【問】生活保護受給中であっても,収入として認定されない借金や,収入から控除される借金の返済金(償還金)について 教えてください。
生活保護受給中は,借金については,収入として認定され 保護費が減額されると思いますが, 高校進学のための奨学金や 社会福祉協議会からの借入金などについては,収入として認定されないと聞きました。
また,高校進学のための奨学金の返済金(償還金)については,子どもの稼働収入から控除されると聞きましたが,「どのようなものが,収入として認定されないのか」,「どのようなものが,収入から控除されるのか」について教えてください。
【答】
生活保護受給中は,借金については,収入として認定され 保護費が減額されますが, 厚生労働省 事務次官通知により,「他法,他施策等により貸し付けられる資金のうち,当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」については,貸付けを受ける際に,福祉事務所長の事前の承認がある場合は,収入として認定されません。
具体的には,高校進学のための奨学金や,国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための借入金などが該当します。
また,公的なものに限らず,一般の法人や 私人からの借入金であっても,自立更生を目的とするものであって,事前に福祉事務所長の承認があり,かつ,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものであれば,収入として認定されません(「別冊問答集」問8-40)。
さらに,自立更生を目的とするものであって,事前に福祉事務所長の承認が得られた借入金の返済金(償還金)については,必要経費と同じように,その借入金によって得られた収入から控除されます(厚生労働省 社会・援護局長通知 第8-4-(3))。
また,公的なものに限らず,一般の法人や 絶対的扶養義務者(= 直系血族,配偶者,兄弟姉妹)以外の私人からの自立更生を目的とする借入金についても,事前に福祉事務所長の承認があり,かつ,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されている場合は,その借入金の返済金(償還金)については,必要経費と同じように,その借入金によって得られた収入から控除されます。
例えば,高校進学のための奨学金の返済金(償還金)については,子どもの稼働収入から控除されますし,国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための借入金の返済金(償還金)については,その世帯の全収入(年金収入を含む)から控除されますので,その分 保護費が増えることになります。。
なお、通常では、保護受給前の借金の返済金(償還金)については、収入から控除されませんが、 保護受給前に 一般の法人や 私人(絶対的扶養義務者(= 直系血族,配偶者,兄弟姉妹)を除く))からの自立更生を目的とする借入金の返済金(償還金)については,一定の要件を満たす場合は(仮に その保護受給者が,貸付けを受ける際に 事前に福祉事務所に相談があったものとした場合,福祉事務所が これを適当なものとして 当然事前の承認を与えたであろうと判断されるもの),必要経費と同じように,その借入金によって得られた収入から控除されます(厚生労働省 社会・援護局長通知 第8の4の(3)のイのただし書き,「別冊問答集」問8-94)。
上記のことは,ケースワーカーでも知らない人が多いので,次の参考資料を見て,担当ケースワーカーに相談してください。
(参考)
第8-3
(3)次に掲げるものは,収入として認定しないこと。
ア〜イ (略)
ウ 他法,他施策等により貸し付けられる資金のうち,当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額
エ~チ (略)
○厚生労働省 社会・援護局長通知
第8-2 収入として認定しないものの取扱い
(1)〜(2) (略)
(3)貸付資金のうち 当該被保護世帯の自立更生のために当てられることにより収入として認定しないものは,次のいずれかに該当し,かつ,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認があるものであって,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものに限ること。
ア 事業の開始又は継続,就労及び技能修得のための貸付資金
イ 次のいずれかに該当する就学資金
(ア)高等学校等就学費の支給対象とならない経費(学習塾費等を含む。)及び高等学校等就学費の基準額又は学習支援費でまかないきれない経費であって,その者の就学のために必要な最小限度の額
(イ)高等学校等で就学しながら保護を受けることができるものとされた者の就労や早期の保護脱却に資する経費にあてられることを保護の実施機関が認めた場合において,これに必要な最小限度の額
(ウ)大学等への就学のため,第1の5による世帯分離又は,大学等への就学にあたり居住を別にすることが確実に見込まれる世帯について,大学等への就学後に要する費用にあてるための貸付資金
ウ 医療費又は介護等費貸付資金
エ 結婚資金
オ 国若しくは地方公共団体により行なわれる貸付資金又は国若しくは地方公共団体の委託事業として行なわれる貸付資金であって,次に掲げるもの
(ア)住宅資金又は転宅資金
(イ)老人若しくは身体障害者等が,機能回復訓練器具及び日常生活の便宜を図るための器具又は災害により損害を受けた者が,当該災害により生活基盤を構成する資産が損なわれた場合の当該生活基盤の回復に要する家具什器を購入するための貸付資金
(ウ)配電設備又は給排水設備
(エ)国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための貸付資金
(オ)日常生活において利用の必要性が高い生活用品を緊急に購入するための貸付資金
(カ)厚生年金の受給権を得たために支払う必要が生じた共済組合等から過去に支給された退職一時金の返還のための貸付資金
(4)〜(6) (略)
第8-4 その他の控除
(1)〜(2) (略)
(3)貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額の償還については,償還が現実に行なわれることを確認したうえ,次に掲げるものについて,当該貸付資金によって得られた収入から控除して認定すること。 上記の収入とは,
① 修学資金又は奨学資金(局第8の2の(3)のイの(ウ)に該当するものを除く)については,当該貸付を受けた者の収入
② 結婚資金については,当該貸付けを受けた者 又は 当該貸付資金により結婚した者の収入
③ 医療費又は介護費貸付資金, 住宅資金, 転宅資金,老人 若しくは 身体障害者等が機能回復訓練器具 及び 日常生活の便宜を図るための器具 又は 災害により損害を受けた者が 当該災害により生活基盤を構成する資産が損なわれた場合の当該生活基盤の回復に要する家具什器を購入するための貸付資金, 配電設備又は給排水設備のための貸付資金, 国民年金の受給権を得るために必要な任意加入保険料のための貸付金 並びに 厚生年金の受給権を得たために支払う必要が生じた共済組合等から過去に支給された退職一時金の返還のための貸付資金については,当該世帯の全収入
ア 国若しくは,地方公共団体により行なわれるもの又は国若しくは地方公共団体の委託事業として行なわれるものであって,償還の免除又は猶予が得られなかったもの。 ただし,医療費 又は介護費貸付資金については,保護の実施機関の承認のあったものに限ること。
イ ア以外の法人 又は 私人(絶対的扶養義務者(= 直系血族,配偶者,兄弟姉妹)を除く))により貸し付けられたもののうち,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認のあったものであって,償還の免除又は猶予が得られなかったもの。 ただし,事前の承認を受けなかったことについて,やむを得ない事情があり,かつ,当該貸付資金が現にその者の自立助長に役立っていると認められ,事後において承認することが適当なもの(注:保護受給前の借入金を含む)についても,同様とする。
ウ アに該当する技能修得資金とともに,当該技能修得期間中,貸付けを受けた生活資金については,貸付けを受けるについて保護の実施機関の事前の承認のあったものであって,償還の免除又は猶予が得られなかったもの。
〇別冊問答集
問8-39 貸付金の事前承認の取扱い
(問)
貸付金であって収入認定の対象とならないものの要件として,保護の実施機関の事前の承認が定められているが,これは担当職員が了承し,ケース記録に明記することでたりるか。
(答)
この承認は,保護の実施機関としての福祉事務所長の承認でなければならず,単に担当職員の了承では要件を満たしたことにならないものである。
なお,この場合,通常は 文書による承認が必要とされる。
問8-40 一般法人 又は私人からの貸付金
(問)
自営業を営んでいる被保護者が,事業の継続に必要な資金を公共団体以外の法人 又は私人から貸付けを受けたときにおいても,貸付資金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられるものとして,収入として認定しないでよいか。
(答)
自立更生を目的とするものであって,事前に福祉事務所長の承認があり,かつ,現実に当該貸付けの趣旨に即し使用されているものであれば,公共的なものに限らず,一般の法人,私人からの貸付金であっても,収入として認定しなくても差し支えない。
問8-94 保護開始前に借り受けた貸付金の償還金控除
(問)
局第8の4の(3)のイのただし書きにいう「事前の承認を受けなかったこと」には,保護受給前に貸付けを受けたものも含むと解して差し支えないか。
(答)
局第8の4の(3)のイのただし書きの規定は,当該貸付けを受けた時期が 保護受給前であったか,受給中であったかは問わない。 要は,事後において承認することが適当かどうかである。
仮に,当該被保護者が貸付けを受けるについて事前に実施機関に相談があったものとした場合,これを実施機関が適当なものとして当然事前の承認を与えたであろうと判断されるものについては,事後において承認することが適当なものとして同様に取り扱って差し支えないのである。