「フェリー二に恋して」
監督 タロン・レクストン
主演 クセニア・ソロ
見終わってなんかサワサワする感情を味わう、こういうのも久々かも知れない。観てる最中、実は結構批判的な感情も僕の頭のなかでは走り回ってて、
女ってなんでこんなに感情だけで行動しちゃうんだ?なんで後先考えないんだ?とか思ってたんですよね。ホント女性の行動は読めない。
などと。
席をたって、映画館を出る。まだ気持ちがおかしい。落ち着かないんだ。
エレベーターを待ってると、僕の横に女性が並んだ。映画が始まる前に少し会話をした彼女だと気付く。
映画の開演時間待ちの時にロビーで座って待ってた時の事。
隣の女性。
「あの、すいません教えて頂けますか」
「はい」
「わたしちゃんと聞いてなくて、
この整理券って何ですか?」
「ああ、初めてですか、ここ」
「はい」
「開演10分前になると中に入れるんですが、入場がその整理券の番号順なんです」
「ああ、やっぱり、そうかな?とは」
「はい、正解です(笑)」
「ありがとうございます(笑)」
「いえ、なんでも聞いて下さい、知ってる事ならお答えします(笑)」
などと。
もう少しだけ会話して、時間になったんで、そこでおしまい。
で、そう、その女性だ。
年齢は20代後半から30前半くらい、服装もシンプルだけどフワッとした感じで物腰も上品な感じで、全体の感じもフワッとしてる、髪型も。
語彙が無いなぁ、でもそんな感じで、いややっぱり語彙が無いなぁ。
でも平日のお昼2時前、OLさんとかじゃないだろうしな。もう少し若いのかな?まあ、僕も振替の休みだし、今日が休みかも知れないし。
う~ん誰に似てるんだろう?思い付かない、ただ癒し系には間違いない。
いや、そういうんじゃなくて、今の感情の話だ。
この映画見終わった瞬間から、なんか人と話したくなったんですよ、感想と言うか、思った事?
いえ、これハッピーエンドなのか違うのか、そもそもこの親子は何?
いえ、説明はされてるけど、で、理解はしますけど、でも、そもそも設定に無理は無いか?なんて思ったり、いや、母が思うより娘は世間分かってるようだし、でもやはり世間ズレ半端無い、だからこんな行動に出てしまう?いや、映画かな~的な展開、フェリーニのオマージュ?、映画が古すぎて分かんないけど、オマージュのシーンだな!は分かる、何故かそこ前後と比較して浮いてる感もあるので、で、どこまでがリアルなストーリーで、何処が「虚」の部分?等々。
外に出て、
辞めておけと言う頭の声に逆らうように、
「あの~」
つい声を掛けてしまった。
はいと言いながら振り向く彼女。
「今、僕も映画見てきたんです」
「はい知ってます(笑)」
「で、無性に同じ映画を観た人とお話がしたい自分がいるんですよ」
「はい」
「僕が感じた事が正解か違うのか、誰かに判定してもらいたいんです、こればっかりは自分では分からないんで」
「・・・」
「もし宜しければ、喋りませんか、勿論貴女のお話も聞きますし」
実は既に彼女ずっ~と笑ってた。
間違いなく変なナンパなんだけど。
一応僕を上から下まで一通り見て、良いですよって頷いてくれた。
「私も、誰かと話したくなってました、そういう映画でした」
との事らしい。良かった。
あと、変な人とは思われてなかったようだ。
「女性として、ルーシー(主人公)の行動って支持できます?」僕。
「わたしは無理ですけど、理解は出来ます、と言うかほんとは、
してみたい」
「旅に出る?」
「ホントは」
「凄いあやふやな不確かな、そんなもの、ですよ?」
「そういうものの方が惹かれると思います、でもちゃんと確信みたいなものも持ってるんですよ、自分では」
「彼女20歳で、凄い世間知らずで、なんだろう?戦闘力も殆ど無いような子ですよ」
「弱いけど、芯は強いのが女です」
「旅に出るのは良いけど、いろいろと酷くないですか、無計画極まりない、まあ映画だけどね」僕。
「そうですね、ファンタジーですね(笑)」あっさり。
「憧れは有りますよ、無鉄砲に海外に、飛んでいってしまうの、会える訳無いのにね、でもそれでいいんでしょうね多分」
「ええ、彼女も本当に会えると思ってたかは、疑問です。単なる切っ掛けを求めてただけ、かも知れませんね、変わらないといけない!そういう気持ちが強かった、
女の子は時には自分で自分を追い込むんです」
「キュートでした、可愛いかった」彼女を思い出すように。
「ああ、彼女ですか。確かに。20歳の設定だけどそれ以上に幼く見える時が時折見られましたね」
「ほんとの年齢ご存知ですか?」
「ええ。だから女優は怖いんだ、それはいつも思ってます(笑)」
「そうなんですか」
「まあ、基本、女が怖いですけど」
「怖い目に合ったんですか?」
「いえ、怒らせると怖い、という意味です」
「男の人だって怖いでしょ」
「いえ、男は話せば分かって貰えるけど、女は感性の生きものでしょ、理屈じゃない時の方が多い」
「・・・」
「ああ、ルーシー(映画の主人公の彼女の名前、映画の話しをしてるのは忘れてないです)
彼女も感性で行動にしちゃうでしょ」
「意外と計算してますよ、私たち女子は」
「うわっー」
「男の人も大変ですね、ちゃんと見破らないと」
「ああ、それこの前20歳の子に言われましたよ、
転がされてますね~って、チョロイですね~って」
「20歳の子に言われてるようじゃ、ベテラン相手だと、お話にならないかも」
「ええ、ずっと多分、
ずっ~とお話にならないままに生きてきました」
ちょっと、こっちを睨むように見て「・・今のは、間違いなく、嘘ですね」
彼女はそう言って笑った。
そんなこんなでそのあとも話は続いた。最後はもう映画の話では無くなってたけれど(笑)
結構長い時間喋ってたのかも、
明るかった外の景色が赤く染まってきていた。
帰らないといけない、と言う彼女の言葉で僕たちは店を出た。
駅へ向かう彼女を少しだけ送って、
僕は駐車場へと向きを変えた。
車で送るような真似はさすがにしない。と言うか結局名前も連絡先も聞いてはいない。
それは、ホント苦手なんだ(笑)
1歩先に踏み出すという事。
劇中、ルーシーはひとりの男性と出会う。絵を描かせてほしいと言われ、ほんの少しの時間モデルになる。「ありがとう。じゃあ」と握手して帰ろうとする彼にルーシーの方が声を掛けるんだ。
「おなか、すかない?」
ご飯を食べて、モデナ(だっけ?)の街を多分、一晩中案内してもらって、
じゃもうそろそろって時になって、今度は彼が声を掛けるんだ。
「君に見せたいものが有るんだ、行こう!」って。闘牛場みたいなところだったけどね。それから又色々とふたりで話しをしたりして、一緒の時間を過ごすんだ。で、それ切っ掛けでふたりは離れられなくなってしまう。そう恋に落ちた。
ローマに行ってフェリーニに会う事がこの旅のルーシーの目的なんだけどね。
恋したのはフェリーニのはずだし。
ん?ああ、そうか。
僕も声は掛けたんだ。
日曜日、
午前中は仕事だったんだけど、
午後から暇になったんで、
また、もう一度「フェリーニに恋して」を観に行った。
何故かはよく分からない。
考えずに行動しただけ。
映画は上映トラブルとかあって、なかなかレアな回だった(笑)
僕にはもれなくトラブルが付いてくる事が多い、のかも知れない。
場内が明るくなって、帰ろうと立ち上り振り向くと、通路を隔てて斜め後ろの席に、彼女が座ってこちらを眺めていた。
で、「よっ!」って片手をあげて、挨拶?結構お茶目だ。
それに気付いてこっちは、もう全開の苦笑いで
「居たんですか?ずっと~!?」
「はい」
悪戯っぽい顔をして、彼女が答える。
「教えて下さいよ、気付いてたのなら、悪趣味だな~」
「泣くのかなと思って(笑)眺めてました」ニヤニヤと。
「さすがに、泣かないよ~(笑)」
いやいや、
違う意味で泣きたくなったけれど。ただ勿論、
誰のせいかは言わないけれど。


