#0006_国家が経済破綻する時(1) 欧州で金融危機再びか? | 屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ

#0006_国家が経済破綻する時(1) 欧州で金融危機再びか?

2月11日のEU首脳会議で、ギリシャ支援の内容が Few detail として失望されたのに引き続いて、Wall Street Journalがヘッドラインで、ドバイ国債のCDSレートが急上昇して、債務不履行リスクが高まっていることを報じていた。(Cost of Insuring Dubai's Debt Jumps )。ドバイに関しては、いざというときにはアブダビなどの支援があるのだろうが、現在は、ギリシア、国債の売出しが消化できなかったポルトガルに、スペイン、アイルランド、イタリアを加えた PIIGSの欧州諸国であろうか。


■欧州諸国の信用不安が、ギリシアからポルトガル、スペインに拡大

2010年1月23日の日経朝刊がギリシャの問題が顕在化した時点で、以下のような記事を掲載し、スペインが付加価値税率引き上げ、ギリシャやアイルランドが社会保障費の削減を主体にした対応で、財政赤字対策を決定したことを報じていた。

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_01_1月23日対応
[2010年1月23日 日経朝刊]

それにより、沈静化していたのが2月3日のポルトガル国債の入札不調で、ポルトガル、スペインに波及して論じられるようになった。2月7日の日経新聞朝刊では、ギリシャ問題がG7での主要な話題の1つとなったことを報じ、その時点でのドイツ国債に対する利回り上乗せ幅のグラフを掲載した。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_02_G7対応
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_03_国債上乗せ利回り

[2010年2月7日 日経新聞朝刊]

それとともに、「G7各国の財政収支と公的財務残高のGDP比」のグラフが記事中で示された。屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_04_G7各国の状況

しかし、このグラフからは、公的債務残高は多いものの、財政収支が悪化していないイタリア(PIIGSの1つ)の状況が読みとれ、むしろ日本、米国、英国の方が深刻のように読み取れる。

(追加グラフ)
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_09_PIIGS財政赤字
[2010年2月15日 日経新聞朝刊]


■2月11日のEUの支援策は具体性を欠くとの評価

その後、11日に開催されたEU首脳会議では、この問題への積極的かつ具体的な対応表明が各国首脳から発表される期待があった。しかし、それが「Few detail(具体性なし)」の評価に終わったことは前述した。

それを報じる2月12日朝刊の記事には、EU各国からPIIGS諸国への与信額が各国のGDPのどれくらいを占めるかのグラフが表示されていた。

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_05_PIIGSへの与信GDP比
グラフをみると、ドイツがGDP比19%、フランスがGDP比30%になっている(ギリシャ分は1~3%でそれほど大きくはない)。したがって、もしギリシャ以外の国に問題が波及した場合は、独・仏の金融機関の自己資本が毀損され、金融面での問題が発生する規模になる。欧州全体で連鎖反応が発生するのだ。にも関わらず、具体的な発表が11日には行われなかった。

このグラフを、BISのデータに基づいて、金額に直してみたのが下表である。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_07_PIIGSへの各国与信額

BIS: Detailed tables on provisional locational and consolidated banking statistics at end-September 2009 (January 2010)より作成

ドイツのスペイン向け金額はGDPの約6%に相当する。巨額である。
そして、このような状況から、ユーロ圏金融機関の新規融資が手控えられ、景気浮揚が遅れる懸念があるようだ。


一方で、1月18日の日経朝刊には、「欧州法人税、下げ止まり」の記事が掲載された。随分と羨ましい法人税率である。景気が悪いさなか、法人税率の安易な引き上げはないと思われるが、なにか余裕があるところにはあるような気もする。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0006_08_EU法人税率
[2010年1月18日 日経新聞朝刊]

■米国の財政赤字も深刻なレベル?

上の2月7日の記事からは、米国の財政収支も極端に悪くなっていることが読み取れる。選挙キャンペーン用ではあるが、債務額増加状況のカウンター からは刻一刻と増えている米国の借金額を様子が見れる。米国の財政には、Deamon Sheep が忍び寄ってきている。


一方で、なぜか忘れられたように何も報道されていない国がある。ロシア...相当にひどいはずなのだが、どうなっているのだろうか。