悪人と善人の境目とは?一命をもって報いる『3時10分、決断のとき』(J・マンゴールド監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『3時10分、決断のとき』(原題:3:10 to Yuma/2007年アメリカ/122分)

監督:ジェームズ・マンゴールド

脚本:ハルステッド・ウェルズ、マイケル・ブラント、デレク・ハース

原作:エルモア・レナード

製作:キャシー・コンラッド

製作総指揮:スチュアート・べサー、ライアン・カヴァナー、リンウッド・スピンクス

音楽:マルコ・ベルトラミ

編集:マイケル・マッカスカー

出演者:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベール、ローガン・ラーマン、ベン・フォスター、ピーター・フォンダ、グレッチェン・モルら

100点満点中90


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 単純バカな私は、こんな作品が大好きですね。

 西部劇ですが、日本の時代劇に通じる家(家族)に対する“義”や“仁”、友に対する“信”などが作品の根底にあります。無法の中にあって、唯一、人を獣と区別出来るものは、信仰心などではなく、“慈愛”や“布施”“信義”の心なのではないかと思わせる作品です。

 結末辺りで、「武士道」の欠片(かけら)に非常に近い感覚を作品から受け取りました。相手の立場を思いやる“心”です。

 監督のジェームズ・マンゴールドは、『17歳のカルテ』(1999年)『アイデンティティー』(2003年)を手掛けた作家で、心理描写をきめ細かく表現する事が得意な監督です。出演者の目線や所作、台詞の言い回しやアクセントで、鑑賞者に対し、登場人物の心の移り変わりを分かりやすく伝える“術”を持った匠の監督です。今作は、エルモア・レナードの短編小説を基に作られた『決断の3時10分』のリメイクです。


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 主演のラッセル・クロウは、駅馬車強盗の頭目「ベン・ウェイド」を演じ、これは、絵心があり、聖書を仔細に渡って熟知する知識人でありながら、残虐な手段を用いて、大金を奪取する人非人です。彼は幼少期から、不遇の人生を送ったことで、強盗稼業に身を落とさざるを得なかった身の上です。現在ならば、その”カリスマ性”により、革命者になったかもしれない人物です。とにかく、銃の扱いに関しては早く正確であり、腕っ節も強く、説得力のある語り口で敵対する側も手中に収める魅力があります。異性に対してもその才能は絶大で、並みの女性なら、彼からの誘惑に抗うことはできないでしょう。


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 一方、敵対する側の「ダン・エヴァンス」は、クリスチャン・ベールが演じます。この役は南北戦争の元兵士で、重篤な銃創を片足に受けたため、義足生活を強いられる牧場主です。数百ドルの戦傷補償を糧に、小規模牧場の経営に生活を懸ける、弱い立場の人物で、ゲルマン系の美しい妻と多感な息子二人を養うため、「一命」を懸けることを厭わぬカウボーイです。ワシントンの陥落を救った兵士であり、二人の息子にとっては、不屈の“ヒーロー”です。


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 彼の長男「ウィリアム・エバンス」は、あの『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』主演のローガン・ラーマン(写真右↑)で、父を慕う気持ちが、鑑賞者の感涙を招く、健気な役どころです。この息子「ウィリアム」は、父以上に正義感が強いばかりでなく、機転と奇才に富んだ少年で、中盤以降、自分の父を助け大きな役割を果たします。


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 執念深く「ベン・ウェイド」を追うピンカートン探偵社所属の探偵「バイロン・マッケルロイ」は、かの名優ピーター・フォンダが演んじ、聡明でありながら、自分の任務の非人道性や社会性の無さを黙殺して、業務に徹する盲目的な職業人です。・・・でも、すっごいカッコイイ。


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 「ダン」の部下、駅馬車強盗の副頭目「チャーリー・プリンス」は、ベン・フォスターが演じ、爬虫類のような“冷徹さ”と盲信的な“一途さ”をもって、自分の主人の救出のために、執念を燃やします。まるで、恋人を奪われたストーカーのような、執拗さしつこさで「ダン」たちを悩ませます。彼は、『プロメテウス』(2012年)にも出演していますね。今後が楽しみな俳優さんです。今作でも、傑出した存在感を示します。


(あらすじ)

 「ダン・エヴァンス」は、南北戦争の元志願兵で、重篤な銃創を片足に負い、義足となったが、妻と二人の息子を抱え、小さな牧場を営んでいる。最近の干ばつのため水と餌が足りず、数百ドルの借金の返済に苦慮している。そのため、債権者「グレン・ホランダー」の手先「タッカー」からの深刻な嫌がらせに合っている。「ダン」の農場は、鉄道路線の予定地にあり、彼ら一家の存在が邪魔であるがゆえの理不尽な仕打ちなのである。だが、「ダン」は説得や交渉という穏便な方法で解決したいため、「ホランダー」の事務所のあるビズビーに向かうこととする。


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 「ベン・ウェイド」は、まるで猛禽類が、地べたを這いまわる生き物を狙うような目で、移動中の駅馬車を見ている。メキシコ出身の狙撃手や、信頼する部下達が、手はず通りの活躍をしてくれるはずだと考えている。この略奪計画の首尾は上々で、数千ドルの現金を奪取し、賞金稼ぎの探偵「バイロン」にも銃弾を見舞うことが出来た。しかし、旅の途中の「ダン」一家に目撃されてしまう。「ベン」は「ダン」始め二人の息子を殺害する事は望まず、馬を取り上げることで済ませる。「ダン」は、探偵「バイロン」を救う。

 「ダン」は、ビズビーに付くも、借金の猶予交渉は上手く行かなかった。


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 「ベン」一派は、ビスビーで一息つき、分け前を分配する。「ダン」は、サルーンの二階で、美女と宜しくやるが、追手の保安官らに捕まってしまう。これには、「ダン」の機転と勇気が大きく貢献するのだった。彼は「ベン」逮捕の立役者である。


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 鉄道会社の幹部「グレイソン・バターフィールド」は、資本力で官憲をも掌握する人物。駅馬車強盗「ベン」をユマまで護送し、絞首刑にすると言う。「ダン」は、借金返済の好機と見て、護送団のメンバーに加えてもらう。報酬は200ドル。明後日3時10分のユマ行きの列車に、「ベン」を乗せる作戦である。


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 「ベン」の部下「チャーリー・プリンス」は、「ベン」奪還のため護送団を追跡する事を決し、この後、執拗なまでの追跡を敢行する。「ダン」は、たった200ドルのために、この護送任務を全うできるのか?


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