終盤「深イイ話」になる『バトルシップ』(ピーター・バーグ監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『バトルシップ』(2012年アメリカ/131分:G)

監督:ピーター・バーグ(「スモーキン・エース」「ハンコック」)

脚本:ジョン・ホーバー、ピーター・バーグ、ブライアン・ゴールドナー、ダンカン・ヘンダーソン、ベネット・シュナイアー、スコット・スチューバーら

音楽:スティーブン・ジャブロンスキー(「トランス・フォーマー」)

出演者:テイラー・キッシュ(「ジョン・カーター」「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」)、アレクサンダー・スカルスガルド、ブルックリン・デッガー、リアーナ、リーアム・ニーソン、浅野忠信ら

100点満点中79点


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 皆さまのイメージ通り、SF海洋戦闘アクション作品です。登場人物を極力絞り込んで、子供の鑑賞にも耐えうるスート―リ―になっています。 「宇宙戦艦ヤマト」にもあるような兄弟愛、「トランス・フォーマー」シリーズに一貫してある“美女”との絡みを盛り込んで、なぜ地球が侵略の危機に瀕するかを、冒頭でやや丁寧過ぎる説明を与えることで、説得力を持たせようとしています。ただ、なぜ「RIMPAC」=還太平洋合同演習が行われ、どんな政治的意味を持つかを、“ぼやかして”いる部分が、大人の軍事(政治)オタクよりも、健全な少年・少女に観て貰いたい作品なんだと感じられます。

 また、この作品は、テーブルゲーム「バトルシップ」から発想し、劇中でも、レーダー管制が不能となり五里霧中の駆逐艦が、“津波ブイ”からの情報を、武器照準と連動させることで、侵攻する敵を迎撃するくだりが、テーブル・ゲームの様子そのままです。


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 「還太平洋合同演習(RIMPAC)」・・・米海軍主動によりハワイ周辺で行われる海軍の軍事演習のことで、1971年から始まった。海上自衛隊は、1980年から参加している。ほぼ2年に一度開催され、本年は開催年である。2010年の実績では、参加国は日本、米国、オーストラリア、カナダ、韓国、シンガポール、フランス、オランダは実際に艦艇を参加させ、インドネシア、マレーシアは陸戦隊を、チリ、ペルー、タイは海軍参謀本部のみを参加させている。この年、海上自衛隊は、DDG-177「あたご」(イージスシステム搭載のミサイル護衛艦)、DD-108「あけぼの」(むらさめ型護衛艦)、SS-600「もちしお」(おやしお型ディーゼル潜水艦)、P-3C対潜哨戒機5機を投入した。


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 今作では、海上自衛隊の参加艦艇は、実在するDDG-175「みょうこう」↑で、この艦は“こんごう型護衛艦”の3番艦です。勿論イージスシステムを搭載したミサイル護衛艦で、兵装は「127mm54口径単層連射砲」×1門、「ハプーンSSM4連装発射機」×2基、「68式324mm3連装短魚雷発射管×2基、「Mk15Mod2ファランクスCIWS2(20mmガトリング砲)」×2基等で、今回の北朝鮮からの弾道ミサイル迎撃のため配備されたSM-3(RIM-161)の発射も可能です。ただし、今作ではあまり活躍しないうちに、撃沈されてしまします。



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 主役のテイラー・キッシュが演じるのは「アレックス・ホッパー」海軍大尉で、DDG-53「ジョン・ポール・ジョーンズ」の戦闘指揮所所属の将校で、知的な兄の、DDG-102「サンプソン」艦長「ストーン・ホッパー」海軍中佐のような品行方正さは全く無く、直情型の単細胞です。序盤過ぎ、USS「サンプソン」撃沈後、自艦USS「ジョン・ポール・ジョーンズ」を“特攻”させようとして全滅の危機を招きます。


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DDG-53「ジョン・ポール・ジョーンズ」・・・米海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の3番艦で、兵装は「Mk45mod 35インチ単装連射砲」×1門、「Mk38 25ミリ機関砲」2門、「Mk41 mod 2 VLS」×90セル、「ハプーンSSM4連想発射筒」×2基、「Mk 32短魚雷発射管3連装」2基(他に「スタンダードSM-2 SAM」、トマホークSLCM等も発射可能)。艦名は、独立戦争の米海軍の英雄ジョン・ポール・ジョーンズに因む。
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 一方、パートナーとなる海上自衛隊DDG-177「あたご」艦長「ユウジ・ナガタ」は浅野忠信が演じ、この役は、熱血漢でありながら、冷静沈着な新進気鋭の知将であって、テクノロジーに勝る敵に対し、地の利と結束に勝る自陣の采配を執る事となります。鼻っ柱の強い米海軍士官らを押さえ、事実上の指揮官となる「ユウジ・ナガタ」一等海佐の雄姿には、同じ日本人なら胸が熱くなること間違いなしです。



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 敵は、パワード・スーツに身を固めた「爬虫類」系生物で、この辺の造形は実に見事です。



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 ただし、RIMPACの演習海域での戦闘の割には、あまりにも艦艇数が少なく見え、米軍が空母「ロナルド・レーガン」を中核とする艦隊の隅々にまで、また、海自の艦艇の全てにも映像を回して、いかに大規模な演習であるかを表現すべきでした。

 冒頭の海自VS米海軍の“ある勝負”をややコミカルに描いた部分で、海自の勝利で決着するのは良いのですが、上映時間131分の中には、無駄なシーンも多く感じられ、それらを削ぎ落して艦隊の規模を大きく見せるシーンや各艦艇の統率のとれた様子を挿入すべきと感じました。

(ユニバーサル映画100周年記念作品という割には、やや寂しいデキということです。)


 海戦をストーリーの「軸」とした映画の新基軸を打ちだした作品として、評価はやや高めです。

 エンド・ロールが終わっても、席を立たずにおかれる事をお勧めいたします。おまけ映像?がありますよ。

(*現在公開中のため、あらすじは控えさせて頂きます)