【問】ゼロゼロ物件への転居を考えていますが,デメリットなどの注意すべき点があったら 教えてください。

 

 私は,隣りの部屋の住民とのトラブルにより,転居したいと思っていますが,担当ケースワーカーに相談したところ,敷金等の支給要件に該当しないので,転居する場合は,自費転居になると言われました。

 そこで,敷金・礼金無しの「ゼロゼロ物件」への転居を考えていますが,ゼロゼロ物件への転居にあたって,デメリットなどの注意すべき点がありましたら 教えてください。

 

 

【答】

 ご存じのとおり,「ゼロゼロ物件」とは,敷金・礼金の両方が0円の物件のことで,1988年頃に東京の大手不動産業者が始めたことがきっかけで広まったサービスのようです。

 人口減少により,賃貸物件が供給過剰気味になっていることや,インターネットで物件を手軽に検索できること等から,賃貸物件の競争率が上がり,ゼロゼロ物件は増加傾向にあります。

 敷金・礼金が0円で,初期費用を大幅に削減できるため,入居しやすい物件として人気を集めていますが,デメリットもあるので,注意が必要です。

 

 デメリットとしては,まず,物件数が少ないため、物件の選択の幅が狭くなります。 次に、敷金と礼金は0円であっても,初期費用としては,この他に 仲介手数料や 保証会社の保証料,火災保険料などが必要となりますが, 仲介手数料や 保証会社の保証料,火災保険料については,敷金等の支給要件に該当する場合でないと,福祉事務所から支給することはできず,敷金等の支給要件に該当しないときは、自己負担になります(なお,契約更新時には,福祉事務所に申請すれば,保証会社の保証料や 火災保険料、契約更新料は支給されます。)

 

 また,ゼロゼロ物件については,鍵の交換代(2万円程度)を請求されることがありますが,鍵の交換代は,本来,賃貸人(家主)が負担すべきものですから,通常の賃貸物件であっても,ゼロゼロ物件であっても,福祉事務所から支給することはできず,自己負担になります。

 

 次に,ゼロゼロ物件については,短期解約違約金が発生するケースがあります。 短期解約違約金とは,例えば,「賃借人は,入居から1年未満の解約の場合は 家賃の2か月分,1年以上2年未満の解約の場合は 家賃の1か月分違約金として支払う」といった内容のものです。

 短期解約違約金は,福祉事務所から支給することはできないため,自己負担になります。

 

 次に,ゼロゼロ物件については,敷金が0円のため,退去時に 部屋の清掃代等を請求されることがありますが,退去時の部屋の清掃代等については,敷金が0円や少額の場合で 一定の条件を満たすときは,福祉事務所から 住宅維持費として支給されます(次の参考資料の「別冊問答集」の「問7-117 賃貸家屋からの転出にあたり原状回復費用の請求を受けた場合」を参照してください。)

 

 この他に,ゼロゼロ物件については,敷金が0円のため,家賃を滞納した際に厳しい対応をされたり,退去予告期間が通常(30日)よりも長かったり,家賃や保証会社の保証料が高かったりすることがありますので,契約前に賃貸借契約書をよく読んで,このようなデメリット等も考慮した上で 契約するようにしてください。

 

 

 

(参考)

○生活保護手帳・別冊問答集

 問7-117 賃貸家屋からの転出にあたり原状回復費用の請求を受けた場合

(問)

 アパート等賃貸家屋に入居していた被保護者が転出に当たり,賃貸借契約に基づき賃貸人から原状回復費用の請求を受けた場合,その費用を住宅維持費をもって支弁することができるか。

 

(答)

 アパート等賃貸家屋の原状回復についての費用は契約時に支払った敷金(名称の異なる同様の趣旨のものを含む)で賄うべきものである。 すなわち,住宅維持費として対応が必要な需要について,あらかじめ敷金として支払っていると解することができる。 このため,改めて住宅維持費を適用することはできない。

 ただし,契約時において敷金を支払っておらず(入居時に局第7の4の(1)のカにより礼金・手数料等は支給しているが,敷金を支給していない場合を含む。),又は 支払った敷金が著しく低額であることにより,転出時に原状回復費用を請求された場合については,次のいずれにも該当する場合に限り,必要最小限度の額を住宅維持費として認定して差し支えない。

 認定額については,局第7の4の(2)のアに定める額の範囲内であり,かつ,局第7の4の(1)のカに定める額(入居時に局第7の4の(1)のカにより 敷金・礼金・手数料等を支給している場合は,すでに支弁した敷金・礼金・手数料等の額を除いた額)を上回らない額とする。

 

(1) 原状回復の範囲が,社会通念上,真にやむを得ないと認められる範囲であること

 (なお,通常損耗や経年劣化に関しては賃貸人の費用負担により修繕すべきものであり,住宅維持費を適用することはできないことに留意)

 

(2) 故意・重過失により毀損した部分の修繕ではないこと