「なんで中部空港出発にしたんだよ?、関空発ってのも有っただろう」
そう言うと彼女は、
「みんなに見送られるの、嫌いなんよ、それに4年ちょっとだし、直ぐ帰ってくるし」
4年は直ぐじゃないと思うけど、結構な時間だよ。
それより俺が見送るのはいいのかよ?
(苦笑)
「いやいや、車で送らせられる方の身にもなれよ、大阪から名古屋だぜ」
「いいやん、デート出来て(笑)若い子好きでしょ?」
うん、確かに。
いやいや違う違う、そう言うんじゃない。
まあ、長い距離を走った分、話はたくさん出来た。まだ足りない位。
そう、話は尽きない。
ただひとつの事を除いて。
飛行機の出発時刻にはまだまだ十分な時間が有ったので、彼女の希望で少し足を延ばして、海を見に行くことにした。
知多半島の先まで。
もう少しの時間、デートして貰えた訳だ。
しかし、何故か彼女と海へ行った事は無かったな。
そんな事を思い出した。
自分が泳ぐのが下手くそだからだろうな。格好悪いとこ、見せたくなかったんだろう。そこだけはいつも無理してたかも知れない。しなくても良いのにって、思われてるだろうな。何となく気付いてはいるんだ、でもちょっとくらい格好つけさせてくれよ。
高速道路を下り、しばらく走った。
そして、
やがて、
海沿いの道に出た。
目の前に海が。
思わずふたりして「わっ!」って軽く叫んでしまった。
互いの顔を見合わせて、
何故か、笑顔になった。
そう、若干、はしゃいでしまった。
海辺の君を眺めてると、
行くの止めにしないか?つい、言ってしまいそうになった。
でも、言葉にはしなかった。
彼女は、
彼女の未来は、誰のものでも無く、
彼女自身のものだからね。
そんな事に改めて気付かされた。
時間って、過ぎるのが早い。早すぎる。
「そろそろ空港へ向かうか」
俺も前に進まないとね。
切り替えていかないと、置いてきぼりにされてしまう。
そんな訳にはいかない。
空港が近付くにつれて、
出発時刻が近付くにつれて、
無口になってしまう自分がいた。
こっちの勝手で、
幼い時から離れて暮らしてきたのに、
さすがに、
でも今さら
改めて寂しさが込み上げてきてしまった。
会えない訳では無いのだけど、
もう会えない気しかしないんだ、何故か。
大丈夫だろうけれど。
うん、大丈夫だ。
自分に言い聞かせる。
そして彼女にも。
「戻って来たら、またデートしてくれよな」
「良いよ、てか遊びに来たらいいやん」
「無理言うなよ、結構遠い」
「案外近いよ、東京大阪、車で往復するくらいかも」
この期に及んで、いじられてしまった。いつもの自分がやってる事。
「あっ、そろそろ行くね」
「おお、気を付けて行くんだぞ」
「はい」
笑顔のまま、くるりと振り向き、あっという間に、あいつは歩き出しやがった(苦笑)後ろ向きで、軽く手を振りながら。
ん?なんだ?格好つけてないか、あいつ
しかし、最後まで、俺もたいした事言えないなぁ(苦笑)
そんな訳で、
娘が、旅立った。
ちょっとばかり、遠い異国に。


