『宇宙人ポール』(原題:Paul/2011年イギリス、アメリカ/104分)
監督:グレッグ・モットーラ
脚本:サイモン・ペグ、ニック・フロスト
製作:ニラ・パーク、ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー
製作総指揮:ナターシャ・ワートン、デブラ・ヘイワード、ロバート・グラフ、ライザ・チェイシン
音楽:デヴィット・アーノルド
撮影:ローレンス・シャー
編集:クリス・ディケンズ
出演者:サイモン・ペグ、ニック・フロスト、ジェイソン・ベイトマン(『ハンコック』)、クリステン・ウィグ、ビル・ヘイダー、ブライス・ダナー、ジョン・キャロル・リンチ、ジェーン・リンチ、シガーニー・ウィーバー、セス・ローケン(ポールの声)ら
100点満点中91点
『ホット・ファズ』の迷コンビ、サイモン・ペグとニック・フロストの二人が書き上げた脚本による、SFの形を借りたロードムービー。この作品は、地球的並びに宇宙的古今東西の異文化交流もテーマになっていて、宇宙人「ポール」が地球の文化を皮肉る驚き以外に、英国人が見たアメリカ社会に対する驚きとSFタクらの独特の世界が覗けるという驚きという、さらに二種類の驚きも味わえる作品で、キャンピングカーをレンタルして、米国内の「UFOスポット」を巡る途中に、収容施設から逃げ出した「ポール」と名乗る宇宙人出会い彼と旅を共にするという流れです。抱腹絶倒のギャグ満載でありながら、ラスト近くでは、感涙を誘う“感動作”にもなっています。
監督のグレグ・モットーラ↑はコメディを得意とする監督で、今作が本邦では初の長編作品公開です。
主演のニック・フロストは、ネヴュラス賞?を受賞した事もあるイギリスのSF作家「クライブ・ゴリングズ」役で、気の良い中年男性。フィギュアやコスプレより、コミックに出て来る小道具、特に「刀剣」に興味がある。
同じく主演のサイモン・ペグは、SF作品専門の英国人イラストレーター「グレアム・ウィリー」役で、相棒「クライブ」の作品本の表紙や挿絵を一手に担っている。この二人は、公私共に一心同体のように行動し、言わば“つーかー”の関係だが、アメリカでは「同性愛者」の新婚旅行(ゲイカップルのっ)に見えるらしい。
あーそうそう肝心の宇宙人「ポール」は、勿論CGなんですが、彼の声を担当しているセス・ローゲンが顔の表情も担当していて、テクスチャー・マッピングの素材としてその動きも提供しています。
肝心の宇宙人「ポール」のデザインは、構想段階から完成までに多くの手直しが加えられ、結局、“宇宙人”として、誰もが簡単に認識できる、至極一般的な容姿となりましが、今作ではむしろこのありふれた容姿が功を奏したと言えます。何の違和感もなく、「彼が宇宙人なんだ。」と素直に解釈できるからです。
(あらすじ)
イギリスのSF作家「クライブ・コリンズ」とイラストレーター「グレアム・ウィリー」は、カリフォルニア州サンディエゴで開催されているコミ・コンに意気揚々と乗り込む、イギリスで活動する二人にとっては夢のような世界である。
彼らが尊敬するSF作家やアニメーター、コミック作家、コスプレ家達が集い日本で言うコミケの様相である。彼らは、この会場での楽しい体験以外に大きな計画がある。それは、キャンピングカーをレンタルして、ネバダ州のエリア51から回り「ブラックボックス」へと渡るUFO出現スポットを回る旅である。
彼らは、UFOマニア専門のドライブインで地元のブルーカラーらとトラブルを起こしながらも、「ブラックボックス」に辿り着くが、何者かにつけられている事に気づく。どんどん近付く追跡車に観念して速度を緩めると、追跡車は彼らのキャンピングカーを追い抜き、前方でスピンしクラッシュしてしまう。「クライブ」と「グレアム」は運転者を救出しようと大破した車に近付くが、誰の乗っていない。ところが・・・
大破した傍らで、タバコに火を付ける人物がいる。この人物は小柄でだが、異常に大きな頭の大きな目の銀色の肌をした“宇宙人”である。
彼は自分を「ポール」と呼び、二人に助けを求める。
「命が危ないんだ。僕を助けて欲しい。」
第三種接近遭遇に、「クライブ」は失禁した上、失神してしまう。
「グレアム」は恐怖に打ち震えながら、宇宙人「ポール」と二人で、失神した「クライブ」をキャンピングカーに運び込む。
約60年前、彼は宇宙船の故障によりアメリカの片田舎の農場に不時着し、その家の番犬「ポール」を撒き込み殺してしまう。そのせいで、彼は「ポール」と呼ばれるようになり、その後、米空軍の倉庫の一室で様々な検査をされながら、人類に沢山の知恵と知識を与え続け、イノベーションに貢献して来たのだが、最近になってそれらの財産は出尽くし、後は自分自身が残るのみ、つまり、彼が持つ数々の“超能力”の源を解明するため、解剖されると言うのだ。
彼は、すでに仲間に連絡しており、合流地点まで連れて行って欲しいと訴える。「グレアム」は事情を呑み込み、彼と帯同する事を決心する。しかし、“黒服”の追跡者からの猛追を受ける事となる。
宇宙人「ポール」と、SFオタクの二人は無事逃げ切る事が出来るのか?また、“黒服”の追跡者とはいかなる組織なのか?