【問】老齢年金を遡及受給した場合は,生活保護開始前の年金分も含めて,保護費を返還しなければならないのですか?

 

 私は,老齢年金の受給資格があることを知らずに 生活保護を受け,役所の担当者の調査により,老齢年金の受給資格があることが分かり,老齢年金の申請を行った結果,生活保護受給開始日より前に遡って 老齢年金の受給を開始しましたが,役所の担当者から,生活保護開始前の年金分も含めて,保護費を返還するように言われました。

 生活保護開始後の年金分の保護費を返還するのならば分かるのですが,どうして生活保護開始の年金分を含めて,保護費を返還する必要があるのでしょうか。

 

 

【答】

 あなたが疑問に思うことも分かりますが,厚生労働省の通知では,生活保護開始前の年金分も含めて,保護費を返還することとされています。

 

 これの理由は,「生活保護手帳・別冊問答集」の「問13-6 費用返還と資力の発生時点」において,「障害基礎年金等が裁定請求の遅れや障害認定の遅れ等によって遡及して支給されることとなった場合,法第63条に基づく費用返還請求の対象となる資力の発生時点は,いつと考えるべきか。」という問いに対して,その答えは,「国民年金法第18条によると,年金給付の支給は『支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から』支給されることとなっているが,被保険者の裁定請求が遅れたり,又は裁定に日時を要した場合,既往分の年金が一括して支給されることになる。 つまり,年金受給権は,裁定請求の有無にかかわらず,年金支給事由が生じた日に当然に発生していたものとされている。 したがって,この場合,年金受給権が生じた日から法第63条の返還額決定の対象となる資力が発生したものとして取り扱うこととなる。 このように,日本年金機構へ裁定請求した日又は裁定があった日を資力の発生時点として取り扱わないので,受給権が発生しているにもかかわらず,本人が裁定請求を遅らせる等 悪意的要素によって資力の発生時点を変えることはできないこととなる。 なお,上記により資力の発生時点が保護の開始前となる場合でも,返還額決定の対象を 開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定することのないよう留意すること。」となっているからです。

 

 つまり,例えば,あなたが,老齢年金の受給資格があることを知らずに,令和5年5月10日から生活保護を受け,役所の担当者の調査により,老齢年金の受給資格があることが分かり,令和5年6月25日に老齢年金の裁定請求手続きを行った結果,令和5年10月15日に,令和3年3月分から令和5年7月分の老齢年金を遡及して受給した場合は,生活保護受給開始前の令和3年3月分から令和5年7月分の老齢年金の遡及受給分に相当する保護費については,生活保護法第63条により返還を求められます。

 

 これは,あなたが,令和5年5月10日の生活保護受給開始日において,令和3年3月(老齢年金の遡及支給開始月)から老齢年金の受給権という資力を持っていたにも関わらず,その資力(老齢年金の受給権)が すぐには具体化(現金化)できずに生活に困窮し,生活保護を受けたので,その資力(老齢年金の受給権)が具体化した時点(実際に受給した時点)で,生活保護開始日以降に支給された保護費の範囲内で,その資力令和3年3月分から令和5年7月分までの老齢年金額に相当する保護費を返還する必要があるという考え方によるためです。

 上記の厚生労働省の考え方に対しては,専門家による批判もありますが,裁判所は,現在のところ,厚生労働省の この考え方を容認しています。

 

 また,「生活保護手帳・別冊問答集」の問13-6の答のなお書きにおいて,「なお,上記により資力の発生時点が保護の開始前となる場合でも,返還額決定の対象を 開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定することのないよう留意すること。」とされていますので,生活保護開始後の年金分だけでなく,生活保護開始前の年金分を含めて,保護費を返還する必要があるということになっています。

 

 しかしながら,「生活保護手帳・別冊問答集」の「問13-5 法第63条に基づく返還額の決定」において,「災害等による補償金を受領した場合,年金を遡及して受給した場合における法第63条に基づく返還額の決定に当たって,その一部又は全部の返還を免除することは考えられるか。」という問いに対して,その答えは,「法第63条は本来,資力はあるが,これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある場合にとりあえず保護を行い,資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で,既に支給した保護金品との調整を図ろうとするものである。 したがって,原則として当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべきである。 しかしながら,保護金品の全額を返還額とすることが,当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるような場合については,次の範囲において,それぞれの額を本来の要返還額から控除して返還額を決定する取扱いとして差し支えない。」とされていますので,この控除(自立更生費)が認められ,返還額が減額される可能性があります。

 

 ところが一方で,厚生労働省は,会計検査院の指摘を受け,平成24年7月23日生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」(社援保発0723第1号)という通知を出しました。

 その通知では,(2)遡及して受給した年金収入にかかる自立更生費の取扱いについてにおいて,次のとおり記載されています。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

〇生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて

  (平成24年7月23日付,社援保発0723第1号)

 

(2)遡及して受給した年金収入にかかる自立更生費の取扱いについて

 年金を遡及して受給した場合の返還金から自立更生費等を控除することについては,定期的に支給される年金の受給額の全額が収入認定されることとの公平性を考慮すると,上記(1)(注:年金の遡及受給以外の収入)と同様の考え方で自立更生費等を控除するのではなく,厳格に対応することが求められる。

 そのため,遡及して受給した年金収入については,次のように取扱うこと。

(ア)保護の実施機関は,被保護世帯が年金の裁定請求を行うに当たり,遡及して年金を受給した場合は,以下の取扱いを説明しておくこと。

  ① 資力の発生時点によっては,法第63条に基づく費用返還の必要が生じること

  ② 当該費用返還額は,原則として全額となること

  ③ 真にやむを得ない理由により控除を認める場合があるが,事前に保護の実施機関に相談することが必要であり,事後の相談は,傷病や疾病などの健康上の理由や災害など本人の責めによらないやむを得ない事由がない限り認められないこと

(イ)原則として遡及受給した年金収入は全額返還対象となるとした趣旨を踏まえ,当該世帯から事前に相談のあった,真にやむを得ない理由により控除する費用については,保護の実施機関として慎重に必要性を検討すること。

(ウ)  (略)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 当時,私たちケースワーカーは,この通知が出たので,「生活保護手帳・別冊問答集」「問13-5 法第63条に基づく返還額の決定」は削除されると思っていましたが,不思議なことに,この「問13-5 法第63条に基づく返還額の決定」は,改正されずに,そのまま残りました。

 

 そこで,ケースワーカーの中には,上記の「生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて」(平成24年7月23日付,社援保発0723第1号)に基づき,年金を遡及受給した場合は,原則として自立更生費は認められないと考える人がいますが, 年金を遡及受給した場合であっても,「真にやむを得ない理由」があるときは,自立更生費を認めることができますので,必ず本人に自立更生費について十分に説明し(説明義務),必ず本人から自立更生費の要望について聴取し(調査義務),保護費の全額を返還額とすることが,当該世帯の自立を著しく阻害しないか否か等について,ケース診断会議等において十分に組織的に検討する必要があります(検討義務)。

 

 それにもかかわらず,ケースワーカーの中には,本人に自立更生費について十分に説明しなかったり,本人から自立更生費の要望について聴取しなかったり,保護費の全額を返還額とすることが,当該世帯の自立を著しく阻害しないか否か等について,ケース診断会議等において十分に検討せずに,返還額を決定したりする人が 本当に多いのです。

 

 その理由は,本人に自立更生費について説明したり,本人から自立更生費の要望について聴取したりしたときは,自立更生費の要望が出されることが多く,その場合は,ケース診断会議等において,自立更生費の必要性等について検討しなければならないので,それを面倒に思うケースワーカーが多いからです。

 

 そして,役所が,あなたが 遡及して受給した年金に相当する額の保護費の全額を返還額とすることが,当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるか否かについて,十分に検討せずに 返還額を決定した場合は,役所の裁量権の逸脱又は濫用として返還処分が取り消された判決や 都道府県知事裁決が,過去に多数ありますので,役所の担当者に家電製品の買換え費用などの自立更生費を認めるよう要望し,返還額の減額について交渉しましょう。

 

 生活保護上は,家電製品等が壊れた場合は,その修理費や買換え費用は,生活保護費をやり繰りして捻出することになっていますが, 夏場にエアコンや冷蔵庫等が壊れたときは,すぐに修理したり 買換えないと,熱中症等になり 健康を害する恐れがありますので,エアコンや冷蔵庫等の修理費や買換え費用は,上記の「真にやむを得ない理由」に該当すると思われます。

 

 仮に役所が自立更生費を認めないときは,法テラスを通じて生活保護制度に詳しい弁護士に依頼し,まず個人情報保護条例に基づき,あなたのケース記録やケース診断会議の議事録などの開示請求を行うとともに,都道府県知事に審査請求を行い,役所が 自立更生費の必要性について十分に検討を行ったか否か,また,役所が 自立更生費を認めなかった理由が妥当であるか否か等について,役所と争いましょう。

 弁護士に依頼すれば,審査請求書の作成等については,弁護士が対応してくれますので,あなたは何も心配する必要はありません。

 

 なお,このブログの6月15日の記事「生活保護と年金受給」についても,合わせてお読みください。

 

 

 

(参考)

〇生活保護手帳・別冊問答集

 問13-6 費用返還と資力の発生時点

(問)

 次の場合,法第63条に基づく費用返還請求の対象となる資力の発生時点は,い つと考えるべきか。

(1)障害基礎年金等が裁定請求の遅れや障害認定の遅れ等によって遡及して支給されることとなった場合

(2)~(6)  (略)

 

(答)

(1)国民年金法第18条によると,年金給付の支給は「支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から」支給されることとなっているが,被保険者の裁定請求が遅れたり,又は裁定に日時を要した場合,既往分の年金が一括して支給されることになる。つまり,年金受給権は,裁定請求の有無にかかわらず,年金支給事由が生じた日に当然に発生していたものとされている。したがって,この場合,年金受給権が生じた日から法第63条の返還額決定の対象となる資力が発生したものとして取り扱うこととなる。

 このように,日本年金機構へ裁定請求した日又は裁定があった日を資力の発生時点として取り扱わないので,受給権が発生しているにもかかわらず本人が裁定請求を遅らせる等悪意的要素によって資力の発生時点を変えることはできないこととなる。

なお,上記により資力の発生時点が保護の開始前となる場合でも,返還額決定の対象を開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定することのないよう留意すること

(2)~(6)  (略)

 

 

 

問13-5 法第63条に基づく返還額の決定

(問)

 災害等による補償金を受領した場合,年金を遡及して受給した場合における法第63条に基づく返還額の決定に当たって,その一部又は全部の返還を免除することは考えられるか。

 

(答)

(1)法第63条は本来,資力はあるが,これが直ちに最低生活のために活用できない事情にある場合にとりあえず保護を行い,資力が換金されるなど最低生活に充当できるようになった段階で既に支給した保護金品との調整を図ろうとするものである。

 したがって,原則として当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべきである

 

(2)しかしながら,保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるような場合については,次の範囲においてそれぞれの額を本来の要返還額から控除して返還額を決定する取扱いとして差し支えない

 なお,次第8の3の(5)に該当する必要経費については,当該収入から必要な最小限度の額を控除できるものである。

 ア 盗難等の不可抗力による消失した額。(事実が証明されるものに限る。)

 イ 家屋補修,生業等の一時的な経費であって,保護(変更)の申請があれば保護費の支給を行うと実施機関が判断する範囲のものにあてられた額。(保護基準額以内の額に限る。)

 ウ 当該収入が,次第8の3の(3)に該当するものにあっては,課第8の40の認定基準に基づき実施機関が認めた額。(事前に実施機関に相談があったものに限る。 ただし,事後に相談があったことについて真にやむを得ない事情が認められるものについては,挙証資料によって確認できるものに限り同様に取り扱って差し支えない。)

 エ 当該世帯の自立更生のためのやむを得ない用途にあてられたものであって,地域住民との均衡を考慮し,社会通念上容認される程度として実施機関が認めた額。

 なお,次のようなものは自立更生の範囲には含まれないものである。

  ① いわゆる浪費した額

  ② 贈与等により当該世帯以外のためにあてられた額

  ③ 保有が容認されない物品等の購入のためにあてられた額

 オ 当該収入があったことを契機に世帯が保護から脱却する場合にあっては,今後の生活設計等から判断して当該世帯の自立更生のために真に必要と実施機関が認めた額。

 

(3)返還額の決定は,担当職員の判断で安易に行うことなく,法第80条による返還免除の決定の場合と同様に,そのような決定を適当とする事情を具体的かつ明確にした上で実施機関の意思決定として行うこと

 なお,上記のオに該当するものについては,当該世帯に対してその趣旨を十分説明するとともに,短期間で再度保護を要することとならないよう必要な生活指導を徹底すること。

 

 

 

(厚生労働省 保護課長通知)

                            社援保発0723第1号

                              平成24年7月23日

 

   都道府県

 各 指定都市 民生主管部(局)長 殿

   中  核  市

 

                    厚生労働省社会・援護局保護課長

 

 

      生活保護費の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについて

 

 生活保護行政の推進については,平素から格段の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。

 生活保護制度は,生活保護法(昭和25年法律第144号。以下「法」という。)第4条に基づき,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生話の維持のために活用することを要件としていますが,急迫の場合や資力はあるものの直ちに活用できない事情がある場合は適用され得るものです。

 ただし,資力があることを確認した際は,当該被保護者に対して,資力の発生時期に遡って法第63 条に基づき費用返還を求め,加えて法第77 条の2第1項に基づき法第63 条の保護の実施機関の定める額の全部又は一部を徴収することができるとしています。

 また,不実の申請その他不正な手段により保護を受けた者,又は受けさせた者に対しては,法第78条に基づく費用徴収を行うこととしています。

 本制度は,支援が必要な人に確実に保護を実施する必要があると同時に,不正事案については,全額公費によってその財源が賄われていることに鑑みれば制度に対する国民の信頼を揺るがす極めて深刻な問題であるため,厳正な対処が必要です。

 このため,保護費及び就労自立給付金の費用返還及び費用徴収決定の取扱いについては,下記の事項に留意の上,適正かつ厳格な処理に当たられるよう管内保護の実施機関に対し周知徹底いただくようお願いします。

 

 

1 法第63条に基づく費用返還の取扱いについて

(1)返還対象額について

 法第63条に基づく費用返還については,原則,全額を返還対象とすること。

 ただし,全額を返還対象とすることによって当該被保護世帯の自立が著しく阻害されると認められる場合は,次に定める範囲の額を返還額から控除して差し支えない。

 なお,返還額から控除する額の認定に当たっては,認定に当たっての保護の実施機関の判断を明確にするため,別添1の様式を活用されたい。

 ① 本人が十分注意を払っていたにもかかわらず盗難等の不可抗力により消失した額であって,警察にも遺失届が出されており,消失が不可抗力であることを確実に証明できる場合。

 ② 家屋補修,生業等の一時的な経費であって,保護(変更)の申請があれば保護費の支給が認められると保護の実施機関が判断する範囲のものに充てられた額。(保護基準額以内の額に限る。)

 ③ 当該収入が,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)第8の3の(3)(注:災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金,保険金又は見舞金のうち自立更生のために当てられる額など)に該当するものにあっては,「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日社保第34号 厚生省社会局保護課長通知)第8の40の認定基準に基づき,保護の実施機関が認めた額。(事前に実施機関に相談があったものに限る。ただし,事後に相談があったことについて真にやむを得ない事情が認められるものについては,挙証資料によって確認できるものに限り同様に取り扱って差しつかえない。)

 ④ 当該世帯の自立更生のためのやむを得ない用途に充てられたものであって,地域住民との均衡を考慮し,社会通念上容認される程度として保護の実施機関が認めた額。

 ただし,以下の使途は自立更生の範囲には含まれない。

 (ア)いわゆる浪費した額(当該収入を得たことを保護の実施機関に届け出ないまま費消した場合を含む)

 (イ)贈与等により当該世帯以外のために充てられた額

 (ウ)保有が容認されない物品等の購入のために充てられた額

 (エ)保護開始前の債務に対する弁済のために充てられた額

 ⑤ ④にかかわらず,遡及して受給した年金については,(2)により取扱うこと。

 ⑥ 当該収入があったことを契機に世帯が保護から脱却する場合であっては,今後の生活設計等から判断して当該世帯の自立更生のために真に必要と保護の実施機関が認めた額。この場合,当該世帯に対してその趣旨を十分説明するとともに,短期間で再度保護を要することとならないよう必要な生活指導を徹底すること。

 なお,「当該収入があったことを契機に世帯が保護から脱却する場合」とは,当該収入から過去に支給した保護費相当額を返還した上でなお残額があり,その残額により今後相当期間生活することが可能であると見込まれる場合や,残額がない場合であっても当該収入を得ると同時に定期的収入等が得られるようになった場合をいう。

 そのため,当該収入に対して保護費の返還を求めないことと同時に,専ら当該世帯の今後の生活費用全般に充てることを「自立更生」に当たるものとする取扱いは認められないので留意すること。

 

(2)遡及して受給した年金収入にかかる自立更生費の取扱いについて

 年金を遡及して受給した場合の返還金から自立更生費等を控除することについては,定期的に支給される年金の受給額の全額が収入認定されることとの公平性を考慮すると,上記(1)と同様の考え方で自立更生費等を控除するのではなく,厳格に対応することが求められる。

 そのため,遡及して受給した年金収入については,次のように取扱うこと。

 (ア)保護の実施機関は,被保護世帯が年金の裁定請求を行うに当たり,遡及して年金を受給した場合は,以下の取扱いを説明しておくこと。

  ① 資力の発生時点によっては,法第63条に基づく費用返還の必要が生じること

  ② 当該費用返還額は,原則として全額となること

  ③ 真にやむを得ない理由により控除を認める場合があるが,事前に保護の実施機関に相談することが必要であり,事後の相談は,傷病や疾病などの健康上の理由や災害など本人の責めによらないやむを得ない事由がない限り認められないこと

 (イ)原則として遡及受給した年金収入は全額返還対象となるとした趣旨を踏まえ,当該世帯から事前に相談のあった,真にやむを得ない理由により控除する費用については,保護の実施機関として慎重に必要性を検討すること。

 (ウ)資力の発生時点は,年金受給権発生日であり,裁定請求日又は年金受給日ではないことに留意すること。また,年金受給権発生日が保護開始前となる場合,返還額決定の対象を開始時以降の支払月と対応する遡及分の年金額に限定するのではなく,既に支給した保護費の額の範囲内で受給額の全額を対象とすること。

 

  (以下,省略)