『戦争のはらわた』(1997年イギリス・西ドイツ/133分)
監督:サム・ペキンパー
脚本:ジュリアス・エプシュタイン、ジェームス・ハミルトン、ウォルター・ケリー
出演者:ジェームズ・コバーン、マキシミリアン・シェル、ジェームズ・メイソン、デビッド・ワーナー、センタ・バーガーら
100点満点中82点
1943年独軍ロシア戦線。一時はスターリングラードまで侵攻したドイツ軍は、今やソ連軍の猛反撃にあい、退却の連日で、、クリミア半島東隣のタマン半島まで後退し、ソビエト軍と対峙している。ここはクバン橋頭堡。
そこにドイツ占領下のフランスから、 「シュトランスキー大尉」が志願したとして着任してくる。プロイセン貴族であるシュトランスキーは、付け焼刃のような空想的理想論を振りまわす、名誉欲ばかり人一倍強い男である。彼は全く実戦経験はなく、着任早々、陣地周辺に着弾する敵の砲撃に身をすくませている。
(古参の兵士には、彼の様子で彼の実戦経験の無さを察知する)
彼は、鉄十字勲章(cross of iron)を受け無事に故郷に帰りたいというのが本音だ。そんな彼は、上司であるブラント大佐や同僚のキーゼル大尉らから信任の厚い小隊長、 「シュタイナー伍長」とソ連軍少年兵捕虜の扱いや行方不明となった部下の捜索をめぐり、早速対立し、疎ましく思う。
その「シュタイナー伍長」の直属上官となった「シュトランスキー大尉」だが、鉄十字勲章を得るには有能なシュタイナー伍長を味方につけておいた方が得策だと考え、ブラント大佐に推薦してシュタイナーを曹長に昇格させる。だが、「シュタイナー曹長」は全く喜ばない。
なぜなら、「自分の手は汚さず、危険な目にも会わず、勲章を手に入れるには・・・シュタイナーが必要」ということだから!!
そんな折、「シュトランスキー大尉」はソ連軍の奇襲攻撃に陣地がさらされると狼狽し、身がすくんで地下壕から出る事が出来ず、防戦の指揮を執れないでにいる。塹壕での白兵戦では「シュタイナー曹長」とも信頼し合っていた第2小隊長「マイヤー中尉」が戦死、「シュタイナー曹長」も負傷するが、彼らの奮闘で、ソ連軍の撃退に成功する。
「シュタイナー曹長」は後方の病院へ送られ、無くした部下や戦闘中の恐怖体験のため、精神に異常が出るが、看護婦「エヴァ」の献身的な??看護によって甦り、傷の完治を待たずに、彼を待つ原隊に復帰する。
一方、「シュトランスキー大尉」は政治力を使い、一旦パリに戻り、嘘で塗り固めた、
自分に対する「鉄十字勲章」の申請を、済ませている。
「シュタイナー曹長」の復帰で、原隊は元気を取り戻し、また、「シュトランスキー大尉」の不正・不実の授勲申請の事実が発覚するが、混迷の度を増す対ソ戦線によって、彼を糾弾するどころか、「シュタイナー曹長」の小隊は、ソ連軍占領下地域に取り残されてしまう。
ここから、「シュタイナー曹長」達の決死の敗走が始まる。ソ連軍戦車等多数登場し、映画史に起こる大規模戦闘シーンが展開する。
ソ連軍に飲み込まれた「戦線」から、幾つものソ連軍部隊の背後に、忍び寄り・欺き・殺戮し・・・
自軍陣地まで到達できるか?否か?はご覧になってお確かめください。
とにかく、ジェームズ・コバーン演じる「シュタイナー曹長」のカッコいい事といったら・・・・ありませんよ!
ペキンパー監督らしい、ハイスピードカメラを多用した、戦闘シーン、殺戮シーン満載で、独特のバイオレンス感覚と狂気的演出をもって、鑑賞者に訴えかけてくる戦争作品の名作。
登場する、小火器、兵器が誤魔化しではなく、史実になるべく忠実に考証している点で、マニアには見逃せない部分がある。