#0001:2009年4~9月期、稼げたのはアジアだけ | 屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ

#0001:2009年4~9月期、稼げたのはアジアだけ

新聞の記事内容やデータから考察できたことを、ただただ書き綴っていくという、このブログ。まずは、地域別の企業収益から始めてみよう。


■外需主体の回復記事が相次いだ1月末

1月末に、輸出主導の企業業績の改善が報道する日経新聞の記事が相次いだ。


例えば、代表的なものとしては、以下である。

・1月23日(土)日経朝刊: 中国事業が稼ぎ頭に 日産・コマツ 今期営業益の4~5割
・1月27日(水)日経朝刊: 足踏み景気 問われる回復力(3)-輸出主導の改善
・1月28日(木)日経朝刊: 輸出、ピークの8割回復(貿易統計)

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0001_外需主導回復記事

[1月末に相次いだ、外需企業業績回復を報じる記事。なお、これらの記事は主に2009年4~9月のデータに基づていたと思われる]


■外需依存企業ではリーマン・ショック以前以上の利益達成も

1月31日(日)と2月4日(木)の朝刊には、さらに2009年10~12月の最新データを使った記事が掲載された。

この記事からみても、外需企業の増益傾向は継続しているらしいことが読みとれる。


例えば、2月4日(木)では、海外売上高比率が50%以上の企業の経常利益が前年同期比の5倍強に増加したことが報じられている。比率だけの話であるならば、前年の数字が非常に厳しかったならば、5倍強の増加といえども大したことではない。ところが、2月4日の記事は、2010年1~3月期も業績が回復し、通期で最高益を見込む企業が10社に1社あることを報じている。明らかに、外需依存型企業は金額値でも増益を達成つつある様子だ。

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0001_02_50%以上外需企業
[2010年2月4日 日経新聞朝刊より]


業種別には、1月31日の「経常益 3期連続で拡大 上場企業10~12月 前期比14%増」の記事にて、経常利益の状況が掲載されている(ただし、データは7~9月期)。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0001_03_業種別状況
[グラフは、2010年1月31日 日経新聞朝刊より引用]


この記事では、電機・自動車がまず回復し、現在、鉄鋼・化学などに増収増益の裾野が広がってきていることが報じられている。昨年の3月頃を底にして回復基調にあると見るのが自然であり、昨年の電機・自動車の急回復の様子を再度確認できるデータに思える。


一方で、国内の需要が盛り上がらず、内需依存企業は依然利益が上がらない状況も明白である。


■アジア主体の輸出経済:勝ち組企業とは大きな差?

地域別の輸出に視点を移してみよう。

金額ベースでは、2009年7~9月期の実質経済成長率は前期比年率1.3%の増加であり、輸出が3.5ポイントの押し上げ要因になったことが前述の1月27日の日経新聞に書かれている。

また、昨年11月の輸出額の内訳は、アジア向け 54%で米国向けとEU向けを合計した29%を上回っていることが記述されている。アジアが主体なのだ。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0001_004_地域別輸出比率
[2010年1月27日 日経新聞朝刊より]


一方で、企業の輸出や生産はピーク時の8割程度。上場企業の10年3月期の連結経常利益はピーク時の4割程度と予想されていることも述べられている。


ここで、前の内容と大きな齟齬があることに気づかれた方もいらっしゃると思う。

「最高益予想 10社に1社」ではなかったのか。もしかすると、一部の成功企業とその他の企業で大きな差が開いた可能性も垣間見える。一握りの勝ち組企業があるだけで、全体的には低調なのだろうか。


■利益はアジアで生み出された:金額だけではなく、利益率でも

次に、地域別損益である。これには、まず1月23日の日経新聞の記事中のグラフがある。
屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-001_005_地域別損益

[2010年1月27日 日経新聞朝刊より]


このグラフには併記で、日本で製造して中国に販売した場合も、地域別利益は「日本」に参入されていることが注記されている。これをみると欧州では赤字で稼げていないが、日本でそこそこ、アジア・オセアニアが重要であった様子に見える。


では、本当に国内市場は儲かったのであろうか。これについて、なぜか図表類が記事についていなかったが、日経新聞の昨年12月15日の記事「上場企業 アジア売上高、米を抜く」の記事中の数字を組み合わせてみると、その姿が明らかになる。下表は、2009年4~9月期の日本の上場企業の地域別の売上高と営業損益率である。

ちなみに、アジアの売上高が北米の売上高を上回ったのは、2009年4~9月期が初めてとのことである。

屋名樫 直の日経新聞から読み取ったことをただひたすら書き続けるブログ-0001_06_地域別まとめ表
[2009年12月15日 日経新聞朝刊より。日本経済新聞社が金融、新興3市場を除く3月期決算企業のうち、連結の地域別収益を開示し、2001年3月期から比較可能な430社を半期ベースで集計した結果。]


表を見てみると...国内の利益率 0.6%!! 赤字ではないが、金利(WACC)を考えれば経済価値はマイナスである。

結局、売上の6割を占める国内市場で、企業はほとんど儲かっていなかったのである。

かろうじて、米州で利益を稼げているものの、利益の源はアジアでしかない。前述の1月27日の記事にしっかりと注記を書きたかった理由もわかろうというものである。


アジアは、国内雇用確保のための儲からないけれど数量を輸出しているような位置づけの地域ではない。さらに、この統計は、日本からの輸出分のみならず、海外あるいは現地での生産分も含まれている。そうなると果たして、日本で製造することでどれだけの採算がとれるものかと、疑念をも持ちそうな内容でもある。


要約すれば、日本企業にとって、アジアとは単に売上を稼ぐ場所ではなく、もっとも儲かる市場なのである。その地域を近隣に有してることは、日本企業の大きなメリットでろう。そして、上記のデータは、2009年4~9月とやや古いものだが、おそらく大筋は変わっていないと思う。


■2010年も命運はアジアの経済状況にかかっている


したがって、2010年もアジア各国、特に需要の大きい、中国、インド、インドネシアなどの動向が大きく企業の景況に影響すると考えられる。であるならば留意すべき兆候も明白になる。先日の中国政府の融資規制の話題など、とても重要なチェックポイントではないだろうか。