『トータル・フィアーズ』(2002年アメリカ/124分:G)
監督:フィル・アルデン・ロビンソン
脚本:ポール・アタナシオ、ダニエル・パイン
製作:メイス・ニューフェルド
製作総指揮:トム・クランシー、ストラットン・レオポルド
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
出演者:ベン・アフレック、モーガン・フリーマン、ジェームズ・クロムウェル、リーブ・シュレイバー、フィリップ・ベイカー・ホール、ブリジット・モナハン、ロン・リフキン、キーラン・ハインズら
数あるトム・クランシー原作映画でも、一番のお気に入りがこの『トータル・フィアーズ』です。原作は、ポリティカル・サスペンス「恐怖の総和」で、人物設定を大きく変更して、今までの「ジャック・ライアン」シリーズとは一線を画します。「レッド・オクトーバーを追え」では、アレック・ボールドウィンが、「パトリオット・ゲーム」や「今そこにある危機」ではハリソン・フォードが演じた「ジャック・ライアン」を、今作では、ベン・アフレックが演じ、若返りを図っている上、相手役の「キャシー・マーラー」をブリジット・モナハンが演じ、二人はまだ結婚前のホットなカップルです。
「ジャック・ライアン」・・・トム・クランシーのポリティカル・サスペンス小説の主人公で、元海兵隊少尉。原作によって立場・職位は変遷しますが、今作では、CIA常勤情報分析官で、ロシアの専門家。勿論ロシア語堪能で、ウクライナ語も操れる設定。表向きは歴史学者で通している。デート3回目の親密になった女性「キャシー・マーラー」と交際中で、最も熱々の状況。彼女はボルチモア病院の若き外科インターン医師で、100点満点中で120点のセクシーな「ジャック」にべた惚れです。
米国大統領「ロバート・ファウラー」役は、ジェームズ・クロムウェルで、「アイ・ロボット」のアルフレッド・ラニング博士や「ディープ・インパクト」のアラン・リッテンハウス元財務長官を演じた俳優で、神経質な役柄が得意です。今作でも、ロシアに対して不信感を募らせ、自分の癇癪を補佐官にぶつけまくる米国の指導者にハマり込んでいます。
露国大統領「ネメロフ」は、キーラン・ハインズが演じ、若く野心に満ちた一方の指導者役を好演しています。軍部出身でなく、現在の露国「プーチン」のような独裁的な体制を確立する前に就任したため、軍部の暴走や裏切りに合う不運な大統領です。
今作では、イスラエルが保有する「戦略核」が、作品の「鍵」として重要なアイテムとなります。このプルトニューム原爆が爆発した後に降る「死の灰」の成分を分析する事により、どこの遠心分離機で作られたプルトニュームかが分かる情報を米軍が持っている設定となっている事を、予めご理解の上、ご覧ください。また、劇中、放射能に関して、非科学的・非現実的シーンがある事が、容認できない狭隘な鑑賞眼しか持ち得ない方々にはご覧になられないようお勧めしたい作品です。
(あらすじ)
第四次中東戦争、イスラエルは膠着した戦線を好転させることが出来なかった。イスラエル空軍は、戦況打開のため「Mk-12」型戦略核爆弾を搭載した、A-4スカイホークを1機を発進させ、アラブ連合の拠点へ核攻撃の実施に踏み切るが、発信直後、敵の2K12地対空ミサイルの一発で撃墜される。機体はバラバラに墜落するが、プルトニュウム型原子爆弾MK-12はほぼ原形を留めたまま、砂漠に落下し、爆破しないまま砂に埋もれていく。
29年後、アメリカ合衆国ヴァージニア州ウェザー山の地下深くでは、ファウラー大統領以下、国防長官、CIA長官の「グーリア」が対露核攻撃の演習をしている。
一方、ロシアでは、健康の問題アリとされている「ゾルキン大統領」が、心筋梗塞で死去し、変わって軍の後ろ盾は無いが、ややタカ派よりの「ネメロフ」が新大統領として選出される。
この事態に、CIA非常勤情報分析官「ジャック・ライアン」は、CIA長官「グーリア」に対露戦略の見直しのため、本省に徴収される。彼は、新大統領「ネメロフ」に関する詳細なる調査報告書を提出していたからだ。
ゴラン高原では、遺跡発掘のため作業に駆りだされた二人が、砂中から「爆弾」らしきものを発見する。これは、すぐに廃品回収業の男に買いとられる。だが、彼はこの物品の取得を暗号変換して、彼の依頼人に連絡する。
「お望みの物を入手。希望価格は5000万ドル。約束の品物は、1973年イスラエル製MK-12型原爆」
この時、米露は戦略核制限交渉の真っ最中であり、「グーリア長官」と「ライアン」は、モスクワに飛び、「ネメロフ大統領」に接見する。そして、ロシアの核解体施設「アルザマス16」の門をくぐる。ここで彼らを待つ者がいた。旧KGBの「グルシュコフ」である。彼はブレジネフ時代から歴代元首に使える情報局の重鎮である。この「アルザマス16」では3人のプルトニュウム型原爆の専門家が失踪していた。
「ライアン」と「グーリア長官」が帰国すると、ロシアが化学兵器を用いて、チェチェンを攻撃したとの一報が入り、大統領周辺は騒然となる。「ライアン」は、ロシア軍の急進派による暴走であると進言するが、タカ派の印象が強い「ネメロフ大統領」に対する、米国首脳の考え方は、
「チェチェン攻撃の首謀者は、ネメロフ露国大統領であって、これはロシアの侵略行為である。」と
このロシアと米国との対立を画策しているのは、「ネオナチ」で、アメリカの覇権をくじくため、米露戦争を引き起こし、疲弊した両国に代わり、欧州中心の国家覇権を樹立させようという途方も無いものである。彼らの政治信条の根底にある物は、ナチズムであり、白人至上主義であり第三帝国の復権である。彼らは、旧ソ連派の軍人を買収し、米国内の過激派分子を抱き込み、さらにイスラエル製「MK-12型」原爆を入手したのだった。彼らは、ロシアの専門家3人に、この原爆を改修させ、アメリカ合州国ボルチモアに持ちこむ手はずを整える。
その頃、アメリカでは「ファウラー大統領」と「グーリア長官」は、スーパーボウルの観戦のため「ボルチモアスタジアム」にいた。
イスラエル製「MK-12型」原爆は、タバコの自動販売機に姿を変え「ボルチモアスタジアム」に搬入される。この事実を掴んだ「ライアン」は、ウクライナから急遽帰国し、「グーリア長官」に緊急連絡を試みるが・・・





