ATG大全集。
大阪のシネヌーヴォにて。



「ヒポクラテスたち」
監督  大森一樹
1980年。

舞台は京都。
大学の医学部生達の物語。
医学生で有るがゆえの苦悩や悩み、疑問、そして希望。そんな日常を淡々とそしてリアルに描かれており、ユーモアさえ感じさせてくれる。作品に背伸びが無いんですね、まあ専門家?お医者さん、に言わせるとリアルさが若干違うようなんだけど、監督も実は医大生だったんで、観てる側にしたら充分リアルなんですよ。

初めて観た時は、

まあ今では医療ドラマが散々テレビでやってるんで、慣れてしまった感、満載なんですが、

なんか、へえーそうなんだって納得してましたからね。

古尾谷雅人演じる主人公、最終学年の今はすっかり飄々と、のほほんと過ごしてるのですが、彼だって、入学したての頃は、世の中や社会と医学の置かれてる現実に、問題提議の運動とか、してたんですよね。学生運動的な。
そういう活動やめちゃったんですが。
多分流される方が楽だからですね。余計な事を考えない、みたいな。
彼が、終始何か心に引っ掛かった状態で生きてる感じがするんですが、それもその一部かも知れませんね。
多分に医大生なんて、まあ出来る奴はいいでしょうけど日夜大変だろうと思いますよ、ちゃんとしてる奴はね。余計な事してられない、みたいな。
出来る奴と適当な奴は関係無いかもでしょうが。


あと、最終学年になり研修で医療機関を廻るのですが、みんな専門を決められない。
外科とか内科とかそう言うのです。
こうなりたいと思い学んできても、いざ現場を見ると、気持ちが揺らぎ続ける感じですね。そんな動きもよく伝わる。なにせ、研修行っても失敗だらけで、なにひとつ自信が持てない日々を送るばかり。
研修医グループに紅一点の女性木村みどり(伊藤蘭さんが演じてます、元キャンデーズ、今水谷豊夫人)の彼女なんて、
何科志望ですか?のアンケートに「医者辞めた!」ってひとり回答。
実はほんとに辞めちゃったんですが。



医者の不養生?
なんだかんだといいながら、主人公、荻野愛作(オギノアイサク)と言います、普段は学生寮に住んでるんですが、ほぼ普段は彼女のアパートに居ます。彼女高校の同級生で、愛作君を追っ掛けて、彼の通う医大で働いてます。図書室のお姉さん。
まあこのタイミングで卒業学年だというのに、そして結婚もしてないのに、妊娠させてしまう。計算しなかったんでしょうね、若いし。生む事も出来ないって、でも知ってる病院にも行けず、如何にもあやふやそうな町の個人病院へ行ったんです、一応はふたりで。
ただその後彼女体調を崩して、救急で入院。更にその後も体調が戻らず家族が迎えに来て、地元の病院へ入院。と言う具合。
彼の中にそれなりに意識や感情は有るんですが、基本愛作君、表に出さないんです、淡々と飄々と過ごしてる。
実はこういうタイプが駄目なんでしょうね、感情をコントロールしてると錯覚してるタイプ。

ある日、朝の新聞に、無資格医者摘発!そんな記事を見つけます。
テレビのワイドショーでも取り上げられてる。
無免許産婦人科。
愛作君、病院を見て愕然。
あの病院だ。
レポーターがテレビで喋ってる。
「無資格でありながら、事もあろうに手術もしていたんですね、何故発覚したかと言うと、ここで処置を受けた患者がその後体調が悪いからと、別の病院に行って診てもらうと、これはちゃんとした医者がやった事なのかと?」
「それで調べたら無免許が発覚したんですね~
「この病院で手術をした患者さんはその後不妊症になったり、、、」
もう、彼の頭には何も入って来ない。真っ黒。

彼はその後、壊れてしまいます。
罪の意識でしょうか、それまでの積み重ねでしょうか、医者と言う存在の重みに気付き、耐えられなくなった?
そう、医者は有る意味、人の命を奪える存在なのです。


彼は精神科の患者として、同級生の担当医のもと、1年を過ごします。
そして更に数ヵ月後、
復学し何とか卒業はしたみたいです。
ただ医者になったとはひとこともこの作品では語られていません。
多分ならなかったのでしょう。

あと、もうひとつ。
グループの紅一点
医者辞めたってアンケートに書いてたみどりちゃん。

卒業の少し前に、
自殺してしまいました。
(ここの部分は今でも疑問で、その結末が必要とは今でも思えない)
仲間の愛作が壊れた事も少なからず影響したのかもですが、
元々、医者イコール自身が上手く頭の中に描けなかったのでしょう。
今も昔もだろうけど、医大に入るイコール医者と言う図式は変わらず、そのプレッシャーもすこぶる強い、なのかも知れないですね。
だって法学部イコール弁護士って事は無いですよね。
芸術系の大学に入ったとしても、芸術家?アーティスト?なれないでしょ。笑。
ちなみに知らなかったけど、大森一樹監督、今、大阪芸術大学映像学科の学科長との事。
親近感(笑)

こういう企画のおかげで、
忘れていたものに久し振りに会えた。懐かしい作品を観るのも、
忙しい日々の中で、日常に追われる日々の中で、
しかし敢えて、
振り返ってみても、
たまには良いかなと。
だって5年10年なんて恐ろしく早いよ。懐かしいふたつの作品を見て、ホント思いました。

まあATG大全集は9月までやってるけどね。
そして懐かしい作品が、
そこには、

まだ、有る。