エキストランド

第七藝術劇場にて



坂下雄一郎監督作品は先日、最新作の「ピンカートンに会いに行く」を観たばかり。先週の日曜日のお話です。
一監督の作品をこうして遡る形で毎週劇場で観ると言うのも、有る意味贅沢なお話。DVDや配信なら簡単な話ですが、過去作がタイミングよく劇場で公開されてるとはね。
配信とか好きでよく観ますが、やはり劇場は、全然違うと思います。取り合えず「音」とかですね。スクリーンの大小は当たり前として、音が作品の中で占める割合って、相当のものだと思われませんか?
まあ、家でもヘッドフォンして大音量で聞く、なんて言うのも有りといえば有りですが、

なんかそれは、違う!

笑。でもこの作品、音とか音楽とかの占める割合、ほぼ有りませんでした~!。いや、全くかな。
なんやねん!それ!ですね(笑)思わず自分でも突っ込みながら観てました。これ音楽弱いなぁって。

さてさて、
フィルムコミッションってご存知でしょうか?
「ロケーション撮影を支援する非営利公的機関」簡単に書くとです。
日本では市町村とか観光協会、商工会議所等が主に、その支援をやってるんですね、所謂町おこし目的ですか。ですので、役所の観光課とかが、その役にあたる感じだったりするのかな、でしょうか。

えのき市(架空ですよ、勿論)の、とある観光課の、一職員内川(前野
朋哉)が、映画のロケ地の誘致で、地元で今は東京で働いている友人(はんにゃ金田)、彼はとあるバーで働いているいるんですが、その店の常連で映画制作プロダクションで働くプロデューサー駒田(吉沢悠)を紹介する事が事の始まりなんですね。
内川は、真面目で純粋なんですよ、映画のロケ地になることで、市のPRは勿論、観光で訪れる人が増え、さらに今後も色んなメディアがロケ地として使う事での経済効果が見込めるって思ってます。そして何より彼は映画が好き!なんですね。まあ、これはこれで厄介な奴かも、ですね。
対して、
プロデューサー駒田は、実は前回携わった作品がとんでもなくコケて、事務所ではもう雑用しかさせて貰えないような状態。完全に干されです。
だったんですが、誰も引き受けない作品の企画に手を上げちゃいます。まあそれくらい酷い脚本なんですね。と言うのも大手の芸能プロダクションのお偉いさんが適当に書いた脚本を「映画にしろ!」ってご依頼。予算もとんでもなく少ない。ほぼ趣味としか思えない、我儘な企画、なので誰もやりたがらない、で、駒田が手を上げたんですね。もう、そんなのしか無いから、でしょうか。後も無さそうだし。
そんな事って、有るのかな?笑。
そのお偉いさん、おまけにプライド高くて自信過剰で、脚本を一字一句直すのはNG、なんて注文をつけても来る。ホント酷い脚本なんですよ誰が読んでも。そうらしい。
ちなみに劇中の映画のタイトルは「フリーター、家を建てる」で、フリーターが地方のある町を気に入り、そこに、何故か山や海や都会や砂漠を旅して、で、見つけて来た廃材で家を作ると言うお話。
(案外、撮リ方によっては、面白いかもね、笑)
ただ、そのお偉いさん、この作品を自分の思うように撮ってくれたら、次作は大物俳優で、予算たっぷりでお願いするよ、なんておまけのお約束が有るんですよ、
まあ嘘だろうけど、そういうのには弱いだろうねぇ。

さて、監督も決まり(監督も久々の撮影、この人も前作で大コケで、全くお声が掛からなくなってた人)
えのき市に乗り込む。
フィルムコミッション(以後FC)の内川との打合せ。さすがに悪~いプロデューサー駒田は一方的に制作側が有利な契約を取り付け、やりたい放題。FC側も勉強不足なんでしょうね、二言目には「なんせ映画撮るんですから」「映画って そんなものですよ」で、丸め込まれてしまう。


本当の監督はこの作品の脚本を書くに当たって、30以上の各地のフィルムコミッションの方々に取材をされたとの事。
それを踏まえた上で反映されてるのだとしたら、
この映画をみたら、映画制作者って酷い奴ばかり?って思いますね、間違いなく(笑)
まあ、そう言う奴も居るって事なんでしょうね、多分に同じ映画人としての自虐も込めて。
TVとかの取材の方も酷いような気がしますけれど。

まあ、取り合えず、この作品の駒田プロデューサーはかなり酷い。FCの内川は完全にパシリ扱いだし、ボランティアで協力して貰いながら、エキストラやスタッフ、その人達の扱いが酷すぎて、徐々に悪評は広がり、おまけにエキストラとして来てた地元の偉いさんにも、酷い扱いをしてしまい、決定的。とうとう地元の方々からの協力が全く無くなってしまう始末です。まあモノの言い方がおかしいんですね。約束は破るし、謝らない、言葉に全く気持ちも無い。

余りの駒田プロデューサーの傍若無人振りに業を煮やした内川はもうやっていけないと、衝突し、彼もとうとう離れてしまいます。「もう協力は出来ません」の言葉を残してね。
そしてさらに思い詰めた内川は監督に「この映画を撮り終えるのは辞めてください」と申し入れます。
監督(戸次重幸)も、この作品自体に疑問を抱き続けていたんでしょうね、あと、監督自身の扱かわれ方も悪いのも手伝って、最後の撮影を辞める事に気持ちが傾きます。
でも、プロデューサー、何かを察して先回り。監督に「次は〇〇(大物俳優)で作品決まってるんで、是非監督をお願いしますよ」ってひと言。監督は逆らえず、でしたね。
なんかチョコチョコ弄りが入るんですよ、細かくね。そう言う部分は面白い。次の仕事をちらつかせる、そういうのにも弱そうでしょ。
劇中の映画のエンディングはフリーターが家ができた~!でクランクアップ。撮影最終日もそのカットで終わり予定だったのですが、
最後の最後。

内川(観光課の人)をはじめ、利用されまくった市民達の逆襲が。
100人くらいの人々が一斉に声を上げながら乗り込み、せっかく完成した家をみんでハンマーで壊し、
さらに重機でぶっ壊して終了!
そう、実力行使です。
映画は、多分未完で終わったんでしょうね。駒田プロデューサーの呆然自失な顔が印象的でしたね。おまけに芸能プロダクションのお偉いさん(脚本書いた人)もクランクアップの日って事で来てたんで、メンツも丸潰れでしたし。
でも、家がぶっ壊されるシーンを撮影しておき、エンディングにすれば、ああ劇中のお話ですね、ラストシーンとして、くっ付ければ劇中の映画も完成するよねって何か思いました(笑)
いや、世の中には実は、完成しなかった作品がウヨウヨしてるって、聞いたんで、何か劇中で架空とは言え、また終わらない作品が生まれたのかなと。

あと、見終わって何かもの足りたいものを感じたんですが、
気付きました。
そう、ヒロインが居ない!
全く出てこない(笑)まあストーリー的に必要無いのかも、ですが、多分この作品の反動でしょうね、ピンカートンでは女性ばっかりの作品にしたのでは?、と思ったのですが、違うかな?笑。

あと、オチが有るんですよ、この作品。
後日、プロデューサーだった駒田が新作映画の試写会で、結局また雑用やってるんですよ荷物運び的な事、間違いなく又、干されですね。
そこに一目で分かる地方からやって来ましたって感じの公務員さん風の二人組。搬入口に迷いこんだみたい。
「映画の試写会の受付ってどこでしょうか?」
駒田「どこか遠くから来られたんですか」
「ええ。東京はじめてなもんで、分からなくて」
「何かご用件が」
「ええ、ロケ地の〇〇市さんから紹介頂いて、うちの市もロケ地に使って頂けないかと、御相談出来ないかと思いまして」
駒田、思わずニヤリとして
「それでしたら、私がお役にたてるかと、お話伺いましょうか・・・」