『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(ラッセ・ハルストレム監督作品) | Eagle-eyed Cinema Review-鷲の目映画評-

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イーグルドライバーの観た映像作品について、あれこれ書いて行きます。
主に「洋画」ですが、ジャンルにはあまりこだわらず、インスピレーションで拝見する作品を選んでいます。
海外の「ドラマ」も最近は気になります。

『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(原題:Mitt liv som hund/1985年スウェーデン/102分)

監督:ラッセ・ハルストレム

脚本:ラッセ・ハルストレム、レイダル・イェンソン、ブラッセ・ブレンストレム、ペール・ベイルンド

出演者:アントン・グランセリウス、マンフレド・セルネル、アンキ・リデン、レイフ・エリクソン、クリスティナ・カールヴィンド、ヨハンナ・ウーデン、トーマス・フォン・プレムセンら


 ジョニデ主演の「ギルバート・グレイプ」や「ショコラ」を撮った監督です。

1986年 スウェーデン映画批評家協会賞最優秀賞作品賞

1987年 シアトル国際映画祭最優秀作品賞と監督賞、ボストン映画批評家協会賞最優秀外国語映画賞

1988年 ニューヨーク映画批評家協会賞最優秀外国語映画賞、ゴールデングローブ賞最優秀外国語映画賞

を受賞した作品。

100点満点中82点(前半79点、後半85点)

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 1950年代、覇権を誇っていた西欧諸国から取って代わるように、新興・台頭して来る共産主義国「ソ連」。ソ連は、第二次世界大戦以降、世界の東半分を配下に置き、西の米国と肩を並べる勢力となり、世界の主導権を争うまでになっている。この時期、ソ連は、西側に対し「スプートニック・ショック」を起こす。

 そういった、国際関係の大変革期に北欧の小さな町での母子家庭の悲喜や思春期直前の少年の日常と非日常を「くすッ」と微笑むようにに描いたヒューマン作品。


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 12歳の「イングマル」は、今だにおねしょの治らない少年。彼がいつも考えている事は・・・・

◎ソ連の宇宙ロケットに乗って、地球の周回軌道に打ち上げられた「ライカ犬」よりも、僕のほうがずっと幸せ。その犬は、宇宙に飛んで行って有名になったけど、始めから地球に帰還・回収される予定はなく・・・ずっと地球の周りをまわり続け・・・餓死して死んだんだ。

◎アメリカのボストンで、心臓移植を受けた男よりも、僕の方がずっとまし。彼は、新聞に書かれて有名になったけど・・・結局、貰った心臓が止まって死んだんだ。

◎競技場で、フィールドを横切っていた陸上選手は、突然の事に驚いていただろうな。だって、いきなり胸に槍が刺さるなんて思ってもみなかっただろうから。

◎オートバイのジャンプで、バス31台を飛び越えられなかったライダーは可哀想。だって、30台でも新記録なのに、欲張ったせいで31台目に後輪を引っ掛けて転倒・死亡したんだから。


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 そんな、「イングマル」の日常は・・・

 兄「エリク」からの時々の意地悪に耐える事。

 愛犬「シッカン」と遊ぶ事。

 金髪の女の子「カエルちゃん」とするお医者さんごっこ。

 牛乳を自分の顔にぶっかける事。

 そして・・・大好きなお母さんに甘える事。

 
 この前は、兄「エリク」の性教育の講義?で

 ビール瓶を女性の○○に見立てた時、ビール瓶の口にポコ○ンを挿入しろと言われて・・・抜けなくなったし。

 線路の下の横穴で、カエルちゃんの下半身を見せて貰ったし。

・・・・と飽きる事のない毎日。

 

ただ・・・お母さんが、物干し場で咳が止まらなくなっているのが、すごく心配なんだ。


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お母さんの病気は「結核」で、日に日に体が弱っていく。

 夏休みはお母さんの体の事を考えて、「イングマル」はオーフェッシュ村の母方の「グンネル叔父さん」夫婦の家に世話になる事になる。そこには、村の雇用を支えるガラス工場があって、「グンネル叔父さん」を始め、沢山の人が働いている。

 また、「グンネル叔父さん」は、土地のサッカーチームに所属している上、少年サッカーチームのコーチもしているため、「イングマル」はチームに入る事にする。チームには、 「サガ」というやや大柄のガキ大将がいて、何かと「イングマル」にちょっかいを出したり、ボクシングの相手をさせられたりする。

 

 ただし、「サガ」にも悩みがあって・・・自分の胸が、日々大きくなっていく事だった。そう、「サガ」は女の子なのだ。

 夏休みが終わり、帰宅する「イングマル」は、お母さんの病状がさらに悪化している事に、愕然とする。

 そんな、一家をいつも助けてくれていた、父方の叔父「サンドベルイ」は、彼らを一旦引き取り、お母さんは入院する。

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「サンドベイル」は兄「エリク」を、「グンネル叔父さん」は「イングマル」を面倒見る事とし、彼は、またオーフェッシュ村に戻ってくる。遊び仲間は喜ぶが、特に喜んだ」のは、「サガ」だった。


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 終盤、思春期に突入する「イングマル」と「サガ」の甘酸っぱい触れ合いや、お母さんと愛犬「シッカン」の死を聞かされて、ひとつ成長する彼の姿を見ることができます。大きな起伏や展開はなくラストまで、静かに進んでいく物語で、鑑賞後「心」が少し暖かく、「丸く」「柔らかく」なっていることでしょう。


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 イタリアやフランスの監督には無い、やや陰鬱で「弾け切れない」ユーモアや作品の背景のせいで、気が付くと・・・より深く「鑑賞者も作品の中にいる」ことに驚くかも知れませんよ。

*導入部分が弱いからといって、途中で鑑賞を止めては・・・後悔する作品です。

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