#0004:過剰設備の解消が進み、製造業は筋肉質になっているのか? | 屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ

#0004:過剰設備の解消が進み、製造業は筋肉質になっているのか?

20010年2月10日の内閣府発表の機械受注統計をめぐって、いくつかの新聞記事が掲載されていた。

発表結果は、グラフのように2009年10月~12月は0.5%のプラスになり、「設備投資は09年末に底を打った可能性がある」との発表コメントもあった。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0004_02_民間予測

[2010年2月10日 日経新聞朝刊]


■機械受注統計の意義と動向

機械受注統計は、主要機械メーカー280社が、設備投資に使われる機械を受注した額を集計したものである。民間企業の設備投資は、GDP支出の約16%を占め、受注時点の数字で実際の導入・据付に対して6~9か月先行した経済動向を表す「先行指標」と考えられている。


今回の発表では7 四半期ぶりのプラスとのことで、12月が前月比20.1%増と大きく伸びたのがプラスに寄与したとのことである(どうも、2009年12月は、その他の指標でも、従来のトレンドに乗らない急激な増加があった月のように思われる)。なお、2月9日には、民間調査機関31社の予測として8.0.%の予測値が掲載されていたから、この数字はアップサイドのサプライズでもある。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0004_01_機械受注統計
[20010年2月9日 日経新聞朝刊]


しかし、金額に目を移すならば、直近のピークであった08年1Qの3兆円強に対して2兆円強であるから、一体10月~11月はどんな数字だったんだろうと、いぶかってしまうところでもある。


■旧式機械設備過剰の解消は進んでいるのか

一方、機械受注統計発表の1週間ほど前の2月4日の朝刊には、「企業の設備が戦後初めて目減りした」という記事が掲載された。2月3日に内閣府が発表した統計によれば、2009年7~9月期の民間資本ストック統計で、企業(製造業だけでなく、全業種を含む)の有形固定資産が実質で前年同期比0.1%減となったとのことである。新規の設備投資が大きく減少する一方で、設備除却額が増加して投資額を上回ったためであるが、マイナスになったのは、民間企業資本ストック統計が始まった1955年以来初めてとのことである。

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0004_03_資本ストック統計
[2010年2月4日 日経新聞朝刊]

筆者は、日本企業の設備過剰はずいぶん長い間継続しており、税制優遇などで対策が打たれていたと思っていた。そこで過剰感を確かめるために、日銀短観の設備DIの推移を調べて、データが得られる200年からグラフ化してみた。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0004_04_設備投資DIグラフ

統計によれば、大企業では、2006年第1四半期~2008年第1四半期まで 最大-3のほぼひっ迫状態であるが、その他の期間は大幅に過剰となっている。特に、2009年第一四半期以降は 30代後半に急上昇し、工場の操業停止などに至った事態が表れている。


2009年は未曾有の非常事態であったわけだが、それ以外の期間でも、マイナスになったことがなかったというのはちょっと意外な気持ちになった。


■金融危機を経て、企業設備面で、企業財務は筋肉質化したのか

さらに、上記の民間資本ストック統計の前の2月2日に、大日本印刷で資産リストラ効果により2009年3月期の総資産回転率で1倍を上回ったことが報道されていた。17年ぶりであるという。印刷業というと、代表的な装置産業のイメージがあるため、筆者は余計にこの記事に目をとめてしまったのだが、大日本印刷では印刷以外にも随分と事業の多角化を進めている様子ではある。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0004_05_大日本印刷

[2010年2月2日 日経産業新聞]

それにしても、2009年7~9月期に企業の設備保有が減少するとともに、機械受注が景気回復とともに増加するならば、いままで以上に日本企業の過剰設備削減や設備更新が進んでいるということなのだろうか。企業の財務体質が強固な筋肉質になってきているのであろうか。


2月4日の記事には「マイナスが長引けば日本経済の潜在的な成長力を下押しする可能性がある」とあり、それには同意するものの、もしかすると予想外に改善が進んでいないかと、淡くも期待するのだが....