2022年の土用の丑の日は、
7/23(土)と8/4(木)の2回だった。
スーパー、惣菜チェーン、
外食チェーン、もちろん鰻屋でも、
盛んに土用をアピールし、
メディアでも2回と煽っていた。
土用の丑の日は過ぎても、
スーパーで売られているウナギは、
相変わらずいいお値段である。
二ホンウナギは2014年6月、
アメリカウナギと並び、
国際自然保護連合(IUCN)により、
絶滅危惧種ⅠB類(EN)として、
レッドリストに掲載された。
またヨーロッパウナギは、
それよりも絶滅の危険性が高い種として、
絶滅危惧種ⅠA類(CR)に指定され、
2007年からワシントン条約の
付属書にも掲載されている種である。
わが国では、
シラスウナギの記録的不良により、
2018年の土用の丑の日を前にして、
日本の伝統食を巡る騒動となり、
蒲焼き鰻の代用食まで議論された。
だがウナギに限らず、
半年も経つと日本人は何でも忘れてしまう。
あの絶滅騒動以来、
妻と鰻屋へ足を運ぶことがなくなった。
近所に先代から続く鰻屋があるのだが、
7月の僕の誕生祝いには、
ふたりでうな重を食べたものである。
鰻の蒲焼きは、
東西で調理の仕方が異なる。
関東は背開き&蒸し焼き、
関西は腹開き&直火焼きである。
長野・岡谷市は東西の鰻の境目で、
市内では関東風と関西風の
両方が味わえると、
地元の方から教えていただいた。
九州出身の妻は、
関東風の蒲焼き鰻が好きだった。
赤塚不二夫のウナギイヌも好きだった。
7~8年前のことだったと思う。
その年の7月上旬、
例年の如く近所の鰻屋へと足を運んだ。
町の鰻屋だが、
グルメ雑誌に掲載されるお店で、
全国放送のテレビ番組に近々出ると、
ご主人からそのとき伺った。
「土用は人が殺到しますね」いう話から、
とんとん拍子で、丑の日は妻が、
アルバイトで手伝うことになった。
その年の土用の丑の日、
妻は意気揚々と鰻屋へと向かった。
▲近所の鰻屋さんのうな重
夜、僕が帰宅すると、
妻ははしゃいだ声で、
「全部売り切ったの」
と話しかけてきた。
「ごめんね、というわけで、
夕食は鰻じゃなくなったの……」
妻の呼び込み方が良かったのか、
お駄賃でいただける分の蒲焼きまで、
売り切ってしまったらしい。
「さすがだな」と僕は思った。
というのは妻の父親は集落一の
ウナギ獲りの名人だったからだ。
「お腹の黄色っぽいのが天然ウナギ」と
僕に教えてくれたのも妻だった……。
▲近所の鰻屋さんの煮凝り&う巻き
のちワイン!
2012 Bourgogne Hautes Côtes De Nuits
[Clos St-Louis]
(フランス/ブルゴーニュ)
魚料理には白ワインといわれているが、鰻の蒲焼きには、赤ワインのほうが合うかもしれない。妻が売りさばいた近所の鰻屋さんに行ったのは、2018年7月の土用前が最後となってしまった。鰻不足で高くなったせいもあるが、人気が出て、週末には予約しないと入りづらくなってしまったからだ。翌年には、アルツハイマー型若年性認知症と診断されたので、それも足が遠のいたひとつの理由である。
鰻屋で食べた日の夜、このピノ・ノワールを開栓した。いい意味で複雑な第一印象。カシスやブラックチェリーの香りがする。6年前のヴィンテージながら、ルビー色の落ち着いた色合い。酸味はシャープで、やや強いアタック。タンニンは溶け込んでまろやかな甘みのワイン。いまとなっては相性まではわからないが、蒲焼きに合う1本のはずだ。
※表記について:生き物のウナギはカタカナ、料理の鰻は原則、漢字表記としました。