今日のテーマは,「生活保護と水際作戦(家具什器費)」です。

 このブログの10月8日の記事「生活保護と家具什器費(№1)のコメント欄に,相談者のコアラさんが,東大阪市西福祉事務所へ 家具什器費の交付申請のため 相談に行ったときのケースワーカーとのやり取りを,文章で詳しく載せています。

 

 また,コアラ(相談者)さんが,このときのケースワーカーとのやり取りを録音し,次のとおり YouTubeにアップしています。 文章で読むより,音で聞く方が,生々しいです現場の雰囲気がよく伝わってきます

 

 詳しくは,コアラさんが,YouTubeにアップしている 次の録音(4つ)を聞いてみてください。 内容は,「東大阪市西福祉事務所のケースワーカーとのやり取り(2つ), 東大阪市の本庁の主査とのやり取り(電話), 生活保護制度に詳しい司法書士とのやり取り(電話)」です。

 

 

○コアラ(相談者)さんが YouTubeにアップした録音

【録音】生活保護 家具什器費を申請したら水際作戦を受けた!東大阪市西福祉事務所

 https://www.youtube.com/@user-ps9ce5fl5w ← クリックしてください。

 

 

 そこで,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーと コアラ(相談者)さんのやり取りの一部を書きます。

 

 

 コアラ(相談員)さんが、「家具什器費の上限額の32,300円をオーバーして、洗濯機や電子レンジなどを買った場合、足りない分は 自分で支払うのですか?」と質問をしたところ、東大阪市西福祉事務所のケースワーカーは、「オーバーはダメ範囲内に収めないといけない。 そんだけ 資力ありますやんってなっちゃう。 買えるんですか?ってなるから ダメ」との答え。

 

(私の答え)

 一定の条件を満たさないと保有が認められてない「自動車など」を除いて、基本的には 生活保護費で 何を買っても自由ですから、家具什器費の上限額の32,300円を超えて 家電製品を買った場合に、超えた分を自分で負担しても、何の問題もありません。

 「家具什器費の上限額の32,300円を超えて 家電製品等を買ってはいけない。」なんて、こんなデタラメな話はありません。 ケースワーカーが、こんなウソをよく言えたのだと思います。

 したがって,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は 誤りです

 

 

 コアラ(相談者)さんが,家具什器費を申請したいと相談すると,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーは,「家具什器費は、家に本当になかった方のために支給するものになるので、例えば、処分してないだとか、ホームレス状態だったって方のために支給するものになるので、あなたは、在宅で生活していて 対象では無いから 支給できない。」との答え。

 

(私の答え)

 東大阪市西福祉事務所のケースワーカーは,「家具什器費は、ホームレス状態の人に支給するものであって、在宅で生活している人には支給できない。」と言っているが、その説明は 誤りです

 次の「参考資料」の厚生労働省 保護・援護局長通知 第7-2-(6)-ア―(ア)において、家具什器費は、保護開始時において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないときに支給できるとされており、「ホームレス状態の人に対してのみ支給できる」などとは、どこにも書かれていません。

 なお、ホームレス状態の人は、家具什器のほとんどを所有してないので、家具什器費の基準額の 32,300円以内でなく、特別基準額の 51,500円以内を支給することができます。

 

 

 コアラさんが,洗濯機や電子レンジなどを家具什器費として申請したいと相談すると,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーは,「まず洗濯機は,家具什器に当たらないですね。 電子レンジも 当たらないですね。 電気ポットも対象ではないですね。」,「フライパンを支給するなら,他の鍋は支給できないです。」,「家具什器の出せるものって,100均とかで買えると思うんで,それを自弁できないですかね?」とのこと。

 

(私の答え)

 洗濯機や電子レンジ,電気ポットは,家具什器費の対象品目です

 したがって,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は 誤りです

 ただし,それらの家具什器を購入する「必要性及び緊急性」が認められる場合に,家具什器費を支給することとなっていますので,「必要性及び緊急性」について,福祉事務所は判断することになります。

 このように地方自治体にも一定の裁量権がありますが,生活保護事務に関する地方自治体の裁量権は「覊束裁量」であり,「覊束裁量」とは,行政権の裁量を全くの自由裁量ではなく,法律が予定している基準がある裁量であり,その法律が予定している基準に抵触するような裁量には 裁判所等の審査が及び,都道府県知事や裁判所によって,裁量権の逸脱・濫用により違法とされ,家具什器費の却下処分などが取り消されています。

 なお,上記の品目は,通常,多くの福祉事務所で 家具什器費として認められ支給されています。

 

 

 次に,コアラさんが,「東京都生活保護運用事例集には,家具什器の対象は,」と言おうとすると,それを途中でさえぎって,ケースワーカーは,「ここ 東京じゃないんで,自治体によって変わります。」との答え。

 

(私の答え)

 生活保護事務は,「第1号法定受託事務」で,「第1号法定受託事務」とは,国が本来行うべき事務を 都道府県又は市町村が実施する事務のことです。 「生活保護の支給決定などの事務」は,国が責任を持って担うべき事務ですから,「第1号法定受託事務」になります。 そのため,生活保護の財源は,国の費用負担4分の3という 最も国の負担割合が多いものです。 それほど国に責任があるということです。

 生活保護に関する事務のほとんどが,自治事務ではない理由は,生活保護の支給基準が,国の基準で一律に決められているので,自治体に裁量の余地がほとんどないからです

 つまり,家具什器費の対象品目は,基本的には全国一律であり,自治体によって家具什器費の対象品目が異なるものではありません。

 したがって,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は 誤りです

 

 

 次に,コアラさんが,「洗濯機や電子レンジは,どうして対象ではないか。」と聞くと,ケースワーカーは,「炊事用具じゃないので。 電子レンジは,厚生労働省が 必要最小限度の炊事用具ではないと言っているので。」とのこと。

 コアラさんが,「別冊問答集に,そんなこと書いてありました?」と聞いたら,「はい,書いてあったと思います。 最近,調べました。」との答え。

 

(私の答え)

 電子レンジは,「別冊問答集」に家具什器費の対象品目として記載されています(後の「参考資料」をご覧ください。)。

 したがって,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は 誤りです

 

 

 次に,コアラさんが,「私が家具什器費を申請して,その品目が家具什器費の対象でない場合は,市は却下するじゃないですか。 そのとき,却下通知書を出さなければいけないと思うんですけども。」言うと,「家具什器費には却下っていうものはなく,支給対象外というだけですけどね。 これとこれは出せて,これは出せない,というだけです。」とのこと。

 

(私の答え)

 例えば,電子レンジや洗濯機,電子ポットの購入費を 家具什器費として申請し,東大阪市西福祉事務所が,これらの家電製品は,家具什器費の支給対象品目ではないとして,申請を却下した場合は,東大阪市西福祉事務所は,却下理由を明記した「家具什器費申請却下通知書」必ず申請者に交付する義務があります。 そして,家具什器費の却下処分に不服があるときは,都道府県知事に審査請求を行うことができます。

 したがって,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は 誤りです

 

 

 上記のとおり,東大阪市西福祉事務所のケースワーカーの説明は ウソばかりです

 こんな酷い話があるでしょうか。 同じ公務員として恥ずかしくなります。 こんな人は,ケースワーカーをやる資格はありません。 保護受給者の方が迷惑ですから,すぐに辞めた方がよいと思います。 しかし,こんなケースワーカーばかりではありません。 保護受給者の方に寄り添ってくれるケースワーカーも たくさんいますから,皆さん 心配しないでください。

 コアラ(相談者)さんの戦いは,これからも まだまだ続いていきます。

 

 

(結果)

 東大阪市西福祉事務所は,12/25に 今までの説明をひるがえし,突然,冷蔵庫や 電子レンジ,電気ポット等など購入費を,家具什器費として認めたそうです(そのときの会話は,上記の【録音】生活保護 家具什器費を申請したら水際作戦を受けた!で,YouTubeにアップされています。)

 今までの上記の6つの東大阪市西福祉事務所の説明は,一体,何だったのでしょうか。

 コアラさんが 録音していることを知って,このままではウソを付いていたことがバレて,ヤバイと思って,態度を変えたのでしょうか。

 結果は、コアラさんの主張どおりになりましたが,無駄な時間と労力を費やしてしまいました。

 しかし、東大阪市西福祉事務所のケースワーカーから、一言の謝罪もなかったそうです。 人として どうなのか と思います。

 コアラさんの家具什器費に係るケースワーカーとの戦いは、これで ひとまず終わりました。 しかし、さらなる新たな戦いが始まるかもしれません。

 

 

 なお,このブログの12月20日の記事「生活保護裁決データベースにおける家具什器費」には,家具什器費の申請が却下され,都道府県知事に審査請求を行った結果、家具什器費の支給が認められた都道府県知事の裁決書の要約を載せていますので,これも ご覧ください。

 

 

 

(参考)

○生活保護・別冊問答集

  問7-45 家具什器費の支給対象品目 

(問)

 保護開始時,長期入院・入所後の退院・退所時等において,冷蔵庫・電子レンジ等の保護受給中に保有が容認される物品を保有していない場合,これらの物品を家具什器費の支給対象としてよいか。

 

 

(答)

 日常生活に必要な物品については,本来,経常的な生活費の範囲内で,計画的に購入すべきである。((補足)これは,保護開始後,保護費をやり繰りしてお金を貯め,家電製品等の買い替え費用に充てる必要があるという意味であり,保護開始時に家電製品等の家具什器を所有してない場合は,これに該当しない。)

 冷蔵庫,電子レンジ等保護受給中に保有が容認される物品を保護開始時に保有していなければ,一時扶助の支給基準である「最低生活に必要な物品を欠いていると認められる場合であって,それらの物資を支給しなければならない 緊急やむを得ない場合」に該当するか否かを 個々の世帯の状況に応じて判断し,その結果,必要性および緊急性が認められる場合には,家具什器費を認定して差し支えない

 なお,必要性および緊急性が認められない場合には,経常的な生活費の中から順次 購入していけば足りるものであり,家具什器費を認定することは適当でない。

 

 

 

○厚生労働省 保護・援護局長通知

 第7-2-(6)  家具什器費(令和5年度)

 ア 炊事用具,食器等の家具什器

   被保護世帯が次の(ア)から(オ)までのいずれかの場合に該当し,次官通知第7に定めるところによって判断した結果,炊事用具,食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは,32,300円の範囲内において特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。

   なお,真にやむを得ない事情により,この額により難いと認められるときは,51,500円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。

 

(ア)保護開始時において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき

 

(イ)単身の被保護世帯であり,当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し,新たに単身で居住を始める場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。

 

(ウ)災害にあい,災害救助法第4条の救助が行われない場合において,当該地方公共団体等の救護をもってしては,災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき。

 

(エ)転居の場合であって,新旧住居の設備の相異により,現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず,最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき。

 

(オ)犯罪等により被害を受け,又は同一世帯に属する者から暴力を受け,生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。