【問】インターネット回線の新規契約によるキャッシュバックは,生活保護上の収入認定の対象になるのですか?

 

 この【問】は,このブログの閲覧者の方からの質問を参考に作成したものです。

 

 私は 生活保護を受けていますが,インターネット回線の新規契約により,3万円のキャッシュバックを受けることができますが,これは収入認定の対象になるのか,教えてください。

 

 

【答】

 インターネットで,「生活保護,収入認定,キャッシュバック」で検索しますと,

 レベルゼロ:【実体験】生活保護でキャッシュバックは収入扱いになるのかについて解説します!

② 財テク公務員ブログ:【生活保護】ポイントサイトで稼いだポイントは収入認定される?  ケースワーカーが解説

 小山ゆうき:行政書士, YouTube

などがヒットしますので,皆さんも ご覧になってください。

 

 まず,については,生活保護受給者の方が書いたブログであり,この方は,東京都中野区福祉事務所で保護を受けているとのことですが,東京都中野区福祉事務所では,現金を含めて キャッシュバックについては,広く収入認定の対象外と判断していると思われます。 ただし,他の福祉事務所では,収入認定の対象としているところもあるようです。

 

 については,現役のケースワーカーの方が書いているブログであり,「商品を購入したときに付与されるポイントは,収入認定の対象外であるが, インターネット回線やクレジットカードの新規契約などによるポイントは,収入認定の対象である。」としていますが,この考えが,厚生労働省に確認したものであるかどうか は分かりません。

 

 については,生活保護制度に詳しい行政書士の方のYouTubeで,上記②と同じ考えのようです。

 

 のブログを読むと,「商品を買い物した時に手に入れたポイントついては,割引であるから 収入認定の対象外であるが, インターネット回線や クレジットカードの新規契約などによるポイントは,贈与あるから 収入認定の対象である。」としていますが,私は,については,収入認定の対象外の範囲をかなり狭く解釈しているのではないかと考えています。

 

 その理由は,「商品」はモノだけでなく,サービスも含まれますし,別冊問答集では,「ポイント等」となっており,ポイントに限定していません。

 また,次の参考資料の「別冊問答集」の問8-29-2においては,なお,商品の購入の際に付与されるポイント等,店舗や企業の割引やサービスの一環としての性格を有するものについては,収入として認定しない。」となっており,「割引」だけでなく,「サービスの一環」としての性格を有するものについても,収入認定の対象外としていますので,私は,インターネット回線や クレジットカードの新規契約などによるポイントや 電子マネー,現金は,収入認定の対象外と判断してよいと考えています。

 

 さらに,次の参考資料の令和4年1月28日付の「マイナポイント第2弾の生活保護制度における取扱いについて」(厚生労働省社会・援護局保護課 事務連絡)においては,

「被保護者がマイナポイント第2弾によるポイントを受領した場合における生活保護制度上の収入認定の取扱いについては,『マイナポイントの生活保護制度における取扱いについて』(令和2年8月27日社会・援護局保護課事務連絡)でお示しした取扱いと同様に,『生活保護問答集について』(注:別冊問答集)の問8の29の2のなお書きの事例のとおり収入として認定しないこととし,収入申告にあたっては,挙証資料の提出を求めないこととして差しつかえありません。」

とされています。

 

 つまり,上記の厚生労働省の保護課事務連絡では,商品を買い物した時に手に入れたポイントだけでなく,商品を買わずに手に入れたマイナポイントについても,別冊問答集」の問8-29-2のなお書きの事例のとおり,収入として認定しないとされていますので, 私は,収入認定の対象外である「ポイント等」については,上記のように狭く解釈するものではなく,インターネット回線や クレジットカードの新規契約などによるポイント等は,店舗や企業から ただ単に贈与されたものではなく,インターネット回線や クレジットカードなどの「商品」(サービスを含む)の「購入」(契約)の際に付与されるポイント, 電子マネー 又は 現金であり,店舗や企業の割引やサービスの一環としての性格を有するものであるから,収入認定の対象外であると考えています。

 そのように考えないと,マイナポイントに関する 上記の厚生労働省の保護課事務連絡の記載内容と矛盾するからです。

 

 私の考えは 一貫しており,このブログの6月26日の記事「生活保護とペット保険」でも書いたとおり,「生活保護費をやり繰りして支払ったお金の一部が戻ってきたものを,収入認定することは理屈に合わない。」というものです。

 

 ただし,これらの考えは あくまでも 私の個人的な考えであり,私の考えが正しいと言い切る自信はありません。 今回の問題について,いろいろ調べましたが,申し訳ありませんが,明確な答えは見つかりませんでした。

 

 そこで,担当ケースワーカーに相談し,収入認定の対象と言われたときは,上記①のブログを見せて,「東京都中野区福祉事務所では,収入認定の対象外としており,収入認定されることに納得できないので,厚生労働省に確認してほしい。」と要望してみてください。

 担当ケースワーカーが,厚生労働省に確認しない と言う場合は,自分で厚生労働省の保護課に確認する方法もあります。 そのときは,必ずケースワーカーとのやり取りを録音してください。

 

 しかし,このように,「別冊問答集」の問8-29-2の解釈について 疑義が生じる理由は,厚生労働省が「別冊問答集」の問8-29-2で,いくつもの解釈ができるような 曖昧で不適当な記述をしたためであると思います。

 例えば,「ポイント等」の「等」は,具体的に何を指しているのでしょうか? 現金を含むのでしょうか,それとも 含まないのでしょうか?

 また,「サービスの一貫としての性格を有するもの」とは,具体的に何を指しているのでしょうか? インターネット回線や クレジットカードの新規契約などによるポイント等を含むのでしょうか,それとも 含まないのでしょうか?

 こんな曖昧な書き方では,何を言いたいのか,さっぱり分かりません。 こんなんで,誰も文句を言わないのか と思います。「もっと具体的に 分かりやすく書けよ。」と言いたくなります。 自分だけが分かって、他の人が分からない文章なんて,本当に典型的な独りよがりの悪文です。

 

 この通知に限らず,厚生労働省保護課の通知には,解釈に疑義が生じるものが多いので,疑義が生じないように,もっと具体的に 分かりやすく記述するか, 又は この通知の解説を載せるべきです。 そうしないと,各自治体では 通知の解釈に疑義が生じ,現場のケースワーカーは,どのように対応してよいのか分からず,混乱してしまいます。 厚生労働省の役人は,本当に不親切で 頭が悪いとしか思えません。

 

 この「別冊問答集」の問8-29-2については,解釈に疑義が生じるため,いくつかの自治体から厚生労働省へ照会があり,厚生労働省は それに回答していると思います。 しかし,厚生労働省は,各自治体からの照会に対する回答については,理由は分かりませんが,照会した自治体にのみ通知し,全国の自治体には通知しません。 このため,生活保護事務は,法定受託事務でありながら,困ったことに,各自治体により 生活保護制度の運用に差が生じてしまいます。

 

 なお,インターネット回線や クレジットカードの新規契約などによるポイントや電子マネー,現金が,仮に収入認定の対象であったとしても,「その他の臨時的な収入」に該当しますので,ご存じのとおり 収入認定の際に 月額8,000円が控除されます。

 

 また,このブログで,再度 この問題を取り上げたいと思いますので,皆さんが,この件について,担当ケースワーカーに相談したときは,その結果を教えてください。

 

 最後に,このブログの8月7日の記事「生活保護とキャッシュバック(№1)」も合わせて,ご覧ください。

 

 

 

(参考)

○別冊問答集

 問8-29-2 商品券・電子マネー・ポイント等の取扱いについて(平成31年度新規)

(問)

 キャッシュレス化など商慣習が多様化する中で,現金と同様に使用できる商品券,電子マネー,ポイント等を贈与等されたことを把握した場合は,どのように取り扱うのか。

 

(答)

 現金と同様に使用できるものは現金と同様に取り扱うものである。 例えば,他からの仕送りや贈与等の性格を有するものであれば,次官通知第8の3の(2)のイにより社会通念上収入として認定することを適当としないもののほかは,すべて収入として認定することが適当である。

 なお,商品の購入の際に付与されるポイント等店舗や企業の割引や サービスの一環としての性格を有するものについては,収入として認定しないこととして差し支えない。

 

 

 

<マイナポイントの生活保護制度における取扱いについて>

 

                                事  務  連  絡

令和4年1月28日

 

各 都道府県・市町村 生活保護担当課 御中

 

                      厚生労働省社会・援護局保護課

 

マイナポイント第2弾の生活保護制度における取扱いについて

 

 生活保護行政の推進につきましては,平素から格段のご配慮を賜り厚く御礼申し上げます。

 今般,令和3年度補正予算が成立し,新たなマイナポイント事業(以下「マイナポイント第2弾」という。)が実施されることとなりました。

 今回のマイナポイントの付与は,マイナンバーカードの普及促進等を目的としており,生活保護受給者等の現時点で健康保険証の利用登録を行うことができない方についても,マイナポータル等からマイナンバーカードの健康保険証利用の「申込み」を行うことで,マイナポイント付与の対象となります。健康保険証利用の申込み方法については,別添の関係各省連名事務連絡の別紙2をご参照ください。

 

 なお,被保護者がマイナポイント第2弾によるポイントを受領した場合における生活保護制度上の収入認定の取扱いについては,「マイナポイントの生活保護制度における取扱いについて」(令和2年8月27日社会・援護局保護課事務連絡)でお示しした取扱いと同様に,「生活保護問答集について」(平成21年3月31日厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡)の問8の29の2のなお書きの事例のとおり,収入として認定しないこととし,収入申告にあたっては,挙証資料の提出を求めないこととして差しつかえありません。

 各自治体におかれては,上記についてご了知いただき,引き続き生活保護受給者のマイナンバーカード取得促進に取り組んでいただきますようお願いいたします。

また,都道府県におかれましては,管内実施機関に対する周知をお願いいたします。

 

(注1)生活保護受給者が利用登録の申込みを行った際,端末に被保険者番号が見つ からないため,利用設定ができない旨のエラーメッセージが表示されますが,マイナポイントは問題なく付与されます。

(注2)当該措置は,あくまで,今回のマイナポイント第2弾における措置であり,令和5年度中の導入に向けて検討を進めている医療扶助のオンライン資格確認における利用者登録の取扱いについては,別途整理の上お知らせいたします。