本日、東京よりヘッドライトのクリーニングの施工で、お越しくださいました。
本当に美しいSLで、実はヘッドライトも新品に交換したばかり。
ですが良く見ると、目に見えてホコリやライトON時に曇りが確認出来ます。
残念ながら、クレーム交換対象にならないらしく、分解クリーニングと言う訳です。
さて、これからバンパーを外し、ヘッドライトを取り出します。
丁寧に、かつ慎重にバンパーを外し、ヘッドライトを取り外します。
そう、バンパーを外さないと、ライトは取れません。
構造を理解し、適した工具があれば苦労なく取れますが、
ここで一番必要なのは、集中力でしょうか。
バンパーを取り外す際や、ライトを外す際、ボディーに傷が入ったり、
ヘッドライトの表面に当たったり・・・ そういう傷が入ったライトの修理も受けるほどです。
あらゆる部分に注意しながら、正確に進める事が重要です。
ボディーの白い部分。
この角にヘッドライト表面が当たらない様、注意です。
または、バンパーを外す際は、ここに傷を付けない角度で・・・などなど。
あらかじめフォグランプなど、裏の配線は抜いておき、バンパーを外します。
この部分を充分注意しながら、慎重にゆっくりと、外します。
当然の事ですが、万一に備え、保護などは基本。
言いだせばキリがないほど、プロは様々な事に注意を払っています。
よく、自分で外して送りたいので、外し方を教えて? と質問を受けますが、
専門の用語や工具、取り外す際のチカラの掛け方、角度、順番などなど・・・
その全てを、電話やメールでお答えするのは難しいです。
おそらく、一部始終を見ても、肝心な部分は解らないと思います。
見えない所を手探りで外したり、コツのいる部分があったり・・・
冷たいようですが、こればかりは経験です。
さて、ここからが本番!
分解作業に掛かります。
ライト表面のクリアカバーを外し、内部を直接点検。
ちなみにこのライトは、新品から、取り付けて2週間の物です。
このように強い光が当たると、モヤモヤとしたシミのような物が見えます。
夜間、ライトを点灯させるとかなり白く浮き上がるタイプの物です。
曇りが気になって新品に交換されたのに、これは気分のいいものではありません。
残念ながら、交換対象にならなかったらしく、クリーニングとなりました。
ハイビーム側にもシミが。
目立つホコリは、外してから付いた物が多いのですが、
なぜか分解前から内部のホコリが多々あり、目立つ物もありました。
それを取ろうとして、お客様自らが付けてしまった傷も。
背面から綿棒の様な物を突っ込み、ゴミを取ろうとしたようです。
この傷や曇りの件は、ご来店前から聞いていましたので、
交換前に付けていた古い方のライトも、一応お持ち頂くようにしていました。
そのライトを分解し、クリーニングして内部の問題の部品を交換しました。
新品の方が綺麗になれば・・ということでしたが、
付いているシミや傷の状態から、納得のいく仕上がりにはならないと判断しました。
ダメ元でギリギリまでクリーニングしてみました。
大きく目立つ汚れは取れましたが、細く入っていた線傷は太くなり・・・
強い光を当ててみると、うっすらと剥げています。
眼鏡拭きよりも細かく柔らかい繊維で拭いても、少し力を入れるとこの通りです。
新品だから、内部も強いだろうと考えるのは間違いだと解ります。
古い方のライトを分解し、問題の部品をクリーニング。
左右見比べて、差の無い事を確認し、全てをクリーニング後、組み付けます。
拭く事で出る静電気。
それで付く極小のホコリを強い光を当てて確認し、エアで吹きながら迅速に組み立てます。
床も水モップを掛け、ホコリが舞うのを最小限にとどめ、全ての窓は閉め、無風状態です。
そこまでしないと、いくら柔らかい繊維で拭こうと傷が付いたり、ホコリの混入があるのです。
カメラのレンズなどをOHできる人なら、もっと完璧に仕上げるでしょうね。
この辺の事を深く理解しているからです。
ライト点灯でホコリが気になったプロジェクター部。
新品から交換して2週間の物ですから、致命的な曇りはありませんが・・・
分解し、レンズに光を当てて確認するとうっすらと曇りがあります。
クリーニング後です。
以前に、新品のほうが曇って見えるとお褒めを頂いた事がありますが、
やはり拭きたての物とは差が出ますね。
横から見ると、こういった形状をしています。
分解し、単体で洗浄しなければ、ここまでクリアにはなりません。
レンズ効果で隅に残った汚れが、全体をうっすらと曇らせるからです。
たとえば、
プロジェクターのフォグランプなどで、これが黄色になっているクルマがあります。
S13のシルビア、140系クラウンマジェスタなどです。
昔の話になりますが、ライトのオールクリア化って、流行りましたよね。
前述のクルマはヘッドライトを分解し、この部分を取り外すことで、それをしていた人はいましたが、
私の場合は、このレンズその物をクリアにし、取り付けていました。
取り外して見ると、どこから見ても黄色いガラスにしか見えないのですが、
じつは、裏面の平坦な部分にだけ、黄色いクリアが掛かっている、透明なガラスです。
それがレンズの屈折効果で、クリアな物だと解らないようになっています。
裏面の黄色を削ぎ落しクリア塗装をすると、このように完全な透明になります。
取ってしまうと、眩しくて前のクルマからパッシングの嵐ですが、
こうして取り付けることで美しく、完璧というわけです。
話が脱線しましたが、隅々まで汚れを取る事は、とても大事です。
ライトカバーです。
さすがに透明感は高いですが、かる~く曇りはあります。
拡大です。
クリーニング後は、よりシャープになりました。
このように、リフレクターや分解した全ての部品を、
本来の曇りのない状態にリセットしていきます。
同時に、取り外していたライト本体の通気口にフィルターを取り付けます。
上の段が、取り付けた後の状態です。
これにより、同じ時間が経過しても、同じレベルにまで曇らなくなります。
完全に塞いでしまうのも熱がこもって曇りの原因になりますので、
水蒸気やホコリをキャッチするよう考えています。
ライト内部の空気は、暖まると膨張して外に空気を出し、冷えると吸う・・ これの繰り返しです。
エンジンから出る熱やホコリ、水蒸気など、タイミングが悪いと沢山吸い込む訳です。
もう一つ、ライトが曇る原因は、エンジンルームを油分で仕上げる場合です。
ゴムやプラスチックが黒く引き締まって、綺麗に見えますが、効果としては逆です。
熱で油分の蒸気が発生し、ライトの内部に入ってきます。
特にV8エンジンなど、大きなエンジンは熱も高いので、曇るスピードは速いです。
更に言えば、油分はプラスチックやゴムの劣化を速め、白く変色させますので注意です。
ハーネスなど、被覆の劣化も早めますので、くれぐれもスプレーで沢山かけるなどは良くありません。
エンジンルームが、これらでベトベトになっているクルマの場合、
ヘッドライト内部は、うっすらと油分で覆われています。
この場合はまた、クリーニングの方法も変わってきます。
近年のクルマのヘッドライトは透明感が高く、ホコリや曇りなどが特に目立ちます。
組みつけたらあとは表面のカバーをセットし、圧入して密着させますが、
その直前には強い光を当てて点検し、最終のエアブローを軽くかけます。
その他、組み付けて完成です。
もともと美しい物でしたが、出来上がってしまうと、やはり別格に透明感があります。
新品よりも美しい状態です。
クルマに取り付け、点灯確認。
正しい角度でライトを照らしているか光軸調整を行い完成です。
暗い中、ライトを付けても、ロスなくシャープな印象。
オーナー様が気にしていた内部の状態も一掃し、至近距離からの確認にもご納得頂けました。
東京から来た甲斐があった!
僕にとって最高のお褒めの言葉・・・ 緊張から解放される瞬間です。
お力になれて良かったです。
PS
ヘッドライトを美しく保つために
ヘッドライトにワックスなど、油分を付けて手入れをしない。(表面が黄ばみます)
エンジンルームに油分をかけない。(オイル漏れ、滲みなどは拭き取る or パッキン交換など)
エンジンが高温時、なるべく洗車をしない。(高圧洗浄を前から噴射は最小限に)
あと出来れば、洗車後はボンネットを開け、乾燥させると良いです。
特に雨の走行のあと、屋根や屋内保管の場合であれば、ボンネットを数分でも開けておくと良いです。
これらをマメにすると、長い目で見て格段の違いが出ると思います。
ぜひ、参考にしてみてください^^