【問】賃貸借契約の保証人は,家主が同意しないと辞められないのですか。

 

 私が住んでいるアパートの賃貸借契約の保証人には,友人になってもらっていますが,その友人から 保証人を辞めたいとの相談がありました。

 しかし,家主が 私の友人が保証人を辞めることに同意していません。 どうしたらよいのか,教えてください。

 

 

 

【答】

 「保証人とは,特定の債務を履行すべき債務者(これを「主債務者」という。)が債務を履行しなかった場合に,主債務者に代わって 債務を履行する義務を負担することについて,債権者(賃貸人)との間で 契約(これを「保証契約」という。)する者をいい,アパートの賃貸借契約の場合は,主債務者は 賃借人,債権者は 賃貸人(家主)ということになります。

 

 つまり,賃貸住宅の保証契約は,賃借人と保証人との間の契約ではなく,基本的には 賃貸人(家主)と保証人との間の契約ですので,一度 保証人を引き受けると,保証人を辞めたいと言っても,賃貸人(家主)が 保証人を辞めることに同意しない限り,簡単には保証人を辞めることはできないこととなっています。

 

 保証人を辞めるためには,保証人が賃借人に相談し,現在の保証人と同等以上の保証能力がある人に 新たに保証人になってもらうこと(保証人を変更すること),又は 保証人の代わりに 家賃保証会社を付けることについて,賃貸人や不動産管理会社の同意を得る必要があります。

 

 また,保証人の場合は,債務者(賃借人)が家賃を支払わないときに請求されますが,連帯保証人の場合は,賃借人(家主)は,賃借人と連帯保証人のどちらにでも家賃の支払いを請求することができるため(このことを,連帯保証人には 催告の抗弁権(民法第452条)がないと言います。),保証人と比べて 連帯保証人の責務は 格段に重くなっていますので,注意が必要です。

 

 このことを知らずに 安易に保証人や連帯保証人を引き受ける人がいるようですが,一度 保証人や連帯保証人を引き受けると,賃貸人(家主)が同意しない限り,保証人や連帯保証人を辞めることができないため,親や子などの信頼できる人以外の保証人・連帯保証人にはなるべきではないと思います(兄弟姉妹でも信頼できない場合は,保証人・連帯保証人を引き受けるべきではありません。)。

 

 そのため,連帯保証人の責任があまりにも大きく,連帯保証人のなり手がいないことから,近年は 家賃保証会社を利用する形が増えてきていますし,令和2年4月から施行された改正民法では,賃貸借契約時に連帯保証人の保証額の限度額を明記することが義務づけられています。

 

 また,本来,家賃保証会社の保証を付ければ,保証人や連帯保証人を付ける必要はないと思いますが,地域によっては,保証人(又は連帯保証人)と家賃保証会社による保証の両方を求めるところもあるようです。

 

 しかし,親や兄弟姉妹が高齢になったり,子どもがいないため,保証人や連帯保証人になってくれる人がいない世帯も増えてきていますので,あなたが,友人に代わる 別の保証人が見つけることができないときは,保証人の代わりに 家賃保証会社の保証を付ける方向で,不動産管理会社や家主と話し合ってみてはどうでしょうか。

 

 日本では 人口が減少してきており,今後も 人口減少が見込まれるため,地域によっては,賃貸物件の空室が増加していますので,不動産管理会社や家主との話し合い次第では,家賃保証会社の保証を付ければ,保証人や連帯保証人を付けなくてもよい可能性があると思います。