彼らは生き、我らは眠る『ゼイリブ』(ジョン・カーペンター監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『ゼイリブ』

(原題:They Live /1988年アメリカ/96分)

監督:ジョン・カーペンター

脚本:フランク・アーミテイジ

原作:レイ・ネルソン

製作:ラリー・J・フランコ

製作総指揮:シェップ・ゴードン、アンドレ・ブレイ

音楽:ジョン・カーペンター、アラン・ハワース

編集:ギブ・ジャフェ、フランク・E・ヒメネス

出演者:ロディ・パイパー、キース・デイヴィッド、メグ・フォスター、ジョージ・フラワー、ピーター・ジェイソン、レイモン・サン・ジャック、ジョン・ローレンス、ノーマン・オールデン、ジェイソン・ロバーズ・Jrら

100満点中82




 現代のアメリカ社会を舞台に、大量消費や貧困と格差社会、メディア支配などの社会問題に対し、シニカルにブラックジョークを大量に盛り込んだSFアクション・ホラー作品。

 我々の日常は既に、異星人によって支配され、地球の持つ天然資源や人の労働力は支配層である異星人と、彼らの協力者である一部の人間によって搾取されているという設定の“異星人侵略”作品の決定版です。

 公開年が、1988年と約30年前の作品ですが、そのテーマは現代にも通ずるものです。 “異星人侵略”物が大好きな私は、数年に一度は、つい見たくなってしまいます。それは、この作品には、ストーリーの面白さと着想の奇抜さがあり、これら点で、この手のSF作品の中でも群を抜いているからです。




 監督のジョン・カーペンターは、脚本家で映画プロデューサーでもあります。彼は4歳の頃観たSF作品『遊星よりの物体X』(1951年公開)に衝撃を受け、南カリフォルニア大学映画学科卒業後、低予算でいくつもの作品を製作し、大ヒットさせてきた実績を持っています。特に、スプラッターホラー映画というカテゴリーを確立させることに成功した『ハロウィン』(1978年公開)は、その最も典型的な作品です。その後、やや高い予算で製作された『ニューヨーク1997』(1981年公開)は、近未来のニューヨークのマンハッタン島が巨大監獄と化したという奇抜な発想で作られたSF作品です。また、1982年公開の『遊星からの物体X』は、彼が幼少期に受けた影響から、彼の悲願としてリメイク製作された“異星人侵略”作品です。彼の新発想として、血液から侵入し遺伝子自体を同化しながら、体を乗っ取る異星人によって、観客の度肝を抜く奇っ怪で異型の怪物に変容していく人間の姿があまりにもショッキングでした。


 今作「ゼイリブ」でも、やはり、平穏な日常生活を送っている市民には想像もできない速度と広がりと巧妙さで、相当以前から秘密裏に行われていた侵略と支配の実態に愕然とする登場人物の姿が描かれています。現代社会の格差や不条理や社会問題は全て、侵略者とその支援者・協力者によってもたらされているという設定です。





 主演のロディ・パイパーは、住所不定の労働者「ナダ」を演じます。この役は建設関係の会社に勤めていた労働者でしたが、長引く不況により失業して、ある街に流れてきたよそ者です。ある事件を目の当たりにして、社会の本当の姿を見てしまい、レジスタンス活動に参加することとなります。パイパー本人は、カナダ出身のプロレスラーで、「ホット・ロッド」というニックネームで1980年代のアメリカン・プロレスを代表するトップスターで、今作に主演した時にはまだ現役のプロレスラーでした。



 共演のキース・デイヴィッドは、先輩の日雇い労働者「フランク」を演じます。彼は、『遊星からの物体X』で映画デビューし、1986年の『プラトーン』のキング役で有名ですね。最近では、2012年公開の『クラウドアトラス』にも出演していました。


(あらすじ)

 「ナダ」は職を失いながらも、腐ることなく日雇いの仕事を見つけては、安い賃金と劣悪な労働条件の中でも、辛抱強く働く真面目な労働者である。今日は、仕事を求めて、ある街に立ち寄り、なんとか現場監督と労働組合に直談判して、仕事にありつくことができた。ただし、この仕事場の給料支払いは、数日どとにまとまって支払われるルールなので、今日の稼ぎは手にすることができない。そんな「ナダ」を見かねて、同じ現場の労働者「フランク」が声を掛ける。

「今夜、いいドヤがあるぜ。」

 「ナダ」は「フランク」の後について、あるキャンプに厄介になる。このキャンプは、近くの教会が支援する、食事と宿泊を提供するコミュニティで、案外和気あいあいとしている。ところが、数日過ごすうちに、この教会には宗教活動の実態がなく、数人の男たちが、何やらサングラスのようなものを、小規模で製造しているようである。製造されたサングラスは出荷される間近のようである。「ナダ」はこの様子を、裏口のドアの隙間からたまたま見てしまう。

 ある夜、この教会とキャンプに対し、警官隊が大挙投入される大規模な取締まりが行われる。大勢の人間が連れ去られたり、教会からたくさんの物品が持ち去られたりした末、キャンプは潰されてしまう。

 翌朝、一帯が静かになったのを見計らって、検挙を免れた「ナダ」が教会内の隠し倉庫で発見したサングラスを掛けた瞬間、今まで見たこともない光景が目の前に広がった。

「服従せよ」「消費せよ」「考えるな」等、いつもの広告看板や雑誌の紙面が、このサングラスを通してみると、全く違う内容、メッセージとなっているではないか。どうも、サブリミナルを悪用した洗脳のような仕組みで、無意識のうちに一般市民は服従させられているようである。

 さらに、驚いたことには、このサングラスを通して見た人間のうち、いわゆるホワイトカラーに属する裕福そうな人達に限って、まるで火傷をして皮がめくれてしまったような、なんとも醜悪な面相であることに気づく。彼らはいったい何者なのだ???

 この後、「ナダ」が知ることとなるこの社会の実体とは??そしてその真相とは??