“seek you”(君を求めて)と言う意味『CQ』(ロマン・コッポラ監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『CQ』(原題:CQ/2001年アメリカ/88分)

監督・脚本:ロマン・コッポラ

製作:ゲイリー・マーカス

製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ

撮影:ロバート・D・イェーマン

美術:ディーン・タヴォウラリス

編集:レスリー・ジョーンズ

音楽:MELLOW

出演者:ジェレミー・デイヴィス(『プライベート・ライアン』アパム伍長役)、アンジェラ・リンドヴァル、エロディ・ブシェーズ、ジェラール・ドパルデュー、マッシモ・ギーニ、ジャンカルロ・ジャンニーニ(『007慰めの報酬』)、ジェイソン・シュワルツマン(『ダージリン急行』)、ビリー・ゼイン(『山猫は眠らない』のミラー役)ら

100点満点中69点


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 ロマン・コッポラ監督初の長編作品。公開年度が2001年でありながら、1969年~1970年のパリを舞台に、2001年の未来のSFスパイ映画を製作する監督らの奮闘記を、レトロかつポップに描いたコメディ作品です。つまり、現代でありながら、1969年当時の21世紀観を表現している独特の世界観をもった、やや実験的な娯楽作品です。


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 監督のロマン・コッポラは、ご存知の通りフランシス・F・コッポラの息子で、CMや音楽PVを数多く手掛け、映像表現にはかなりの実力をもった逸材なのですが、今作はやや自慰的ムードが出てしまっているところが勿体ないところです。主人公「ポール」は、映像作家であって、この役に監督自身を投影している部分があり、本人の育ちの良さも手伝って、SF作品部分でも、冒険的になっていないやや保守的な脚本通りに撮影が進行して行ってしまった感が拭えない印象ですし、監督本人だけが楽しみに楽しんで作った感じもして・・・着眼点が良いだけに、何とも残念です。

 唯一、この作品が救われてい点は各役がらを演じた俳優陣の魅力のお陰です。


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 ジェレミー・デイヴィスは主人公「ポール」を演じ、この役は映画の編集担当者ですが、監督とプロデューサーが対立したせいで、最後に監督を命じられるやや受け身な性格で、自己表現するために、積極的に外界に働きかけたり、外に飛び出してみたりできないややオタクな映像作家ですし、良好な人間関係構築は不得手な人物です。この役は、ロマン・コッポラ監督本人であるといっても良いでしょう。(監督本人もこの点を認めています。)ただし、今作のデイヴィスはあの『プライベート・ライアン』でのアパム伍長の時とは打って変わって、非常に知的で、スタイリッシュでカッコイイ。


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 アンジェラ・リンドヴァルはヒロイン女優「ヴァレンタイン」と女スパイ「ドラゴンフライ」の二役を演じ分け、スーパー・モデルの彼女を、監督がいきなり“一本釣り”してこの大役に当てました。劇中の女優「ヴァレンタイン」が、女スパイ「ドラゴンフライ」を演じるという設定で二重に大変な役柄を巧みに演じただけでなく、 “超ド級”の美貌に観ているこちらが、一瞬にして魅入られる程です。

物凄い美人!


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 撮影のほとんどは、ルクセンブルクの地方都市で行いながら、60年代のパリとローマの街並みを再現しています。当時の車両や小物をふんだんに使用し、また一方で、SF映画部分では、流線形のレトロ・フューチャーなデザインの車両を製作したり、ワイヤー操作のミニチュア撮影を多用するなどの工夫で、1969年当時の未来感を表現しています。これは、「タイムマシン」に乗って旅をしているようで、誠に楽しい部分です。


(あらしじ)

 「アンドレイ監督」(J・ドパルデュー演ず)の新作SFスパイ作品『ドラゴンフライ』(とんぼ)の撮影は佳境に入っている。この作品の編集担当「ポール」は、日々作業に追いたてられながらも、自分の創作活動を続けている。彼は実は監督志望で、自宅において16mmカメラを撮影所から借り受け、自伝的作品の製作中である。ただし、同棲中のフランス人キャビンアテンダント「マルレーヌ」からの覚えはすこぶる悪い。カメラばかりいじって、恋人の体に一切触れて来ないばかりでなく、休日を一緒に楽しもうと言う気が全く無いからであった。

 「アンドレイ監督」が、製作側のプロデューサー「エンゾ」に見せるラッシュの試写後に、この作品の結末を説明するが、あまりの陳腐さに「エンゾ」は激怒。「アンドレイ監督」を解任してしまう。代わりに、若手の「フェリックス・デ・マルコ」(ジェイソン・シュワルツマン演ず)を新監督に据えてしまう。ただし、この若手監督はかなりの俗物であって、まともな作品完成に関しては、いささか心もとない。


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 作品の編集作業に加え、アフレコも担当する事になった「ポール」は、収録スタジオでヒロイン役の「ヴァレンタイン」を待つが、現れた彼女のあまりの美貌と自然な立ち振る舞いに、一目ぼれしてしまう。

 そんな時、「マルコ新監督」が自動車事故を起こし、監督を降板する。スタッフの「ファブリツィオ」がプロデューサーの「エンゾ」に、「ポール」を推薦したことで、彼に監督の椅子が巡って来ることになる。そして、「エンゾ」からは、どんなエンディングになるか早く知らせて欲しいと執拗な催促が来るようになるが、ここまでに撮ったフィルムでは、彼を納得させるような作品には仕上がらないと判断した「ポール」は、新しいシーンの追加撮影に踏み切るが、彼の頭の中は、妄想と現実の区別が付かない程強烈に、「ヴァレンタイン」に恋慕する状態である。


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 果たして、このSFスパイ大作は完成するのであろうか?


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