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今敏監督作品、「千年女優」。


ツタヤに行くたび、常に貸し出し中だったものをようやく借りることができました!


この「千年女優」も「パプリカ」同様、世界観が作りこまれていて、見終わった後もしばらく戻って来れずにぼんやりしてしまったほど。


まず映像が美しくて、アニメが持つ可能性というものをひしひしと感じました。浮世絵風になるところなんかは、特に鮮やかで、一時停止してコマ送りで眺めたい気持ちになります。


それからストーリーをよく練っているなぁと感心させられっぱなしでした。


タイトルにある通り、「千年」女優。


現実世界と、役柄を通したもう一つの世界と、千年一人の人を追いかけてゆく。


もはやそれが愛なのか、狂気なのか、そもそもあの人は本当に存在していたのか、等考えだすときりが無いけれど、それが愛でも狂気でも、いっそ幻想であってさえ、一人の女性の思いのすべてであった、ということが彼女の生き様を美しく見せている。


現実ともう一つの世界の境目がだんだんわからなくなっていく感覚は、この作品の世界を抽象的に捉えるなら、輪廻というものを思わせるもので、輪廻というものが実際にあるかどうかはさておき、もしあると仮定するなら、


そして今現在の自分の人生も、長い長い営みの中の一つの輪であるのだとするなら、今こうして自分がここにいることや、沢山沢山の人がいる中で出会うことができた人たちとの縁の不思議に、畏怖を帯びたロマンチックな気持ちを感じずにはいられません。


輪廻、というものから離れてみても、実際に今ここに自分がいること、誰かがいるということは、自分の親がいて、親にも親がいて、さらにその親にも親がいて・・・と、繰り返してきた営みがあるからなんだものなぁ。


気が遠くなるような、ロマンチック事実です。


こんな作品を作り上げてしまう、今敏監督は今年の八月に惜しまれながら、本当に惜しまれながら亡くなられました。本当に稀有な才能を持った方でした。


もっともっと監督の作品を観てみたかった・・。心よりご冥福をお祈りいたします。


それでも、残された作品たちに、しっかりと監督の思いは息づいていて、こうして今も私の心に届いてきたこと、これもまた奇跡みたいな、不思議で素敵な縁です。