思い出は美化されてゆくというのは本当だろうか?


現実の時間はどんどん流れてゆくけれど、私の心はまだパリに残っている。


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日本は相変わらず日本のままで、当たり前なんだけどなんかそれが嫌だと思ったり。


いろんな「やるべきこと」とされていることに踊らされそうになったり、人と比べて焦りそうになったりするのがたまらなく嫌。


たった一ヶ月だったけれど、フランスには私のみる限り日本みたいな沈鬱とした空気というか、先行き不安みたいな空気、誰かと比較することで成立する幸せみたいなものが見えなくて、そういう意味でほんとに生きやすい国だと思ったし、向こうで知り合ったある日本人女性曰く、フランスの人は本当に「自分の人生を楽しんでいる」なあと思った。


受験も就活も、人生のほんの通過点でしかない。


偉そうな肩書きも、一歩足を踏み出せばゼロになる。


ほんとうの幸せは何か。


私にとってのそれは人から決められるものでも、人と比べるものでもない。


それなのに、世間体や見てくれに翻弄されがちだ。誰も私の人生を代わりになど生きてはくれないのに。


傷つくのがこわいだけなのかもしれないけれど、いろんなものに急かされそうになると、自分の幸せはなんだ、と言い聞かせないと不安でたまらなくなる。


惑わされるな、と自分に言い聞かせる。


思っていたよりタフだったり、でも脆くて移ろいやすいこの心をしっかりと固定して、自分の足で歩いてゆきたい。


まわりが駆け足でも、つられることのないように・・・


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野兎 / アポリネール


君は野兎の牡のように 恋する男のように


好色であったり 臆病であったりしては駄目だ


だが君の脳味噌は


胎んでいてもまた胎む


野兎の牝であれ