ミニカーを初めて手にして何の躊躇もなく
車輪を平面に接地させてぶぅぶぅと
転がしてみない子供はいない。また、アレは
何て名前だろう?階段をシャクシャクと
尺取り虫のように降りつづけるバネの玩具。
アレを目の当たりにして恍惚としない
子供はいない。掌に乗せて、色んな角度から
眺めたり、匂いを嗅いだり、あげくは舐めたり
オレなりに謎の解明に肉迫しようとしたが
棚上げにされたまま、いつしか忘れた。
あれから半世紀。
あの日の遺伝子が突然目を覚ましてオレに詰め寄る。
なああの日のアレに跨りたくはないか?
自在に転がしたり駆りたくはないか?
人生下ってくだけで満足なのか?
さあシャクシャク登ってみせろ、と。

オレは飲まない打たない買わない
クルマの性能や
タイヤとかサスとか
そんなもんでアイデンティファイしないことだけが
取り柄の大人の男だった。排気量やスピードは
人の品や格を物語るかっつうの、と。それは今でもだ。
けどちょっと気まぐれのつもりで深い森に迷い込み
流浪の望みの身
となった。人生設計が悪路で激しくバンプする。
ジムニーはたぶんもっとも維持費の嵩む軽自動車だ。
安いのは税金だけ。維持?そもそもイジって何だ?
ああイジり倒したひ…
己の衝動、射幸心、斜行心すら維持できやしねえ。
次はマフラーが替えたい。純正の包茎短小⤵では
戦えない。挑めない。オレなりの少年の詩、です。