入院後、2度目の

“オンライン面会”に行った。

オンラインといっても、

イントラネット利用なので、

病院まで行かなければならない。

凄く近い距離にいるのに、

コロナ下、直接会うことができない

 

面会時間がわずか5分なので、

モニター自体を認識できず、

前回は「時の過ぎゆくままに」だった。

 

今回、はじめのうちは、

月餅状の携帯スピーカーを手に取り、

「ごはん?」と尋ね、齧ろうとした。

 

だがきょうだい友人たちの名前に反応し、

それから僕を認識できるようになった。

 

「頑張ってるから……」

 

妻の口から驚きのひと言が飛び出した。

 

「頑張らなくていいよ、でも応援してる」

 

思わず、意味不明な返答をしてしまった。

妻の頑張りすぎる性格を知っているので、

続く言葉を聞くに耐えられなかったのだ。

 

日に当たっていないせいか、

透き通った肌の妻の顔色は、

余計に白っぽく乾いたように見えた。

さらに固形物を食べていないため、

少しばかり痩せて細っていた。

 

もっと気になったのは、

車椅子に座っていたことと、

薬の影響で首が傾いていたことだった。

 

斜頸しているため、

モニターを見ておらず、

電話みたいに音声だけで認識をしていた。

 

 

緊急事態やまん延防止により、

若年性アルツハイマーの人たちも、

オンラインに接する機会が増えた。

便利ではあるが、

温度感・肌感覚を伴わないため、

症状が中等度以上になると、

モニターへの集中力が続かないようだ。

また、視界や視野に入っていても、

脳が認識していないこともある。

 

それに引き換え、声の力は大きい。

温度感が伝わるのだろう。

 

ところが認知症で入院する病院では、

往々にしてガラケーもスマホも、

声が聞ける道具の持ち込みがNGである。

 

公衆電話ならOKという病院もあるが、

妻のように進行してしまうと、

院内の公衆電話までたどり着けない。

電話のかけ方や番号もわからない。

 

「身体拘束」されていれば、

“通信の自由”を剝奪されたも同然だ。

上海のことではない、

日本でもこういう病院は多い……。

 

たった5分間だけど、

何度も名乗り

何度も呼び掛け

何度も「また来る」と僕はいった。

 

髪は、まだ切ってもらえていなかった。

8カ月放置状態であることが悲しい……。