最近は天気も悪く釣りで出船出来る日は少ないが、違う仕事で相変わらず毎日海の上に居て、仕事の現場近くで車中泊が続いている。

暇な時間に海上を眺めていると色々昔の出来事を思い出す。

20年ほど前フロリダに住んでいる時の話になるのだが、アイラモラーダにあるとあるバーでベテランガイドとビールを飲みながら話をしていた。そのガイドはゲームフィッシング創世記からの生き残り的な存在で、色々と興味深い昔話を話してくれた。

その会話の中で伝説的ガイドSteve Huff(以後スティーブ)の話題が出てきた。途中で色々なガイドが会話に参加してくる中で皆口を揃えて言う事は、“後にも先にもスティーブを超えるガイドは出ないだろう。”との事である。

スティーブの伝説はgoogleで調べれば(英文)色々と出て来るが、今日は実際のガイド(以後ガイドA)がしてくれた興味深い話をしたい。

ガイドAは何時もの様に、と言うかそのポイントの定番の位置にスキッフ(浅瀬で釣りをするた為の専用ボート)を止め釣りの準備を始めた。その時あり得ない位置でボートを止めているガイドが目の片隅に入ってきた。そしてそのガイドはこちらに向かって何か叫んで来た。

仕方なくそのガイドの元へ行ってみるとスティーブだった。スティーブ曰く“お前のいた位置からボーンフィッシュが入ってくる俺はそれを待っているから邪魔だ。退け”と言ってきた。

ガイドAは半信半疑だったが、スティーブの言う事だから間違えないかもしれないと思い速やかにその場所を開けた。しかしそれが本当かどうか興味があり、スティーブが見える位置の違うポイントで釣りをしながら様子を見ていた。

しばらく見ていると驚いた事に次か次とそこからボーンフィッシュがやって来たらしい。

その話を聴いていた他のガイド数名が同じ様な体験があると相槌を打っていた。
兎に角スティーブが行く場所にはまるで魚が集まるかの様に向かって行くとの事である。

スティーブは若かりし頃誰よりも早く出船し、誰よりも遅く帰港していたらしく、来る日も来る日も毎日海へ出て観察していたらしい。彼曰く“それでも解らない事が多い、後3回生まれ変わって同じ事をすれば少しはわかるかもしれない”と語っている。

桁外れたフィールドでの滞在時間と、尽きる事のない興味と観測能力により創り上げられたスティーブの感覚は並外れた物なのだろう。生涯終わるまで埋まっていると言うガイド予定と、顧客のVIP具合も納得出来る。

何時もこの話を思い出す度に、フィールドに出来るだけ長くいる事の重要性を思い出すストーリーである。