PRISMIC


*ネタバレ含みます。





「秒速5センチメートル」、久しぶりに胸がぎゅうっとなるような切なさを覚えた作品。


なんて素敵なタイトル。


桜の花びらが落ちる速さ・秒速5センチメートル、ロケットが進む速さ・秒速5キロメートル、いずれも劇中で登場人物たちの台詞にある言葉ですが、


監督インタビューを聞いていると、この作品は「速さ」がテーマになっているそうで、手紙が届くまでの速さ、東京から栃木までの距離など、様々な物理的速さ・距離はもちろん、


自分の気持ちが相手に届くまでの速さなどいろいろな速さを描いているそうで、


そのインタビューを見たおかげで、より世界観が深まった気分。


そして主題歌である山崎まさよしさんの「One more time , One more chance 」、私も元々好きな曲なのですが、この曲の世界と、この物語の世界が見事にシンクロしていて、互いの世界を高めあっている印象。


第三部の、この曲がかかって、春の街の風景とタイトルが浮かび上がる場面は切なさのピークでした。


タイトルの秒速5センチメートル、ですが、明里も高樹も、お互いにとても近いものを持っていながら、それでも物理的距離ができ、心にも距離ができ、


あんなに近いはずだったのに、気付いたらいつのまにかとても遠いところにいた、という結果的にできていた・また多分この結末以降もそれぞれが違うベクトルを以って進む人生のスピードがまさに秒速5センチメートルなのではないかと。


それはたぶん、現実世界においても同じなんじゃないだろうか。


私たちの人生はとてもゆっくり進んでいるようでいて、気付くととても遠いところに立っている、私自身はそんな経験があります。


また、劇中に出てくる、種子島から打ち上げられるロケット、そのロケットに対して登場人物が言う台詞が、少し前にニュースにもなったはやぶさの長くて孤独な、そしてロマンチックな旅を思い起こさせました。


桜、電車、雪、海、街並み、空・・などなどどれもがとても美しくて繊細な映像でした。


セカイ系 というカテゴリーが存在するようで、この作品もそうカテゴライズされてしまうのかな?


でも私たちの世界の基本は”君と僕”、それがすべてでそれ以上でもそれ以下でもないじゃないと思う私。


どこに位置づけられようと、この作品がとても美しくて儚い世界を描き出していることには間違いありません。


今さらですが、まだ観たことのない人はこの夏にぜひ。