#0005:米国の製造業偏重の雇用対策はどうなのだろうか
#0003:米国製造業の労働コスト競争力は意外に強い
で、オバマ大統領が年初に「再生可能エネルギー関連の製造業を支援する」ことを表明したこと、および米国製造業の労働コスト競争力が意外にあることを記述した。
その後も、1月27日の一般教書演説で、オバマ大統領は「As we stabilized the financial system, we also took steps to get our economy growing again, save as many jobs as possible, and help Americans who had become unemployed.」と雇用対策を重視し、建設業とクリーンエネルギー関連で30万人、教育関連で20万人、公共関連で10万人の雇用創出を、さらに表明した。
■失業者が多かった製造業を重点的に支援
2010年2月9日に、米国の業種別雇用減少数のデータが掲載された。
[2010年2月9日 日経新聞朝刊]
このグラフによれば、製造業、通商・輸送・公共、建設業が最も雇用が失われた業種である。建設業は、プライムローン問題の中心であったのだからありえるべき事態とも思われる。
しかし、このデータだけでは雇用者数全体に対する減少数の関係が判らない。そこで米国労働省労働統計局(
*業種名の日本語翻訳が誤解を招かないように、原文名称を併記した
確かに、製造業は200万を越える雇用を失っているが、一方で全雇用者数に占める割合は10%にも満たない。一方で、一般教書演説として前後して、金融制度改革案が提起され、現在の経済混乱の一因となっている。確かに、業種を超えた職種転換は容易ではないと思われるが、どうも特定業種、一部の領域に偏重しているようにも思えるのだか、どのようなものだろう。
■海外に流出するのは、やっぱりビット系
翌2月10日には、プリンストン大・ブラインダー教授の海外に流出しにくい業種の論文からの業種の分類表が掲載された。
[2010年2月10日 日経新聞朝刊]
やはり流出しがたいのは、物理的な接点が業務で求められる「アトム系」になるようだ。「ビット系」はどんどん流動していくのであろう。
日経の記事によれば、ブラインダー教授は論文中で、「教師や薬剤師などの実際に人と人が対面する仕事は海外流出しにくい」としているようだ。しかし、看護師のような物理的な接点が不可欠な職種ならばともかく、教師のような教育関連業種は海外に流出しないのであろうか。日本では予備校が衛星授業を提供しているし、海外の大学院の授業をWEBで聴講できる時代になってきているのだが。