4歳の息子は自閉症・中度知的障害・ADHDと診断されています。療育園の年中クラスに在籍しており、走り回ることと飛び跳ねることが大好きです。


 彼が起こすちょっとした事件の数々をポジティブに捉えるため、ブログを書くことにしました。



 息子はこれまでに4回、歯を折っている。もしギネスに申請したら「年間で最も多くの歯が折れた男」として、世界記録に認定されるかもしれない。
 
 息子の歯が最初に傷を負ったのは、彼が1歳を過ぎた頃だった。家の近所の河川敷を散歩をしていた時、息子は私の手を振りほどいて走り出し、顔から地面に突っ込んだ。わんわんと泣く息子を慰めながら口の中をチェックすると、前歯が欠けていた。私は憂鬱な気分になった。なぜならば、息子を病院に連れて行くというのは、物理学の講義を聞きながらライオンの世話をするようなものだからだ。

ど田舎

 2度目はそれから数ヶ月後のことだ。近所のマツモトキヨシの店先で息子は再び転んだ。息子を抱き上げる夫の頭をやんわりと押し退けて、私は息子の口の中をチェックした。案の定、前歯が欠けていた。背景のイエローがやけに眩しかった。

 3度目は2歳の時だ。通っていた療育教室でトンネルくぐりをしながら、息子は転んだ。この時は歯が亜脱臼していた。

 4度目も2歳の時だ。児童館の駐車場で、息子は転んだ。私はもう何も感じない。人間は環境に順応することができる。

 息子のかかりつけの歯科医院は、家から車で20分のところにある障害児歯科だ。卓越したスルースキルを持つ受付のお姉さん、たぶん趣味がサーフィンの歯科衛生士長、温水洋一似の院長というメンバーで構成されている。

 障害児の歯科治療は時間がかかる。まず、子どもは治療用の椅子に座るのを嫌がる。機械の音が怖ければ泣いて暴れる。少しでも痛みを感じたら逃げ出す。そして二度と戻らない。
 
 温水洋一似の院長が息を切らして走り回る姿を眺めながら「矯正歯科でもやれば儲かっただろうに」と考える。治療用の椅子の合皮はボロボロと剥げ落ちて、歴戦を物語っている。「いやあ、待たせたねえ」と言いながら、院長がやってくる。そして懸命に息子の歯を治療してくれる。すべてを終えると、院長はボロボロの椅子の横でとても満足そうにニカッと笑う。

 その笑顔を見るたびに、魂の輝きが、別の輝きを凌駕していると感じる。

 このような人たちに出会えたことは、息子が生まれてきてくれて良かったと思うことの1つだ。