90代半ば過ぎの血管性認知症の母が、

在宅医療(居宅療養管理指導)を受け始めてから、

早いもので1ヵ月が経とうとしている。

 

庭が見えるお気に入りの椅子から、

冷蔵庫まで日に何往復もして、

カットフルーツを食べることが稀になった。

元々、水分をあまり摂ろうとしないので、

その代わりがパイナップルやバナナなど、

ちょくちょくつまみ食いしていた。

 

食事もほんのちょっとの量となったことで、

在宅医療との契約に踏み切ったわけだが、

必要な栄養を補うためのエンシュアHすら、

少し口にしただけで「もういい」という。

 

そのせいか椅子に座る時間よりも、

ソファで横になることや、

目を閉じて座っている時間が増えた。

梅雨どきのヤマネのように、

「省エネモード」に入ったのかもしれない。

 

もし食べ物を受けつけなくなった場合

胃瘻や鼻からのチューブ挿管、

点滴の判断をしなければならないのだろうか。

 

当事者である母、そして父は、

ターミナルケアの登録をしているので、

そうなったときにはおそらく、

必要最小限のことしかしないだろう。

 

 

だが、当事者である認知症の本人が、

最終シチュエーションとなったとき、

もし本人への確認が難しい場合には、

一般的には家族に「意思決定支援」

求められることになることだろう。

命の残りを決定するかなり重たい判断となる。

 

2022 (令和4)年の日本人の主な死因を見ると、

老衰は第3位(11.4%)の17万9529人で、

老衰死は年々増えてきている。

⇩  ⇩  ⇩

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf

 

だが終末期においては、

約70%の当事者が意思決定不可能となる。

そこで今後の治療・療養について、

本人・家族と医療関係者が、

予め話し合うプロセスが必要となる。

これをアドバンス・ケア・プランニングという。

⇩  ⇩  ⇩

 

さらに認知症の人の意思決定については、

「認知症の人の日常生活・社会生活における

意思決定支援ガイドライン」が、

厚労省により設けられている。

 

あくまでも本人の意思を尊重し、

そのプロセスの確認が重要となってくる。

 

本人が“意思を形成”することの支援、

“意思を表明”することの支援、

“意思を実現”するための支援が3要素となる。

詳しくは下記を参照いただきたい。

⇩  ⇩  ⇩

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

 

延命治療の意思確認や、

葬儀の希望など老衰死に備え、

本人の希望を聞く準備をしておくことは、

とても重要なことなので、

上記URLを一読しておいた方がいいだろう。

 

ところで食事量が減る前から、

老衰の場合には消化機能が低下し、

栄養が吸収しにくくなるため、

食事を摂っていても体重は減ってくる

 

そのあとに食欲が低下し、

食事量が減ってくるが、

老衰では改善しないまま、

食事を摂るのが難しくなってくる。

さらに慢性的な炎症により、

各臓器の機能が低下してゆくため、

死が近づくにつれ不快感は減っていくという。

 

まだ元気な時期に飲み込む力だけが、

一時的に衰えた場合とは異なり、

終末期に嚥下力が著しく低下したときには、

胃瘻や経鼻管栄養といった経管栄養では、

生存期間が延びることはないという。

 

また栄養状態の改善や肺炎の予防は、

現実的には難しいという。

何故ならば炎症により、

腸管から栄養を吸収する力

既に弱っているからである。

 

いつもよりかなり長くなってしまったが、

エンシュアHすら、

飲み切らないことがある母とは、

共にいられるコミュニケーションの時間が、

何よりも大切なのかもしれない……。

 

▲1階に寝室を移しベッドも介護施設や病院で見か

けるような角度が調整できるものになりました