【問】生活保護費の計算方法について教えてください。

 生活保護費の計算方法について教えてください。 年金収入や 働いて得た収入がある場合は、保護費は、どのように計算されるのでしょうか。

 

 

【答】

 保護費の計算方法については、まず その世帯の「最低生活費」を計算します。 この「最低生活費」については、「生活扶助費や 住宅扶助費、教育扶助費など」に分かれており、この最低生活費から 「給与や 年金、児童扶養手当、仕送りなどの収入」を差し引いたものが、毎月 支給される「保護費」になります。

 つまり、保護費というのは、収入が最低生活費に足りない分(不足分)を支給するものですので、収入が増えれば、支給される保護費は減少しますし、収入が減少すれば、支給される保護費は増加しますので、収入と保護費の合計額が 最低生活費になるわけです(「保護費= 最低生活費-収入」、 「最低生活費= 収入+保護費」)。

 

 生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するものであり、最低生活費は、物価の変動や 専門家の意見などをもとに、厚生労働省により 5年に1度 見直しが行われており、毎年改定されるものではありません。 なお、年齢層(0~2歳、3~5歳、6~11歳など)によって 生活扶助費が異なりますので、毎年4月に年齢改定が行われます。

 また、一定以上の障害がある場合は 障害者加算、一人親世帯の場合(18歳未満の子がいる場合: 父子世帯を含む)母子加算、18歳未満の子がいる場合は 児童養育加算11月~3月は 冬季加算(暖房費)、12月は期末一時扶助が 上乗せして支給されます。

 

 最低生活費は、住んでいる地域や世帯員数、年齢などによってがあり、単身世帯については、生活扶助費は 約7万円、住宅扶助費(家賃)の上限額は 約3万円で、合計額は 約10万円になります。

 家賃が月4万円の住宅に住んでいても、支給される住宅扶助費は 上限額の3万円であり、差額の1万円は自己負担になるため、生活費を節約して 家賃不足分の1万円を捻出しなければならなくなります。

 そのため、高額家賃(上限額を超えた家賃)の住宅に住んでいる場合は、福祉事務所は 転居指導を行い、基準内家賃の住宅に転居した場合は、新住居の入居費用(敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料、保証会社の保証料の5項目: 上限額あり)引っ越し代が、福祉事務所から支給されます鍵交換代部屋の消毒代は、本来は 家主が負担すべきものですので、福祉事務所からは支給されません。)。 また、火災保険料や保証料、更新手数料などは、2年に1回(又は 年1回)の支払い時に、本人の申請により支給されます。

 

 次に、この「最低生活費」から「給与や 年金、児童扶養手当、仕送りなどの収入」を差し引いたものが、毎月 支給される「保護費」になります。

 就労収入(給与)は、変動が大きい場合は、毎月 又は2か月に1回収入再認定が行われ、変動が小さい場合は、3か月分の平均額で収入認定を行われることがあります。 この就労収入(給与)については、全額が収入として認定されるものではなく(就労収入の全額が収入認定され、保護費を減額されると、働く意欲がなくなるため)社会保険料や 所得税、通勤費等の実費に加えて、基礎控除額などを差し引いた額が 収入として認定され、保護費から差し引かれることになります。

 

 この基礎控除額は、最低額が 15,000円であり、就労収入が増額するに従って、少しずつ増えていきます。 つまり、就労収入については、基礎控除額が差し引かれて 収入として認定されますので、基礎控除額分が、手取り額が増えることになります。

 例えば、就労収入(給与)が 15,000円のときは、基礎控除額が 15,000円であり、就労収入から全額が控除され、収入認定額は0円となり、保護費は減額されません。 

 また、就労収入が 20,000円のときは、基礎控除額が 15,600円であり、4,400円(= 20,000円-15,600円)が収入認定され、 就労収入が 30,000円のときは、基礎控除額が 16,400円であり、13,600円(= 30,000円-16,400円)が収入認定され、収入認定された額が、保護費から減額されます。

 

 この「基礎控除額」は、社会保険料や 所得税、通勤費等の実費が差し引かれる前の就労収入(給与)の額に対応して適用されますので、 就労収入(給与)が 30,000円、社会保険料が 5,000円、所得税が 0円、通勤費が 1,000円のときは、基礎控除額が 16,400円となり、収入認定額は 7,600円(= 給与 30,000円-社会保険料 5,000円-通勤費 1,000円-基礎控除額 16,400円)になります。

 

 また、20歳未満の人の就労収入(アルバイト収入を含む)については、基礎控除に加えて、11,600円の「20歳未満控除」が適用されますので、高校生のアルバイト収入の場合は、基礎控除額 15,000円(最低額)と20歳未満控除額 11,600円の計 26,600円(通勤費等の実費差し引き後)以下であれば、収入認定額は 0円になります。

 ただし、この基礎控除や 20歳未満控除は、福祉事務所に就労収入(給与)を申告した場合に適用され、福祉事務所に申告せず、不正受給とみなされると、基礎控除や20歳未満控除は 適用されないので、福祉事務所にきちんと申告してください。

 

 次に、年金や 傷病手当金、失業給付金、労災給付金などの「その他の公の給付」については、基礎控除や 8,000円控除の適用はないため、その全額が収入として認定されます。 なお、傷病手当金を受給するにあたって、診断書が必要で 診断書料を自己負担しているときは、診断書料(領収書の提出が必要です)は、必要経費として 収入(傷病手当金)から控除されます。

 

 次に、入院給付金や 動産の売却収入等の「その他の臨時的な収入」については、世帯月額が 8,000円を超えた額が、収入として認定されます(いわゆる 8,000円控除の適用)。 ただし、この8,000円控除についても、福祉事務所にきちんと申告した場合に適用され、福祉事務所に申告せず、不正受給とみなされると、8,000控除は適用されないので、少ない額であっても、福祉事務所に申告してください。

 

 次に、生活保護が適用になると、国民健康保険には加入できないため、国民健康保険料を支払う必要はなく、医療費は、全額 福祉事務所から病院等の医療機関に支払われます。

 また、病気の治療のため、やむを得ず 遠くの病院に受診する必要があるときは、その病院の医師の意見や 福祉事務所の医師の審査に基づき、本人の申請により 通院交通費(通院移送費:バス代や電車代)が支給されますし、病状や障害等により、タクシーの利用が必要なときは、その病院の医師の意見や 福祉事務所の医師の審査に基づき、タクシー代が支給されることもあります。

 さらに、視力が低下し メガネが必要になったときは、メガネ代(上限額あり)が支給されます。 なお、メガネの耐用年数は4年ですが、4年を経過する前に 視力が低下したときは、レンズの交換代は支給されます。

 

 一方、介護保険については、生活保護が適用になっても加入することができ、介護保険料が生活扶助費に上乗せされ、介護サービス費の1割負担分は、福祉事務所から介護事業所等に支払われます。