#0009:日本の雇用改善にはもう1つの谷があるのか?
■世界各国で失業率が増大
2010年2月4日の日経新聞朝刊に「若年層の失業率深刻、昨年末 欧州21%, 日本は8.4%に」という記事が掲載された。国際労働機関(ILO)の調査データの結果、米国とEU圏の全世代失業率はそれぞれ10%だが、若年層になるとEU圏では21%、米国は15.6%であるという。日本でも、全世代は4.8%であるのに、若年層は8.4%になっているという。
[2010年2月4日 日経新聞朝刊]
2月15日には、経済協力開発機構(OECD)が加盟30国のデータを公開した。2009年の平均失業率は1988年の統計公表開始以来、過去最悪の8.3%(前年比2.2%の上昇)。そのデータを加盟国別にグラフ化すると、下図のようになる。
南欧諸国が悪化していることに加えて、米国もこのデータでは9%代後半にある。OECDの予測では、2010年の雇用状況はさらに悪化し、9%に迫ると予測している。
■米国の雇用状況は改善に向かう気配
グラフがきれいなため、よくのぞいているブログに "Calculated Risk Blog "がある。そこに、米国の失業状況のグラフがいくつか掲載されていたので紹介する。
まずは、2月5日に掲載された失業状況の推移グラフである。
このグラフでは、青線が失業率、赤線が前年比での労働者数の増減である。また、青く塗られた部分は、GDPが前年同期比マイナスになった四半期が2つ連続した状況になった期間、すなわち景気後退(リセッション)期である。
2009年10月から失業率は10%を越え、オバマ政権が緊急の対応を迫られている状況は、「#0005:米国の製造業偏重の雇用対策はどうなのだろうか」にも一部記述した。特に、今回は急カーブを描いて雇用状況の悪化が進んでいるが、この状況をよくあらわしているのが、同じ2月5日に掲載された次のグラフである。
今回の景気後退で、過去に例がないくらい急激に深い雇用情勢の悪化が発生している状況が見える。
一方で、米国の新規失業者発生数を、失業保険の新規申請者数から描いているのが次のグラフである。
このグラフをみると、米国では失業保険の新規申請者数がピークを打つと、間もなく景気後退期から脱却する傾向があるように見える。どうも今回の景気後退も脱したように見える。
このような状況を映してか、2月18日のWall Street Journalには"Factories Get Set to Hire, Makers of Shoes, Electronics to Add Staff; Industrial Output Up for 7th Month
"という記事が掲載された。キャタピラー社などの製造業で雇用が戻り始めているという。2番目のグラフのように、あまりにも急激な失業者数の増加のため、回復に時間はかかりそうに思える。また時には先週のように逆行して失業保険に新規申請数が増加することもあるかもしれないが、米国の雇用は戻り始めているように思われる。
■日本では雇用の2番底か
日本でも失業保険の新規申請者数を把握できればよいのだが、このデータは入手できない。なんとか同様のデータが日本についても作れないかと、内閣府統計局の労働力調査データをいろいろ形を変えてグラフ化してみた。その結果、何らかの形が出てきたのが、以下の「四半期ごとに見た日本の完全失業者数と失業者数の増減」のグラフである。
Calculated Risk Blogのように、景気後退期に着色してみた。その結果、1997年~1999年、および2001年~2002年の2つの景気後退期ともに、いったん失業者数が減少した後、揺り戻しの増加があり、その後本格的な改善に向かっているようである。景気後退期の雇用回復には、いわゆる2番底が存在している。
米国のように景気後退が即座に雇用削減に結びつかず、ある程度回復のめどが立ったところで社内余剰人員を整理するような傾向が日本企業にあるためなのか判然とはしない。しかし、過去の傾向が同じように継続するならば、今回の景気後退でも雇用の2番底が現れそうに思える。
一方で、2010年1月28日の日経新聞朝刊には「求人広告 減少率が縮小」の記事が掲載された。まだまだ、減少傾向にあるので決して万全ではないが、やや改善の兆候も見られるように思われる。
[2010年1月28日 日経新聞朝刊]