Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評- -17ページ目

Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『復讐者に憐れみを』(原題:복수는 나의 것/2002年監督/117分/R-18)

監督:パク・チャヌク

脚本:イ・ジョンヨン、パク・リダメ

製作:イ・ジェスン

音楽:ペ・ユンジン

撮影:チョン・ジョンフン

編集:キム・サンボン

出演者:シン・ハギュン、ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、イム・ジウン、ハン・ボベ、リュ・スンワン、リュ・スンボムら

100満点中73点


 貧困の上、透析患者となった姉を助けようと、誤った手段を選んでしまったろうあの青年と、事業の失敗で転落していく実業家がたくさんの人間の憎悪の渦を発生・増大させ、殺人にまで手を染めてしまう人間ドラマの要素が強いヴァイオレンス作品。

 こういう作品は、ヴァイオレンス・ヒューマン作品とでもいうべきなのでしょうか?なんか矛盾するテーマが共存する居心地の悪い、ザラザラ感のある作品です。

 滑稽な程、短絡的な思考で大事なもの他人に渡してしまい、簡単に騙されてしまう点や何の躊躇もなく誘拐や殺人を実行してしまう人物が次々と登場する点が“ありえない”展開です。チャヌク監督が言う「復讐三部作」の第一弾なので、こなれていない分を多少割り引いて拝見しても・・・素直には感情移入できませんでした。テーマとしては、胃にドスンと“黒くて重い”ものが落ちてくるような感じがしたので、私は“嫌いじゃない”作品と思っていたのですが、第二弾の『オールドボーイ』を拝見した後だったせいもあって、やや落胆してしまいました。



 劇中、パク・チャヌク監督(↑)の独特のヴァイオレンスが炸裂します。撲殺、刺殺、溺殺、自傷、食人、司法解剖、集団自殺等の残酷シーンです。また、その現場も廃墟だったり、古いアパートの一室だったりと暴力以前に“異臭”が漂いそうな、不衛生でみすぼらしい場所ばかりです。2002年公開ですが、この後の韓国社会の明るい未来のひとかけらも感じさせないない点も異様です。1997年の通貨危機の余波で、個人・法人の破産が多発した時期の韓国なので、相当にネガティブな社会観なのかもしてませんね。


 主演のシン・ハギュンは「リュウ」を演じます。この役は耳の不自由な青年で、姉と二人暮らし、腎臓疾患を患うこの姉のために、ある間違った選択をして人生を踏み外していきます。ただし、誤った選択をしなくとも、先行き明るい未来は全くなさそうです。ハギュン本人はソウル出身で、ソウル芸術専門大学放送演芸科卒業し俳優になりました。2011年の『高地戦』では、陸軍情報部から前線に配置換えとなる「カン・ウンピョ中尉」役を熱演していました。



 ソン・ガンホは「ドンジン」を演じます。この役は、高卒ながら電気関係のメーカーを立ち上げた実業家ですが、不況のため経営が行き詰まり、工場の従業員を大量解雇せざるを得なくなったばかりか、妻にも出て行かれることとなります。ガンホ本人は慶尚南道金海出身で、1999年の『シュリ』、2000年の『JSA』の出演で有名です。



 ぺ・ドゥナは「ユンミ」を演じます。この役は、ろうあ者と偽って、ろう学校に入学し、数か月で健常者と分かり退学させられた女性です。社会民主主義に傾倒しており、反米、財閥解体を主張し、自分はテロ組織の一員だと言い張る変わり者です。ドゥナ本人はソウル出身の元モデルで、母親の影響で幼い頃から演劇に興味があり、韓国人には珍しく親日・知日派の女優です。2009年の邦画『空気人形』や2012年の米作品『クラウド アトラス』にも出演しています。


(あらすじ)

 ろうあの青年「リュウ」は姉の腎臓病の治療のため、人員整理に応じた退職金をつぎ込んで闇の臓器売買組織から移植用の腎臓を求めようとするが、騙され、自分の腎臓と1千万ウォンを奪われる。皮肉にもその直後、姉のドナーが見つかったという連絡を受けが、手術の費用分1千万ウォンはなく、彼の手元にはない。

 「リュウ」は、同じろう学校に通っていた「ユンミ」の発案で身代金誘拐を企てる。ターゲットは会社社長「ドンジン」の幼い娘「ユソン」である。

 誘拐は成功し、二人は身代金を要求する。別段危害を加えようとはしない二人に、「ユソン」もそれなりになつき、全てはうまくゆくかに見えたが、「リュウ」の姉が、この誘拐の理由を知り、悲観のあまり、自殺をしてしまう。「リュウ」は姉の遺体を埋めようと、姉との思い出が詰まった川辺に姉を埋める。その間一瞬目を放した隙に、「ユソン」は川で溺死する。助けを求める彼女の声がろうあである「リュウ」の耳に届かなかったからである。

 この後、娘の遺体と対面した父親「ドンジン」のなりふり構わぬ復讐が始まる。























 

 

『アンノウン』(原題:Unknown /2011年アメリカ、ドイツ/113分)

監督:ジャウム・コレット=セラ

脚本:スティーヴン・コーンウェル、オリヴァー・ブッチャー

原作:ディディエ・ヴァン・コーヴラール『Out of My Head』

製作:ジョエル・シルバー、レナード・ゴールドバーグ、アンドリュー・ローナ

製作総指揮:スーザン・ダウニー、ピーター・マカリーズ、サラ・メイアー、スティーヴ・リチャーズ

音楽:ジョン・オットマン、アレキサンダー・ルッド

撮影:フラビオ・ラビアーノ

編集:ティム・アルヴァーソン

出演者: リーアム・ニーソン、 ダイアン・クルーガー、 ジャニュアリー・ジョーンズ、エイダン・クイン、ブルーノ・ガンツ、フランク・ランジェラ、セバスチャン・コッホら

100点満点中84


 ベルリンを舞台として、ある国際的な植物学会を後援する中東の王子の暗殺計画の陰に隠されたどす黒い陰謀を、平凡な植物学者が解き明かすアクション色の強いサスペンス・スリラー。
 主人公が交通事故に合い、意識不明の間に、何者かが自分になり代わり、本来の自分とは関係ないはずの暗殺計画が進められていることを察知した主人公が、記憶を失った自分を探しをしながら、この計画を阻止しようと活躍します。

 このところ、アクション作品が多いリーアム・ニーソンですが、今作ではやや野暮ったく活躍するところが、普通ぽくて好感が持てます。作品の導入部分を“鵜呑み”にすると、鑑賞者は終盤まで騙されたままです。最後のどんでん返しはシンプルですが、ある意味、“スパっと”見事です。

 監督のジャウム・コレット=セラはスペイン、バルセロナ出身のアメリカの映画監督。2005年の『蝋人形の館』2009年の『エスター』の監督として有名ですね。今回は、ホラー作品ではないので、おどろおどろしさは全くありません。当たり前ですね。



 主演のリーアム・ニーソンは「マーティン・ハリス」を演じます。この役は穀物の品種改良が専門の植物学者で、国際的な学会に出席するため、愛妻「エリザベス」とベルリンに降り立ちますが、交通事故に会い、断片的に記憶を失ってしまいます。



 この妻「エリザベス・ハリス」はジャニュアリー・ジョーンズが演じます。彼女本人はサウスダコタ州スーフォールズ出身の女優で、2003年の『ラブ・アクチュアリー』などに出演しました。最近では、2011年『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』で全身がクリスタル状に変化するサイキッカー「エマ・フロスト」役を演じました。ブロンドの上、スマートなイメージの超美人です。



 ダイアン・クルーガーは「ジーナ」を演じます。この役はポスニアからドイツに入国した不法入国者で、小遣い稼ぎにタクシーの運転手をしていますが、「マーティン」をタクシーに乗せたことで、この事件に巻き込まれます。暗い過去を持つ女性ですが、正義感に厚い性格です。





 この作品は、アメリカ、ドイツ合作ですので、 フランク・ランジェラ(↑上)ら渋い米国俳優らとブルーノ・ガンツ(↑下)らの独国ベテラン俳優らががっ振り四つに組んで作品の隅々まで盛り上げてくれています。非常に重厚な作りです。


(あらすじ)

 アメリカの植物学者「マーティン・ハリス」博士は穀物の遺伝子操作に関する国際学会に出席するために愛妻「エリザベス」とともにベルリンのテーゲル国際空港に降り立つ。この学会は砂漠化に悩むアフリカや中東の穀物輸入国に恩恵を与えるプロジェクトとして、産油国の王族が後援している大事な会議である。

 彼らはタクシーでホテルに向かうが、「マーティン」はアタッシュケースを空港のタクシー乗り場に忘れて来たことに気付く。妻をホテルに残し、別のタクシーを捕まえて空港に引き返すが、前車からの不意の荷物落下が原因で、橋の欄干を突き破り、「マーティン」はタクシーごと川に転落してしまう。タクシー運転手「ジーナ」のおかげなんとか救出された彼は意識不明の重体となる。

 彼が収容された病院で昏睡状態から目を覚ますとすでに4日が経っている。事故前後の記憶が曖昧となっていたが、妻「エリザベス」に心配をかけまいと「マーティン」はホテル戻る。しかし「エリザベス」は「マーティン」を「知らない人」と言い、しかも見ず知らずの男が「マーティン・ハリス」を名乗っている。「マーティン」はパスポートもなく、自分が本人であることを証明できないため、一旦身を引く、それは自分自身の記憶にすら自信が持てなったからでもある。

 彼は自分を助けてくれたタクシー運転手「ジーナ」を探すことにするが、その後、彼と「ジーナ」は命を狙われることとなる。



























 

 

 


 

『オールド・ボーイ』(原題:Old Boy /2003年韓国/120分)

監督:パク・チャヌク

脚本:ワン・ジョユン、イム・ジュンヒュン、パク・チャヌク

原作:土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』

製作・製作総指揮:キム・ドンジュ

音楽:チョ・ヨンウク

撮影:チョン・ジョンフン

出演者:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン、チ・デハン、オ・ダルスら

100点満点中93



 土屋ガロン(作)、嶺岸信明(画)の漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』を原作としたヴァイオレンス・スリラー作品。 

 子煩悩だが、やや素行の悪い一般のサラリーマンが、ある晩突然、拉致され、妻殺しの容疑を掛けられたまま15年監禁された後、解放されたことで、 “なぜ?”この男は拉致監禁されなければならなかったのか、 “誰が?”“何のために?”このような人権蹂躙を行われなければならなかったのかをこの男と共に追いかけていく内容です。やや荒唐無稽な印象を受けなくもないですが、終盤、それなりの裏付けが用意されているので、得心の行く展開です。

 この作品は第57回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ、第37回シッチェス・カタロニア国際映画祭でグランプリを受賞しました。 

 こんな傑作だとは知らずに、未見のまま公開から約十年間過ごした私に、ある意味、この作品から隔離され、自らを縛ってきたかのような錯覚を起こさせるような、拝見後に覚醒感を抱かせるようなスリラー作品でもあります。

 実際のヴァイオレンスシーンは“目を覆うほど”強烈ではありませんが、真相が“最悪中の最悪”なので、映像作品で心の安寧を得たいと考えている方々には、絶対おすすめできません。相当にキツイ作品です。


 監督のパク・チャヌクは韓国、堤川市出身で、多くの映像作品を手掛け、『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、『親切なクムジャさん』を「復讐3部作」、『サイボーグでも大丈夫』、『渇き』、『イノセント・ガーデン』を「人間ではない存在の三部作」で自作品をくくっているとのことです。




 主演のチェ・ミンシクは「オ・デス」を演じます。この役は、冒頭ではただの酔っぱらいの会社員ですが、15年間の監禁の間に自己修練し、恨みと復讐心に燃える獣のような人物に変貌していきます。ミンシク本人は、1999年のヒット作品『シュリ』で、北朝鮮の工作員のリーダー「パク・ムヨン」を演じたことで有名ですね。





 カン・へジョンは「ミド」を演じます。この役は、“親子”ほど年齢が離れている謎の男を、なぜか?献身的に助けます。へジョン本人は仁川広域市出身でソウル芸術大学演劇科卒業の女優です。かなり韓国人離れした、モダンな顔立ちで、この作品の出演以降、2005年の『トンマッコルへようこそ』などたくさんの作品に出演しています。


(あらすじ)

 「オ・デス」には、4歳の娘がいる平凡なサラリーマンであるが、酒癖、女癖の悪い男である。この夜も、娘の誕生日であり、プレゼントも買ってあるにもかかわらず、深酒をし交番に留め置かれている。親友の「イ・ウジン」が迎えに来て帰宅しようと、「ウジン」が「デス」の自宅に電話をかけた時、「デス」はこつ然と姿を消す、彼は拉致されたのだ。

 「デス」が目覚めると、あるホテルの一室にいる。だが、この部屋は、監禁用に改造され、自由に出入りすることはできず、ドア外の廊下には監視もいるようである。飢えない程度に食事が運ばれるが、なぜ監禁されたか、いつまで監禁されるかは全く説明されない。テレビを自由に見ることは許され、定期的に散髪もしてくれるが、彼らが入室する時には、催眠ガスが室内に送り込まれ、「デス」が昏倒してからおこなわれるのだ。

 監禁から数か月し、テレビのニュースで自分の妻が殺害され、容疑者として自分がが指名手配されたことを「デス」は知る。この頃から、「デス」は自分を破滅させようとこの拉致監禁が仕組まれたことを自覚し、絶望のどん底に落とされる。何度となく自殺を実行するが、そのたび、命を助けられ、死ぬこともできない彼は果てしない無間地獄に落とされたようである。

 それでも、希望を捨てずに自らイメージを膨らませ、自己流の格闘技を身に着け、こっそりと壁に穴をあける作業を始める。10年を超えた頃から壁を貫通させることに成功し、もうすぐ15年になろうとする時、催眠ガスで眠らされる。

 目覚めると大きなスーツケースの中にいて、そこは、ある集合住宅の屋上である。スーツケースから這い出た「デス」はここで、初めて自分が解放されたことを知る。そして、この仕打ちを主導した人物を探しだし、命をもって償わせる決心をするが・・・