いきなり、どかんと暖かくなった。 

といってもマイナス2度である。

これまでは最高気温がマイナス10度なんていう、

冷蔵庫の冷凍室の方がまだマシなんじゃないかという極寒の日々だったから、

これでもう「春爛漫」といった気分なのだ。

 

長く釣りをやっていると、五感のどこかが野生に返る。

 一週間ほど前、マイナス15度の夜風を頬に受けた瞬間、

ふと「あ、春がそこまで来ているな」と、

根拠のない確信が腹の底から湧き上がってきた。

気象予報士より先に、毛穴が季節を察知するのである。

あと一ヶ月もすれば氷が溶け出し、

一ヶ月半もすれば、いよいよ「あの季節」がやってくる。

 

しかし、である。

 例によって例のごとく、

準備というものがこれっぽっちも進んでいない。

 

思い出すのは、かつてのバチ抜けシーズンだ。 

「今年こそは」と鼻息荒くロッドビルディングに着手したものの、

完成したのはシーズン終了間際。フライを巻くのも間に合わず、

現場で追い詰められて「ええい、ままよ!」と

デッチ上げた怪しげなフライが、

なぜか爆釣してしまったこともある。 

だが、そんな僥倖(ぎょうこう)は、

そう何度も転がっているものではない。

 

昨日も、息子の用事に付き合って一日がわっせわっせと過ぎ去り、

買い出しのついでにBarで琥珀色の液体を喉に流し込み、

帰宅後は「Fly Vs Jerk」のパイク釣り映像を、

魂を抜かれたような顔で眺めていたら、

いつのまにか一日が溶けてなくなっていた。

 

巻かなければならないフライは、少なくとも100本はある。 

ロッドの部品も、いい加減に揃えて手を動かさないと、

シーズンインに置いてけぼりを食らうのは火を見るより明らかだ。

 

気がつけば、もう二月の最終週。 

今週もまた、忙殺される予感がプンプンしている。 

やれやれ、春は嬉しいが、釣り人の心は千々に乱れるのである。

 

シーズンインまで51日