大学4年になっても全く就職活動を始めようともしない僕を彼女はどう思ってたんだろう。呆れてた?のかな。
いつまでも形にならない夢みたいなものばかり追っかけて、地に足をつけようともしない。先の事を考えようともしない。
「何がしたいの?」「どうなりたいの?」
そんなふうに聞かれても答えようがない。
僕だって自分が分からなかったんだよね、何がしたいのか。
決めるという事は、諦める事だと思っていた。だから余計に反発してたんだろうね、あの頃。

そして、
4年の冬、僕が選んだのは、もう1年大学に残る事だった。
その頃、逃げるように明け暮れたアルバイト先で、小さいお店を任せてもらったってのも、有った。しばらくは係りっきりだった。結構面白かったってのも有ったのかな。
ただ、勿論それは僕が目指したものでは、無い。
単なる居場所でしかない。
一応は、もう少し時間をかけたいって言ってた。自分の将来を決める事。
でも、何を学ぶつもりだったんだろう?

それを、
彼女に話すと、更に呆れられた。
多分ね。

季節は流れて、
春になった。
その日は、ほんとに春らしい1日だった。
二人でよく行った僕の住む街の公園に、彼女に呼び出された。
いつも二人でたくさんの事を話したベンチに腰掛けた。
無邪気に走り回って遊ぶ子供達の笑顔が眩しかった。

「私はもう、貴方と一緒に歩かない事にします。
今迄も一緒に歩いてきたかもも、疑問だけど」そう言って彼女は少し笑った。
僕もつい、つられて軽く笑ってしまった。この先、迎えるちょっと辛い時間を想像もしないで。
でも、彼女の決める事に僕は今まで一回もNoとは言わなかったしね、思いを受けとるしかなかった。
笑って別れたかったし。
ちゃんと道を選ばない僕に対する彼女の選択は尊重しないと。そう、決めない僕が悪い。
ちゃんと伝えないといけない、大切な事ほど、特に。
そういうとこ、どうなんだろう?
僕は。ほんと。

そして、最後に彼女に言われた。
これは私からの忠告とお願いって前置きして、
「回り道は程々にしなさい」

彼女を駅まで送って別れた。
部屋までの帰り道。
線路沿いの交差点。
信号が青に変わるのを待ってた。
何となく予感がして、走ってきた電車を見上げた。
電車のドアの窓の向こう、彼女と眼が合った。
そして僕だけを置いて、電車は走り過ぎて行った。
信号が青に変わった。
でもしばらくは、歩き出せなかった。その場所から。

僕が彼女から歩き出せたのは、それからどれくらいの日にちが必要だったかな。それはもう上手く思い出せない、ちょっと辛い時間。後になってだけど。

回り道は、相変わらず、してる。
それは変わらない。
いや、変えられないのかな。
つまり彼女の忠告とお願いは、残念ながら、
僕は今でも守れないままだ。

眠らない夜が、思い出させてくれた。