【問】私は 病院を退院し,アパートで生活するので,冷蔵庫や洗濯機等を購入する必要がありますが,家具什器費の上限額の35,800円では足りません。 何か方法はありませんか。

 

 私は 近いうちに病院を退院し,アパートを借りる予定であり,冷蔵庫や洗濯機,暖房器具等を持ってないので購入する必要がありますが,担当ケースワーカーから,これらの家電製品等の購入費(家具什器費)の上限額は 35,800円と言われています。

 しかし,35,800円では新品ではなく,中古の冷蔵庫と洗濯機の2点しか買えませんが,何か方法はありませんか。

 

 

【答】

 家具什器費の上限額は 35,800円(令和7年度)すが,あなたの場合は,家具什器費の特別基準の 57,000円(令和7年度)が認められると思います。

 その理由は,真にやむを得ない事情により,35,800円により難いと認められるときは,57,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして家具什器を支給して差し支えないことされているからです。

 

 家具什器費の支給が認められる条件は,次のとおりとされています。

 

 ① 保護開始時において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき

 

  単身の被保護世帯であり,当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し,新たに単身で居住を始める場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき

 

  災害に遭い災害救助法第4条の救助が行われない場合において,当該地方公共団体等の救護をもってしては,災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき

 

  転居の場合であって,新旧住居の設備の相異により,現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず,最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき(例: 旧住居が都市ガスで、新住居がプロパンガスの場合で、都市ガス用のガスコンロが使用できないときなど)

 

  犯罪等により被害を受け,又は 同一世帯に属する者から暴力を受け,生命及び身体の安全の確保を図るために 新たに借家等に転居する場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき

 

 上記の②,③及び⑤においては,①及び④とは異なり,家具什器を全く保有してないことが多く,その大部分は,通常の上限額の35,800円では足りないため,「真にやむを得ない事情により,35,800円により難いと認められるとき」に該当する可能性が高いことから,特別基準の57,000円が認められると思います。

 

 また,「別冊問答集」「問7-43 家具什器費における実施機関限りの特別基準設定について」において,「局第7の2の(6)のアのなお書にいう『真にやむを得ない事情』とは,どのような事情が考えられるか。」という【問】に対して,「例えば,災害にあい家具の大部分を失った場合や,長期間入院していた単身者が,退院して新たに自活するに際し,全く家具什器を所持していない場合などが考えられる。」と答えています。

 

 しかし,福祉事務所は,通常では,特別基準の57,000円を認めることは少ないのですが,上記の②,③及び⑤などにおいて,家具什器を全く保有してないときは,特別基準の57,000円が認められるべきではないか,と強く主張しましょう。

 

 例えば、宮城県埼玉県では,家具什器費の特別基準額までの支給を求めて 審査請求が行われ,次の参考資料のとおり,両県とも被保護者の審査請求が認められていますので,もし特別基準の57,000円が認められないときは,都道府県知事へ審査請求を行いましょう。

 

 また,「暖房器具」については,上記の①~⑤のいずれかに該当した場合であって,それ以降,初めて到来する冬季加算が認定される月(11月)において,最低生活に直接必要な暖房器具の持ち合わせがないときは上記の上限額 35,800円の家具什器費とは別に暖房器具の購入に要する費用について,29,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこととされています。

 

 さらに,「冷房器具(エアコン等)」については,上記の①~⑤のいずれかに該当し,世帯員に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって,それ以降,初めて到来する熱中症予防が必要となる時期(6月~7月)を迎えるに当たり,最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく,真にやむを得ないと実施機関が認めたときは,上記の上限額 35,800円の家具什器費とは別に,冷房器具の購入に要する費用について,73,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこととされています。

 なお,エアコン購入費の支給については,このブログの8月8日の記事「生活保護とエアコン」を参考にしてください。

 

 次に,「家具什器費として認められるものは,主に炊事用具,食器等ですが,例えば,電化製品(電子レンジ, 冷蔵庫, 洗濯機, 炊飯器, 電気ポット, 掃除機, 照明器具等), カーテンなどが該当するとされています(なお,冷蔵庫や洗濯機等の自分では運べないような大型家電製品の運搬費も,家具什器費に含まれます。)。

 

 また,家具什器費として認められないものは,娯楽性のあるものや 消耗品等であり,例えば,電化製品のうち,テレビ, ラジオ, ゲーム機など娯楽性のあるものや,食料品, 衣類, 消耗品(掃除用具, シャンプー, リンス, 洗剤,トイレットペーパー等), ソファ, カーペットなどとされていますので,家具什器費に該当するか否かについては,念のために担当ケースワーカーに事前に相談しましょう。

 

 

 

(参考)

局長通知

 第7-2-(6)  家具什器費(令和7年度

 ア 炊事用具,食器等の家具什器

 被保護世帯が次の(ア)から(オ)までのいずれかの場合に該当し,次官通知第7に定めるところによって判断した結果,炊事用具,食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは,35,800円の範囲内において特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。

 なお真にやむを得ない事情により,この額により難いと認められるときは,57,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして家具什器(イ及びウを除く。)を支給して差し支えないこと。

 

(ア)保護開始時において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。

 

(イ)単身の被保護世帯であり,当該単身者が長期入院・入所後に退院・退所し,新たに単身で居住を始める場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。

 

(ウ)災害にあい,災害救助法第4条の救助が行われない場合において,当該地方公共団体等の救護をもってしては,災害により失った最低生活に直接必要な家具什器をまかなうことができないとき。

 

(エ)転居の場合であって,新旧住居の設備の相異により,現に所有している最低生活に直接必要な家具什器を使用することができず,最低生活に直接必要な家具什器を補填しなければならない事情が認められるとき。

 

(オ)犯罪等により被害を受け,又は同一世帯に属する者から暴力を受け,生命及び身体の安全の確保を図るために新たに借家等に転居する場合において,最低生活に直接必要な家具什器の持合せがないとき。

 

 イ 暖房器具

 被保護世帯がアのア)から(オ)までのいずれかに該当した場合であって,それ以降,初めて到来する冬季加算が認定される月において,最低生活に直接必要な暖房器具の持ち合わせがないときは,暖房器具の購入に要する費用について,29,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと。

 なお,被保護世帯が居住する地域の気候条件や住宅設備の状況等により,FF式又は煙突式等の暖房器具を購入する必要がある場合など,暖房器具の購入に要する費用が29,000円をこえることが,真にやむを得ないと実施機関が認めたときは,暖房器具の購入に要する費用について,73,000円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと。

 

 ウ 冷房器具

 被保護世帯がアの(ア)から(オ)までのいずれかに該当し,当該被保護世帯に属する被保護者に熱中症予防が特に必要とされる者がいる場合であって,それ以降,初めて到来する熱中症予防が必要となる時期を迎えるに当たり,最低生活に直接必要な冷房器具の持ち合わせがなく,真にやむを得ないと実施機関が認めたときは,冷房器具の購入に要する費用について,73,000の範囲内において,特別基準の設定があったものとして必要な額を認定して差し支えないこと。

 

 エ 支給方法

 アからウまでの場合においては,収入充当順位にかかわりなく,現物給付の方法によること。

 ただし,現物給付の方法によることが適当でないと認められるときは,金銭給付の方法によっても差し支えないこと。

 なお,これらの家具什器の購入に際して設置費用が別途必要な場合であって,真にやむを得ないと実施機関が認めたときは,アからウまでとは別に 特別基準の設定があったものとして,当該家具什器の設置に必要な最小限度の額を設定して差し支えないこと。

 

 

 

○保護課長通知

 問(第7の99)

 局長通知第7の2の6のイの「暖房器具」の支給に当たり、暖房機能に加えて、冷房機能を有する器具の購入を認めてよいか。

 

 

 お見込みのとおり取り扱って差し支えない。

 この場合の特別基準の額については、局長通知第7の2の6のウの「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる世帯に該当する場合は、局長通知第7の2の6のウに定める額の範囲内とし、「熱中症予防が、特に必要とされる者」がいる世帯に該当しない場合は、局長通知第7の2の6のイに定める低い額の範囲内とすること。

 また、局長通知第7の2の6のウの「冷房器具」の支給に当たっても、冷房機能に加えて、暖房機能を有する器具の購入を認めて差し支えない。

 なお、冷房器具と暖房器具のいずれも所持していない「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる世帯については、両方の機能を有するものを購入するよう勧奨されたい。

 

 

 問(第7の100)

 局長通知第7の2の6のウの「熱中症予防が特に必要とされる者」とは、どのような者が 該当するのか。

 

 答

 体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者 並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。

 

 

 問(第7の101)

 局長通知第7の2の6のウに「熱中症予防が必要となる時期」とあるが、必要となる時期はどのように判断すればよいか。

 

 答

 保護の実施機関において、被保護者が居住する 地域の気温の状況、被保護者の健康状態や、都道 府県衛生主管部局等における熱中症予防に関する注意喚起の状況等を総合的に勘案の上、判断され たい。

 

 

 

○生活保護・別冊問答集

問7-43 家具什器費における実施機関限りの特別基準設定について

(問)

 局第7の2の(6)のアのなお書にいう「真にやむを得ない事情」とは,どのような事情が考えられるか。

 

(答)

 例えば,災害にあい家具の大部分を失った場合や,長期間入院していた単身者が,退院して新たに自活するに際し,全く家具什器を所持していない場合などが考えられる。

 家具什器費の認定に当たっては,地域における低所得世帯の生活実態,当琴世帯人員の状況等からみて,最低生活に必要な最小限度の家具什器の程度を的確にとらえるとともに,例えば,罹災世帯であれば消失の程度,他からの援助の有無等を十分調査検討の上取り扱う必要がある。

 

 

 

問7-45 家具什器費の支給対象品目

(問)

 保護開始時,長期入院・入所後の退院・退所時等において,冷蔵庫・電子レンジ等の保護受給中に保有が容認される物品を保有していない場合,これらの物品を家具什器費の支給対象としてよいか。

 

(答)

 日常生活に必要な物品については,本来,経常的な生活費の範囲内で,計画的に購入すべきである。

 冷蔵庫,電子レンジ等保護受給中に保有が容認される物品を保護開始時に保有していなければ,一時扶助の支給基準である「最低生活に必要な物品を欠いていると認められる場合であって,それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合」に該当するか否かを個々の世帯の状況に応じて判断し,その結果,必要性および緊急性が認められる場合には,家具什器費を認定して差し支えない。

 なお,必要性および緊急性が認められない場合には経常的な生活費の中から順次 購入していけば足りるものであり,家具什器費を認定することは適当でない。

 

 

 

〇家具什器費の支給申請却下処分に対する審査請求に係る県知事裁決

・宮城県知事裁決(平成23年6月2日)

 当該家具什器は,健康で文化的な最低限度の生活水準の維持,また憲法で保障されて個人のプライバシー保護のために必要な物であり,社会生活を営む上で基礎的かつ緊急性が認められる物と認められるから,特別基準(40,500円)を設定すべき

 

 

・埼玉県知事裁決(平成25年10月29日)

 処分庁は請求人が保護申請前にすでに居宅生活をしていたことから,当該特別基準を認定すべき「真にやむを得ない事情」はないとするが,請求人に譲与された家具什器は日常生活に必要なものの一部であり,特別基準の適用が不要であるとは言えない

 

 

  裁  決  書 (埼玉県知事)

 

 

                審査請求人   ○○○○○○○○             

 

                審査請求代理人 ○○○○○○○○           

 

                処分庁     ○○○○○○○○           

 

 

 上記審査請求人(以下「請求人」という。) から平成25年8月12日付けで提起された,処分庁が○○○○○○○○付けで行った生活保護変更決定処分(以下「本件処分」という。)に係る審査請求(以下「本件審査請求」という。)については,次のとおり裁決する。

 

                主   文

 

 本件処分について,却下した部分はこれを取り消す。

 

                理   由

 

第1 審査請求の趣旨及び理由

 本件審査請求の趣旨及び理由は次のとおりであり,本件処分は違法又は不当であると主張しているものと解される。

 

1 審査請求の趣旨

 本件審査請求の趣旨は,下請求人の行った家具什器の保護変更申請について,却下された部分を取り消し,特別基準での支給を求めるというものである。

 

2 審査請求の理由

 審査請求の理由の要旨は次のとおりである。

 

 生活保護申請時に家具什器等を何も持っていない者は,特別基準の金額内で生活に必要なものを購入できる,との規定がある。請求人はまさにその事例に該当する。

 処分庁のケースワーカーが請求人宅を訪問し,請求人が○○○○○○○○などを何も持っていないことを確認している。

 また,処分庁の指示どおり,事前に見積りを処分庁に届け,保護決定まで待って購入を行った。

 

 

第2 処分庁の主張

 処分庁は弁明書により本件審査請求の棄却を求めており.その理由の要旨は,次 のとおりである。

 

 被保護者は,経常的最低生活費の範囲内で通常予測される生活需要についてすべて賄うことが原則となる。 しかし,予想外の事故や生活の場の転換に際し,最低生  活に必要不可欠な物資を欠き,それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合に限り,臨時的最低生活費を認定するものである。

 家具什器費については,「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知。以下「局長通知」という。)第7-2-(6)に規定されている。 被保護者が炊事用具,食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは,24,900円の範囲内で特別基準の設定があったものとして家具什器費を支給できるとされている。 さらに,真にやむを得ない事情により,この額により難いと認められるときは,39,900円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして家具什器費を支給できるとされている。 別冊問答集問第7-43では,この「真にやむを得ない事情」とは,災害にあい家具の大部分を失った場合や,長期間入院していた単身者が,退院して新たに自活するに際し,全く家具什器を所持していない場合であるとしている。 そして,世帯状況から最低生活に必要な最小限度の家具什器の程度を的確にとらえるとともに,罹災による家具の消失の程度や他からの援助の有無等を十分検討の上,取り扱う必要があるとしている。

 請求人は数年間にわたり○○○○○と同居していた。 その間,最低生活に必要な最小限度の家具什器は○○○○○と共同利用していた。  ○○○○○の家庭訪問時に,請求人は最低生活に必要な最小限度の家具什器を十分持ち合わせていなかったことを担当ケースワーカーが確認している。 しかし,請求人は申請以前に居宅生活していたため,全く家具の持ち合わせがなかった訳ではないことは明らかである。

 請求人は,継続利用可能な物品については,○○○○○から具体的に搬出の目途をつけている。また,請求人は自宅と○○○○○宅を自転車で往復しており,密に連絡も取りあっている状況から家具の共同利用も可能な生活環境と判断できる。さらに,請求人はこれまでも居宅生活を営んできている。 転出時に家具の持ち合わせがなければ,最低生活の維持に支障をきたすことは容易に想像かでき,正常な日常生活を営む能力に欠けている等特別な事情はない。 したがって,「真にやむを得ない事情」とは解されない。

 併せて,請求人は,本件処分に係る保護変更申請を行った同日に家具の購入を済ませている。その際の購入費用は,経常的最低生活費から捻出されている。 その後の生活需要は,平成25年 8月5日に支給された琢具什器費○○○○○を合わせた額で賄っていた。 これは,日常生活に必要な物品は経常的最低生活費の範囲内で計画的に購入すべきであるという保護の原則に合致している。

 以上の点から,本件処分は保護の実施要領等に基づく適正な判断によるものであ   る。

 

 

第3 請求人の反論

 請求人は反論書において次のとおり主張している。

 

 ○○○○○の住宅は狭かったため,請求人には自分の家具が無かった。

請求人か購入した○○○○○○○○は,これらがなければ普通に暮らすことが困難なものである。 よって,特別基準である39,900円の適用が可能なはずである。

 処分庁は,真にやむを得ない事情について,災害にあった時と長期入院の場合を例示している。しかし,これは局長通知第7-2-(6)-イ及び工の事例を紹介しているに過ぎない。 したがって,局長通知第7-2-(6)-アの場合に特別基準である39,900円が認められない根拠にはならない

 また,請求人の住居から○○○○○宅までは,○○○○もかかる。 そのため,○○○○○や を○○○○○宅に通って使用することはできない。

 

 

第4 当庁の認定事実

 調査したところ,次の事実が認められる。

 

1 請求人は,○○○○○の○○○○○とともに生活していたこと。

 

2 請求人は,○○○○○○○○から○○○○○の住居(以下「現住居」という。)に転出したこと。 また,請求人は,同日から生活保護を受給していること。

 

3 処分庁は,○○○○○の請求人宅の家庭訪問において,請求人宅に○○○○  が置いてあることを確認し,○○○○○宅から運んだものであることを請求人から聴取したこと。 また,照明は ○○○○○○がついている状態で,その他の電化製品はないことを確認したこと。

 

4 請求人は,○○○○○○○○,処分庁に家具什器の購入費用の支給を求める保護変更申請を行ったこと。 申請書には以下の内容が記載された○○○○○○ の見積書が添付されていたこと。

(見積書の内容)

 

5 処分庁は,○○○○○○の請求人宅の家庭訪問において上記第4-2のとおり請求人から保護変更申請があった家具什器が 購入済みであることを確認したこと。

また,請求人から○○○○○○○○を○○○○○宅に残しており,なるべく早く移動させたい旨を聴取したこと。

 

6 処分庁は,上記第4-4の申請について,○○○○○円の家具什器費の支給を決定し,  ○○○○○付けで請求人に通知したこと。

決定通知書に保護を変更した理由として,以下のとおり記載されていること。

 

 <保護を変更した理由>

 1.保護開始時に家具什器の持合せがない為,○○○の家具什器費を支給します。

 

7 請求人から○○○○○○付けで,本件審査請求が提起されたこと。

 

8 処分庁から○○○○○○付けで,弁明書が提出されたこと

 

9 請求人から○○○○○○付けで,反論書が提出されたこと。

 

 

第5 当庁の判断

1 「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)第7の2において,臨時的最低生活費(一時扶助費)は,特別の需要のある者について,最低生活に必要不可欠な物資を欠いていると認められる場合であって,それらの物資を支給しなければならない緊急やむを得ない場合に限り,別に定めるところにより,臨時的に認定するとされている。

 

2 一時扶助費のうち家具什器費については`局長通知第7-2-(6)において, 「次官通知第 7に定めるところによって判断した結果,炊事用具,食器等の家具什器を必要とする状態にあると認められるときは,24,900円の範囲内において特別基準の設定があったものとして家具什器を支給して差しつかえない」とされている。

 また,「真にやむを得ない事情により,この額により難いと認められるときは,39,900円の範囲内において,特別基準の設定があったものとして家具什器費を支給して差しつかえない」とされている。

 

3 以上の見地から,本件審査請求について判断する。

 請求人は,家具什器費について 39,900円の範囲内での特別基準(以下「当該特別基準」という。)の適用を処分庁に求めている。

 当該特別基準が適用できるのは上記第5-2のとおり,真にやむを得ない事情により,24,900円の範囲内の額により難い場合である。 これは,例えば,災害にあい家具の大部分を失った場合や,長期間入院していた単身者が,退院して新たに自活するときに全く家具什器を所持していない場合などが考えられる。 しがって,特別基準の設定にあたっては,保護の実施機関は,地域の低所得世帯の生活実態や当該世帯人員の状況等から,当該世帯の最低生活に必要な最小限度の家具什器の程度を的確にとらえる必要がある。 さらに,例えば,罹災世帯であれば消失の程度,他からの援助の有無等を十分調査検討の上,特別基準の設定が必要かを判断することとなる。

 処分庁の調査によれば,請求人が転居時に○○○○○から譲与されたのは,上記第4-3及び第4-5のとおり,○○○○○など日常生活に必要な家具什器のうち一部であったと認められる。 また,請求人は,上記第4-4のとおり,計○○○○○円の家具什器が必要であるとして保護変更申請を行っている。 したがって,処分庁は,請求人の状況等を十分調査したうえで,当該特別基準の適用が必要か否かを判断すべきであった。 しかしながら,処分庁から提出された記録には,調査を行った経緯や判断をした経緯は記載されていない

 また,処分庁は,請求人と○○○○○○の交際状況から○○○○○○共同利用が可能であると主張している。 このことについては,請求人は,○○○○○○の住居との距離が遠いことから○○○○○や○○○○○の共同利用は不可能であると反論しており,両者に争いがある。 しかし,処分庁から提出された記録には,処分庁がどのような家具什器が共同利用できるのかを検討した経緯は記載されていない

 さらに,処分庁は,請求人が保護申請前に○○○○○居宅生活をしていたことから,当該特別基準を認定すべき「真にやむを得ない事情」はないと主張している。 しかし,○○○○○から請求人に譲与された家具什器は日常生活に必要なものの一部であるため,請求人が○○○○○生活していたことをもって当該特別基準の適用が不要であるとは判断できない

 よって,処分庁は,特別基準の設定について十分な検討を行っていないと認められ,本件処分には取り消すべき理由が認められる。

 

4 結論

 以上検討したとおり,処分庁が行った本件処分については,行政不服審査法第40条第3項の規定により主文のとおり裁決する。

 

   平成25年10月29日

 

                    審査庁 埼玉県知事 上 田 清 司

 

 

 

○東京都生活保護運用事例集

(問6-36) 家具什器費の認定基準(平成27年度修正版)

 保護開始時において,最低生活に直接必要な家具什器の持ち合わせがない場合等には,家具什器費を支給できることとなっているが,その際の認定基準について示されたい。

 

 家具什器費の認定に当たっては,次の点に留意のうえ,支給する。

 

1 臨時的最低生活費(一時扶助)の基本的な考え方

 被保護者は,経常的な最低生活費の範囲内において,通常予測される生活需要のすべてを賄うべきであるが,特別の需要のある者について,最低生活に必要不可欠な物資を欠いていると認められる場合であって,それらを支給しなければならない事情があるときに限って,一時扶助は認定されるものである。

 

2 家具什器費を認定する場合の特別の需要

 局長通知第7の2の(6)のア,イ,ウ,エ(保護開始時,長期入院後の退院等の場合の単身者,災害,転居)のいずれかの場合に該当すること。

 この他,被保護世帯が世帯分割する場合,簡易宿所からアパートへ転居する場合等も,上記1の考え方に照らし,真にやむを得ない事情があれば認定することができる。

 

3 認定する家具什器の範囲

(1)炊事用具,食器,食卓等の居宅における食事のために直接必要な物品

(2)衣類等の収納具

(3)照明用具,カーテン等 居室に不可欠の物品 及び 冷暖房器具

(4)清掃,洗濯等のための器具

(5)その他最低生活に直接必要な物品(娯楽用品,消耗品は,対象外。)

 

4 認定する場合の留意点

(1)最低生活に必要不可欠な物資を欠いているかどうかは,必ず実地に訪問調査のうえで確認する。

 

(2)申請のあった家具什器を支給しなければならない事情があるかどうかは,当該被保護者の個別の事情を十分に把握・検討のうえで判断しなければならない。

保護開始時,長期入院後の退院等の場合の単身者,災害,転居の場合のそれぞれで事情が異なるものであるから,それに応じた家具什器の種類,規格等を認定する。

家具什器について品目が限定されるものではないが,必要な物が複数ある場合は,限度額又は特別基準額を考慮しつつ,必要性の高いものから購入するよう助言する。

 

(3)27,000円の額により難いと認められるときは,43,200円の範囲内において,支給することができる。また,更にこの限度額を超えて費用を必要とする特別な事情があると認められるときの取扱いについては,(問12-15)の「特別基準設定に係る情報提供の事務処理要領」を参照されたい。

(注)下線部分の額(家具什器費)は平成27年度基準