とんかつはこれだった。
だからか家かつは嫌いだった。
下北沢『かつ良』、特上ロースかつ。
舶来のポークカツレツは野毛キムラ。
学生街の奉仕かつ滅私かつ、は鷹の台ジュノン。
でファイナルステージは赤城、ってことに
なる。色々さまよい歩いたが、ここがキックオフ。
ガキの頃からいいもん喰ってたんだな、オレ。
オレの帰郷はとても気のすすまない、生みの母の
愚痴と全方向ディスリスペクトを強制拝聴する、
謂わば「剛田武リサイタル」的イニシエーション。
なんかで中和しないと全身に毒がまわるや。
かつ良は茶沢通り沿いの地下にある、黒光りする
和風とんかつの名店中の名店だ。豚脂があまく
薫る。赤城がポンド越え、ならここのとんかつは
体感1g以下だ。つまり空気よりも軽やかってこと。
母、貴美子。あんたの小言も願わくは軽く。
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