今日はアルツハイマーが進行する過程での
妻に起きた出来事から、
その理由を探っていこうと思います……。
アルツハイマー型若年性認知症と診断され、
1年7~8ヵ月経ったころ、
妻にある異変が起きはじめた。
名前を含む漢字が、
ときどき書けなくなったのだ。
不安を覚えた妻と僕は、
名前や目についた漢字の練習を
日々行うことにした。
だが10日足らずで挫折してしまった。
漢字を丸ごと思い出せないことは、
認知症の人でなくでも、
起こりがちなことで、
出版社で校正経験がある僕にもあること。
だが妻が書けなくなる文字には、
ちょっと奇妙な法則があった。
何が奇妙かといえば、
これから説明するケースの場合、
漢字の偏がどこかに消えてしまうのだ。
どんなケースかといえば、
土地、木材、車輪、言語、日時などを
書こうとすると2文字目の偏が消え、
土也、木寸、車侖、言吾、日寺と
なってしまうのだ。
とち、もくざい……の書き取りはできても、
見本となる漢字がある場合、
その横や下に同じ文字を書くだけなのに、
そういうやり方のほうが何故か書けなかった。
認知症が進行すると、
文字を書くことや読むことができなくなるが、
中核症状のうちの「失語」だといわれている。
だが妻のこのケースでは、
見本の熟語の偏と同じ漢字のみ認識し、
形が同じ偏を見失ってしまっているので、
「見当識障害」や「失認」に当たるだろう。
本人は見本通り書いたつもりだが、
偏を見失い書けていない謎は、
この中核症状により引き起こされた。
のちワイン!
2022 Terre di Chieti I.G.T. Rosato
[Sangro Cantina]
(イタリア/アブルッツォ州)
今年初めてのロゼワインは、イタリアで2番目に生産量が多い黒ブドウ・モンテプルチアーノでつくられた1本。バランスが良く、飲みやすい1,034円で買えるワイン。しっかりとした酸が口の中で広がり、黄桃のようなニュアンスを感じた。料理にも合わせやすい。
妻が名前や漢字が書けなくなることが増えてきたのは、2020年の秋のことだった。新型コロナ禍下の窮屈さが影響したのだろうか? その年末には「漢字が読めないことがあるの」と言われたことがあった。
それでも翌年5月、県の若年性認知症の行事に参加したときには、出席欄にすんなり名前を書くことができた。一緒だった若年性認知症コーディネーターさんから聞き、ちょっとびっくりしたが、その日の夜には、さらに驚くことがあった。
その時期には、料理の手順が途中でわからなくなり、ご飯づくりは僕の担当になっていた。だが、その晩に限り「カレーをつくる」と妻は言い出し、ひとりで見事にやってのけた。以前と変わらぬ手際よさと味わいだった。それが妻の最後の手料理となったのだが……。