2020年2月に94歳で亡くなられた

自然食・自然療法研究家の東城百合子さんの

『お天道さま、ありがとう。』(サンマーク出版)

 

と命日の月に出逢った。

 

 

気づきの多い1冊だったが、

令和を生きる人にとっては古風で、

理解が難しいかもしれない。

 

手づくりや心の大切さを

訴えてきた東城さんにとって、

家庭の中での台所は特別な場所だった。

 

『台所とは家族全員の健康を保つための薬局

つまり、お母さんが手づくりで心を伝える大

切な役割がある場所だから、「女性にまかせ

なさい」ということだと私は思います。いの

ちを宿し育んできたお母さんだからこそ、

「食」を通して家族のいのちを支えることが

できるのです。』(東城百合子著『お天道さ

ま、ありがとう。』より引用)

 

東城さんはこの本の中で、

「手抜き」は心が抜けているので、

宇宙につながるエネルギーが、

入っていないと述べている。

 

『もし、その大切な場所である「台所」から

お母さんが解放されたら、誰が家族のいのち

を育てる「食」を担っていくのでしょうか。

手づくりの心が抜けてしまった機械がつくる

インスタント食品や化学調味料、または電子

レンジで調理された食べ物に、いのちを養う

力が溢れるはずがありません。

しかし日本のお母さんたちは、それらの「便

利・快適」な生活を受け入れてしまいました。

そして家よりも、子育てよりも、もっと自分

にできることがあるのではないかと、家の外

に出るようなってしまったのです。』(東城

百合子著『お天道さま、ありがとう。』より

引用)

 

下線は読みやすくするために引いたが、

引用部分に書かれていることには、

賛否両論あるだろう。それどころか、

タイムパフォーマンス重視の昨今では、

奇異にさえ思えるかもしれない。

 

 

しかし世の中には、

貨幣システムに組み込まれ、

タイパに振り回されるようになっては、

いけないものがあると思っている。

その中のひとつが「介護」である。

 

タイパを重視しすぎると、

効率ばかりに気を取られ、

心が置き去りにされてしまうからだ。

 

在宅介護で手を抜くと、

認知症の人に拒否されることだってあり得る。

東城さんの本を読んで、

タイパからの脱却こそが、

豊かな心や社会をつくると気づかされた……。

 

 

のち白ワインワイン!

 

1979 Vouvray Demi Sec 

[Caves Duhard]

(フランス/ロワール)

 

7~8年、冷蔵庫でずっと寝かせていた1本をワイン仲間と開けた。45年前のワインだが、甘口のワインなので長期保存が効く。こんな酔狂にお付き合いいただけるのはワイン好きだけだろう。白ワインの場合、年数が経つと、色合いが濃くなってくる。45年を経たワインの色は、アンバーだった。日本語だと琥珀色と表現できる。やや甘口だったワインは甘さが削がれ、紹興酒のような香りがした。酸がしっかり残っているため、まるでシェリー酒のような味わいだった。

 

 

電子レンジや加工食品は、いまや欠かせないものとなってしまった一方で、“丁寧な暮らし”への憧れを抱く人も多い。根にある食への向き合い方の問題なのだが、食べる人のことを想像しながら料理することは大切なことである。

経済発展の名のもとに、家庭は貨幣システムの只中に引き出された。その結果、核家族化は進み、持ち家購入の流れがつくり出された。ローン返済のため、生活に追われるようになる中で、社会のストレスは増大した。デベロッパーは、延々と開発を続けていかなければ成り立たなくなり、小売業は店舗拡大を目指した。金融機関やIT系もまた然りである。

その結果、家庭は経済に振り回され、タイパを求める世の中になってしまった。だが、こういったシステム自体が変わっていく予感がしている。時代は、静かに“資本主義の次”へと向かいはじめているのかもしれない。