニケーションをテーマに、色々な話をしてきました。 

 

・言葉にならない「沈黙」が持つ力(12/8)

・「過去」を脇に置いて「今」を見る方法(12/9) 

・「ありがとう」が作る温かい空気(12/10) 

・画面越しでも心を伝えるコツ(12/11) 

・カッとなった後の「ごめんね」の技術(12/12) 

・「他人」の風を入れる効果(12/13) 

・共に在るということ(12/14) 

・「笑い」という名の潤滑油(12/15) 

・自分を守る「ノー」の伝え方(12/16)

 

たくさんの「技術」をお話ししてきましたが、いかがでしたか?

「頭では分かるけど、やっぱり難しい…。」 

「うちの家族は、そんな簡単な相手じゃない…。」

 

そうですよね。

 毎日、本当にお疲れ様です。 全部、完璧になんて、できるわけありません。

私だって、35年看護師していても、いまだ毎日が失敗と反省の繰り返しです。

 

 

🌀「投げる」ことばかり、考えていませんか?

介護で、コミュニケーションがうまくいかない時。 私たちは、つい、「どう“投げる”か」ばかり考えてしまいます。

 

「どう言ったら、分かってくれるんだろう。」 

「どう伝えたら、言うことを聞いてくれるんだろう。」

 

それは、相手のミット(グローブ)をめがけて投げる「キャッチボール」というより、 相手にボールを“当てる”、「ドッジボール」になっていませんか?

 

ボールを、一方的に、バンバン投げつける。

 相手は、痛くて受け取れないか、必死でよけるか、あるいは怒って投げ返してくるか…。 これでは、心は通い合いませんよね。

 

 

✨大切なのは「相手が、今、構えているか」

キャッチボールがうまい人って、

 「相手が今、どこにいるか。」 

「ちゃんと、こっちを見ているか。」

 「受け取る“構え”ができているか。」 

を、よーく見てから、フワッと、相手が一番取りやすいボールを投げますよね。

 

コミュニケーションも、全く同じです。

 

ご本人が、痛みで苦しんでいる時に、 

「将来のこと、ちゃんと考えて!」 

なんていう「剛速球」を投げても、受け取れるわけがありません。

 

ご家族が、仕事のことでイライラしている時に、

 「なんで手伝ってくれないの!」 と文句を投げても、ケンカになるだけです。

 

「今、この人は痛みで苦しいんだな。じゃあ、投げるのはやめて、背中をさすろう。」 「あ、今、イライラしてるな。じゃあ、今はそっとしておいて、夜にご飯でも食べながら話そう。」

 

“投げない”という選択をすること。 それも、立派な、素晴らしいキャッチボールなんです。

 

 

💖ボールは、ゆっくりでいい

私がお伝えしてきたこの10日間のテーマは、 

「相手が取りやすい、山なりのボールの投げ方」であり、 

「時には、投げずに待つ勇気」です。

 

ご家族とのコミュニケーション。 焦らなくて、いいんです。 

うまくいかない日もありますね。

 

でも、ほんの少し、

「相手は今、構えてるかな?」と、一呼吸置いてみる。

 それだけで、あなたの「想い」という名のボールは、 ずっと、ずっと、相手の心に届きやすくなるはずです。

 

毎日、ご自身の悩みと向き合いながら、読んでくださって、本当にありがとうございました。 

皆さんの介護の日々に、少しでも温かいキャッチボールが増えることを、心から願っています。

 

 

今日の問いかけチューリップオレンジ

あなたが「これなら、できそうかも」と思った、小さな「はじめの一歩」は、何ですか?

おはようございます晴れ

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「夜中も、2時間おきに呼ばれる…。」 

「あれもこれも、私じゃないとダメだと言われる…。」

 「もう、体がボロボロ。限界…。」

 

大切なご家族のためだからと、 

 

「はい、わかった。」 「大丈夫、やるよ。」

 

 と、全ての要求に、笑顔で応えようとしていませんか?

 

でも、心の奥底では、

 「なんで私ばっかり!」 「もう、疲れた!!」 

 

と、悲鳴を上げていませんか?

 

「ノー(できません)」と言うことに、

 「冷たい人間だと思われたくない。」 

「愛情がないみたいで、罪悪感がある。

」 

と、ブレーキをかけてしまう。 

責任感の強いあなただからこそ、陥りがちなですね。

 

 

🌀「イエスマン」看護師の、大失敗

白状します。 私、若い頃、典型的な「イエスマン」看護師でした。

 

 家族介護の経験もない私が、患者さんやご家族に信頼してもらうには、「何でもできる」と思われるしかない、と思い込んでいたんです。

 

看護師の仕事じゃないでしょ! ということも、「喜んで!」と、何でもかんでも引き受けていました。

 

結果、どうなったか。 

 

本来の「看護ケア」をする時間が圧迫され、残業続きでヘトヘトに。 

 

そして、ある日、一番大事な「点滴の交換」の時間を、うっかり間違えそうになったんです。

 

「私は、一体、何をしてるんだろう…。」

 

何でも引き受ける「イエスマン」は、「いい看護師」ではありませんでした。

 

 自分の限界を超えて引き受けた結果、一番大事な「命に関わる仕事」を危険にさらす、「危ない看護師」になっていたんです。

 

 

✨あなたを守る「愛のあるノー」の伝え方

あなたが「ノー」を言えないのは、愛情があるからこそ、「すべてに応えたい」んですよね。

 

でも、考えてみてください。

 あなたが今、無理をしすぎて倒れてしまったら?

 

 それこそが、ご本人にとって、一番つらいことじゃないでしょうか。

 

だから、介護を「続ける」ために、「ノー」を言う勇気が必要なんです。

 相手を傷つけず、自分も守る、「愛のあるノー」の伝え方。

 

実践3ステップです。

 

① まずは「受け止める」(Yes,)

 いきなり「できません!」と拒否すると、相手は「拒絶された」と傷つきます。 

まずは、「そうしたいのね。」「困ってるのね。」と、相手の「気持ち」を受け止めます。 「(Yes,)夜中、背中が痛くて眠れないのね。つらいわね。」

 

② 「できない(ノー)」と「理由」を伝える(No, Because...)

 次に、「ノー」と、その「理由」を、正直に、でも冷静に伝えます。 

「(No,)でもね、ごめんなさい。私も、夜通し起きてマッサージするのは、もう体力の限界なの。」 「(Because...)私が倒れたら、あなたのお世話、誰もできなくなっちゃうから。」

 

③ 「代わりの案」を提案する(But...) 

「だからダメ」で終わらせず、「代わりに、こうしない?」と、別の案(解決策)を示します。 「(But...)だから、夜は痛み止めのお薬を使ってみない?先生に相談してみるね。」 「(But...)マッサージは、日中マッサージ師さんに来てもらって、お願いしてみようか。

 

 

「ノー」は、相手への「拒絶」ではなく、

「あなたとの関係を、これからも長く続けたいから、ルールを調整しましょう」 という、前向きな「提案」です。

 

自分を犠牲にして成り立つ関係は、絶対に長続きしません。 あなたが笑顔でいること。 それが、一番の介護です。

 

その笑顔を守るために、今日、小さな「ノー」を伝えてみませんか?

 

 

今日の問いかけチューリップオレンジ

あなたが今、本当は「ノー」と言いたいけれど、言えずに我慢していることは何ですか?


おはようございます晴れ

carenavi_gate 訪問看護師 米中京子です。

 

自己紹介です飛び出すハート

 

 

 

「親が、がんなのに。」 

「大変な闘病中なのに。」

 「私が、テレビを見て笑ったり、友達とランチして笑うなんて…。」

 

 

なんだか「不謹粋」な気がして。

 

 悪いことをしているような罪悪感を、感じていませんか?

 

 ご本人の前では、なおさら。 深刻な顔をして、真面目な話をしないといけない、と思い詰めていませんか?

 

でも、考えてみてください。 24時間、365日。 眉間にしわを寄せて、息を詰めていたら… ご本人より先に、あなたが参ってしまいますよ。

 

 

🌀忘れられない「カツラ」事件

私が、訪問看護で回っていた、あるお宅でのこと。 山本さん(60代・男性)は、抗がん剤治療の副作用で、髪の毛が抜けてしまいました。 奥様が用意した、立派なカツラをつけていらっしゃったんです。

 

ある日、私が血圧を測ろうと、山本さんのベッドサイドに近づいた、その時。

ベッドの横に置いてあった扇風機に、私の白衣の裾(すそ)が、バサッ!と引っかかって、 扇風機が、ガタン!と倒れ… その風が、山本さんの頭を直撃!

 

スポーーン!!!

 

…山本さんのカツラが、それは見事に、宙を舞いました。

 

 そして、床を、コロコロコロ…と転がっていったんです。

 

一瞬の沈黙。

 

 私、血の気が引きました。「し、しまったーーー!!」

 

すると、 カツラがなくなった頭で、山本さんが、 

 

「米中さん、ナイスキャッチ」 と。

 

その横で、奥様が、 

 

「プッ…!あ、あなた、そんな涼しい頭してたのね!」 と、吹き出して。

 

それを聞いたら、もうダメです。 私と山本さんと奥様と、3人で、涙が出るほど大笑いしてしまいました。 

 

「ご、ごめんなさい!」

「いやぁ、こっちが恥ずかしいわ!」

 

 

✨「笑い」は、心の「深呼吸」

もちろん、病状が深刻な時に、無理に笑う必要はありません。 

 

でも、その「深刻な状況」だからこそ、 ほんの一瞬でも、フッと肩の力が抜ける「笑い」が、絶対に必要なんです。

 

笑うことって、心の「深呼吸」と同じ。

 

 ギューッと縮こまった心を、フワッと広げてくれる。

 

 息が詰まるような毎日の中に、「窓」を開けて、新しい空気を入れてくれるんです。

 

笑うと、免疫力が上がる、なんて話もありますが、 難しいことは抜きにして、 ただ、単純に「楽しい」と感じる瞬間が、人を一番強くしてくれます。

 

今までで、痛感したこと。 

 

それは、真面目なご家族ほど、息抜きがヘタだということです。

 

 (そこの責任感が強いあなた!ドキッとしませんか?)

 

 

介護は、真面目な顔をしてやる「苦行」じゃありません。

 

 大切なご家族との「時間」を、どう過ごすか、という「暮らし」です。

 

深刻な話は、私たち専門職に任せてください。 

 

ご家族にしかできないこと。

 

 それは、昔話で笑ったり、くだらないテレビで一緒にツッコんだり、 そんな「何でもない日常」の空気を、作ること。

 

「笑うなんて、不謹粋かも…。」

 

 そんな罪悪感は、今すぐポイッと捨ててください。

 

 あなたの笑顔が、ご本人にとって、何よりの「薬」になるんですから。

 

 

今日の問いかけチューリップオレンジ

あなたが「あぁ、もうダメだ!」と思った時、あなたをフッと笑顔にしてくれる「特効薬」は、何ですか? (私は、飼っている柴犬の寝顔です😊)