【問】ペット保険から保険金を受け取ったときは,収入として認定されるのですか

 

 私は生活保護を受けており,ペットを飼っているため,ペット保険に加入していますが,先日,ペットが病気になり動物病院で治療を受け,後日,治療費の一部をペット保険から保険金として受け取りました。

 そのことを役所の担当者に報告したところ,担当者から現金を受け取ったのであるから,収入として認定することになると言われました。

 

 私が入院したときは,その治療費は,役所から全額を病院に支払ってもらいますので,私が受け取った入院給付金を収入として認定されることについては納得していますが,ペット保険金については,私が生活保護費をやり繰りして,ペット保険の保険料や ペットの治療費を全額支払い,その治療費の一部が 保険金として私に支払われたものですから,収入として認定するのは,おかしいと思います。 どのようにしたらよいのか,アドバイスがあれば,お願いします。

 

 

【答】

 あなたが言われるとおり,私も,ペット保険からの保険金を収入として認定することは,おかしいと思います。 ペット保険には,窓口精算後日精算の2種類があり,窓口精算の場合は,動物病院で治療費の自己負担分だけ支払えばよく,後日精算の場合は,動物謬院で治療費の全額を支払い,後日,その治療費の一部が ペット保険から保険金として支払われることになります。

 そのため,後日精算の場合は,ペット保険金を受け取るので,収入認定の問題が生じますが,窓口精算の場合は, 収入認定の問題は生じません。

 同じペット保険でも,窓口精算ならば収入認定する必要はなく,後日精算ならば収入認定の問題が生じるのは,奇妙な感じがします。

 

 私は個人的には,ペット保険が,窓口精算のものであっても,後日精算のものであっても,ペット保険の保険料や ペットの治療費については,生活保護費をやり繰りして支出したものであり,後日精算の場合は,動物病院に支払った治療費の一部が戻ってくるものですから,収入認定の対象外であると考えています。

 

 この理由は,次の参考資料の厚生労働省 保護課長通知 問(第3の20)〔保護受給中における学資保険の満期保険金又は解約返戻金の取り扱い〕において,

 「満期保険金等を受領した場合,開始時の解約返戻金相当額については,法第63条を適用し返還を求めることとなるが,本通知第8の問40の(2)のオに定める就学等の費用にあてられる額の範囲内で,返還を要しないものとして差しつかえないこと。‥‥‥ 開始時の解約返戻金相当額以外については,「保護費のやり繰りによって生じた預貯金等の取扱い」と同様に,使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない場合については,収入認定の除外対象として取り扱い,当該収入があてられる経費については,保護費の支給又は就労に伴う必要経費控除の必要がないものであること。」

とされており,また,「別冊問答集」の問3-25[保護受給中に受領した生命保険の解約返戻金,保険金等の取扱い]において,

 「保護開始時の解約返戻金相当額については,法第63条により返還させることとなる。 また,当開始時の解約返戻金相額以外の額については,保護課長通知 第3の20従い,その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り,収入認定の除外対象として取扱う。」とされているからです。

 

 しかし, 生活保護手帳や別冊問答集,いくつかの自治体の生活保護運用事例集・問答集等を見ても,ペット保険金の取り扱いについて記載されているものはありませんでした。

 

 担当ケースワーカーに上記のことを説明しても,担当ケースワーカーが,後日精算の場合は,受け取った保険金は収入認定の対象になると主張するならば,ペット保険を 後日精算のものから窓口精算のものに変更するか,又は,法テラスを通じて生活保護制度に詳しい弁護士や,各地域の生活保護支援ネットワークなどの生活困窮者支援団体に相談し,役所に説明してもらったり,都道府県知事に対して,「ペット保険金を収入認定した保護変更処分」や,「生活保護法第63条に基づく保護費の返還処分」の取り消しを求める審査請求を行うことを検討しましょう。

 

 

 

(参考)

〇厚生労働省 保護課長通知

〔保護費のやり繰りによって生じた預貯金等〕

問(第3の18)

 生活保護の受給中,既に支給された保護費のやり繰りによって生じた預貯金等がある場合は,どのように取り扱ったらよいか?

 

 被保護者に,預貯金等がある場合については,まず,当該預貯金等が保護開始時に保有していたものではないこと,不正な手段(収入の未申告等)により蓄えられたものではないことを確認すること。 当該預貯金等が既に支給された保護費のやり繰りによって生じたものと判断されるときは,当該預貯金等の使用目的を聴取し,その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については,活用すべき資産には当たらないものとして,保有を容認して差しつかえない

 なお,この場合,当該預貯金等があてられる経費については,保護費の支給又は就労に伴う必要経費控除の必要がないものであること。

 また,被保護者の生活状況等について確認し,必要に応じて生活の維持向上の観点から当該預貯金等の計画的な支出について助言指導を行うこと。

 さらに,保有の認められない物品の購入など 使用目的が生活保護の趣旨目的に反すると認められる場合には,最低生活の維持のために活用すべき資産とみなさざるを得ない旨を被保護者に説明した上で,状況に応じて収入認定や要否判定の上で保護の停止又は廃止を行うこと

 

 

 

〔保護受給中における学資保険の満期保険金又は解約返戻金の取り扱い〕

問(第3の20)

 保護受給中に学資保険の満期保険金(一時金等を含む)又は 解約返戻金を受領した場合について,高等学校等就学費との関係もふまえて 取扱いを示されたい。

 

 満期保険金等を受領した場合,開始時の解約返戻金相当額については,法第63条を適用し返還を求めることとなるが,本通知第8の問40の(2)のオに定める就学等の費用にあてられる額の範囲内で,返還を要しないものとして差しつかえないこと。

 なお,この場合,高等学校等就学費の支給対象とならない経費及び高等学校等就学費の基準額又は学習支援費でまかないきれない経費であって,その者の就学のために必要な最小限度の額にあてられる場合については,高等学校等就学費は基準額どおり計上しても差しつかえない。

 開始時の解約返戻金相当額以外については,「保護費のやり繰りによって生じた預貯金等の取扱い」と同様に,使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない場合については,収入認定の除外対象として取り扱い,当該収入があてられる経費については,保護費の支給又は就労に伴う必要経費控除の必要がないものであること。

 なお,この取扱いは,保有を認められた他の保険についても同様である。

 

 

 

〇別冊問答集

問3-25 保護受給中に受領した生命保険の解約返戻金,保険金等の取扱い

(問)

 保護開始時に保有の認められた生命保険について,保護受給中に解約返戻会や死亡保険金,入院給付金等を受領した場合の取扱いを示されたい。

 

(答)

 次のとおり取り扱われたい。

(1)満期保険金及び中途解約の場合の解約返戻金

   保護開始時の解約返戻金相当額については,法第63条により返還させることとなる。

   また,開始時の解約返戻金相当額以外の額については,保護課長通知 第3の20従い,その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り,収入認定の除外対象として取扱う

 

(2) 配当金,割戻金等の一時金

  (1)とは異なり,保険契約は継続されており未だ資産としての保険を保有している状態にあることから,解約返戻金相当額について考慮する必要はない。

   また,配当金等は,支払った保険料の還付の性格を有していることから,(1)の後段同様,その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り,収入認定除外対象として取り扱って差し支えないものである。ただし,保護開始直後に配当金等が入った場合など保護開始後に支払った保険料の額を超える配当金等が入った場合には,その超える額について,次第8の3の(2)のエの(イ)により,8,000円を超える額を収入認定することとされたい。

 

(3)入院給付金等の保険給付金

  (2)と同様,保険契約は継続されており未だ資産としての保険を保有している状態にあることから,解約返戻金相当額について考慮する必要はない。

  しかしながら,保険事故に対する給付は「保護費のやりくりによって生じた預貯金等」にはあたらないものである。 よって,次第8の3の(2)のエの(イ)により,8,000円を超える額について収入認定を行うこととなる。 なお,入院給付金は,通常契約者ではなく,被保険者に対して支払われるので留意が必要である。

 

(4)死亡保険金(同居している世帯員に支払われた場合)

   保護開始時の解約返戻金相当額については,法第63条により返還させることとなる。

   一方で,保険事故に対する給付は,「保護費のやりくりによって生じた預貯金等」にはあてはまらないため,開始時の解約返戻金相当額以外の額については,次第8の3の(3)のキに該当するものを除き,次第8の3の(2)のエの(イ)により,8,000円を超える額について収入認定を行うこととなる。