「お隣、良いですか?」
声の方へ視線を向けると若い女性。何故?と思いつつも当然「どうぞどうぞ」と言いながら笑顔を返す。断る理由など無い。
舞台観劇、僕はいつもと同じように最後列の右端に座っていた。
今なら安定の最前列だけど、少し前までは一番後ろって決めていた。勿論自由席、あと、小さいハコ(劇場)の場合に限る。大きいとこで最後列はさすがに選択しない。
今回もL字型に配置された客席で4列。最後列といっても距離はないし、それぞれ段差が有るので、逆に見やすい気もする。とは言え、他を見渡せばいくらでも席は有るのに、何故僕のお隣?
荷物多目だったので声をかける。大きなバッグと紙袋、あと小さなショルダーバッグ。
「端っこなんで、こっち荷物置けるんで、置いときましょうか?」
「はい、じゃあ」言いながら大きなバッグと紙袋を渡される。ん?そういう事?笑。考え過ぎたか(笑)
「遠くから来たんですか?」カバン大きいんで。
「私も大阪」
「ああ、なるほど」
今から始まるのは千秋楽夜公演。僕は昼公演も観劇してたんだけど、彼女も同じだったようだ。そう、昼公演の時、前説で「どっから来ました?」って問い掛けに「大阪です」って答えてた僕を見てたんだ。それで、話かける気になったのかな?
ただ、次の言葉に驚いてしまった。
「capぞーさんですよね?」
「???、ああ、はい、そうです」
知らない人からツイッターの名前で
呼ばれる違和感。まあ、本名知らないんだから仕方ないし、そもそも間違いでは無い。
で、頭の中でフォローやフォロワーさんを思い浮かべた。
「失礼ですが、僕がフォローしている誰かってことは、無いですよね?」
「はい、違います!」キッパリ。
ちょっと笑った。
顔も知らないはず。今でこそボケた画像を貼ってるけど、その頃は犬の画像だった。
「〇〇さんのキャスで一緒でしたよ、だから、分かりました」
今回の出演者のおひとりの名前。
「ああ、そうですか」
そう言えば、最近行っては荒らしてる。
キャスってツイキャスの事です。誰でもツイッターのアカウントが有れば配信出来る。
「だとしたら、怒ってるんでしょうね、ファンの皆様、僕はすぐ荒らすから(笑)」
「ですね(笑)でも、おとなしいよりは良いと思います。皆さんおとなしいんで」
そう、みんなおとなしいんだ、だから僕がコメント連発したくなる。
と言うか、皆様怒ってた?やはり。
質問は良いとして、やたらと言葉数が多いからね(笑)僕は。
まあ、取り敢えずの謎は解決した。
いや、解決したのかなぁ?
なんで、僕って分かった??
それから仲良く?並んで、僕の細かいボケと突っこみを時折放り込みながらの観劇。迷惑ではなかったようで良かった。それなりにお話に応じた短い感想のやり取りもしつつ、楽しめたようでした、お互いにね。
終演後はそれぞれお目当ての演者さんとお話ししたり、チェキを撮ったりで、気付くと僕と彼女が最後になってしまってた。結構はしゃいでいたようだ、いつもの事だけど(笑)
「遅くまですいません、今日は本当にありがとうございました。お疲れ様でした」お目当ての2人の女優さんにお見送りされて、こちらもご挨拶をして劇場を出る。
彼女はまだみたいなので、少し外で待つことにした。彼女にも挨拶しないと。
少しして出てきた。
「お疲れ、どこまで帰るの?」
「東京駅です」
「ん?新幹線?」
もう既に結構な時間だったんだ。
「いえ夜行バスです」
「なるほど」
「車なんで、東京駅まで送ろうか?」
「そこ迄は、、」
さすがに会ったばかりだしね、その方が良い、ホイホイ付いてこられるのもどうかな?言ってはみたものの僕も戸惑うかも。
「じゃ、最寄りの駅まで歩いて送ろう」
「はい」
実は最寄りの駅はそんなに遠くはなかったんだけど、彼女完全に来た道を忘れてて、あとお喋りしながらって言うのもあって、かなり遠廻りしてしまった。
自分の事、結構喋ってくれた。
「友達は知らないんです、私が舞台とか好きなの。
でも、いつもは地元しか無理だったんです、観劇。
今回は親にやっと言えて、許可貰って、
でも夜行バス往復なら許すって、酷くないですか?」
確かに、何で夜行バスはOKなんだろうか?線引きがよく分からない(笑)
まあ、普段の彼女を全然知らない僕は丁度良い話し相手だったみたいだ。
信号待ち。
「所で、学生?」
「はい」
「3年生くらいかな?」
「はい、よく分かりましたね」
そうか大学3年、21くらいかぁ、そんな感じだよね・・
「そう、高校3年です!」
「ん?!高3、JKなの?」
足がちょっと、ガクッてなった、コントみたいに。
「そうですよ」
僕は苦笑い。まあ、今時はそうだよね。有るかな。
でも、アイドルのコンサートやディズニーランドに来るならいざ知らず、結構地味な舞台を夜行バスで見に来るJKはイメージしにくいよなぁ。時代物だし花魁だし、見に来る?笑。ああ、時代物で花魁とかが出てくるし、当然下ネタとかも出てくるお話でした。。。何かしっくりこない。好き嫌いは勝手だけどね。
駅にて。
「気をつけてお帰り下さい」
「ありがとうございました」
「こちらこそ。また何処かで」
「はい、また何処かで」
軽く手を振り別れる。
後姿が階段の向こうに消えるのを見届けて、僕も帰る事にする。
同じ大阪だから、何処かで会うかも知れないなぁ・・・
実はそんな予感は当たってしまうのだが、
それはまたのお話。
僕がほんの少し戸惑った理由。